「ねえ、知ってる? 恋(こい)には賞味期限(しょうみきげん)があるんだって」
教子(のりこ)は、ゲームに夢中(むちゅう)になっている義人(よしひと)に言った。でも彼からは、「そうなの?」て、素(そ)っ気(け)ない返事(へんじ)しか返ってこない。教子は思った。こいつ、あたしのこと便利(べんり)な女としか思ってないのかしら。
二人は付き合い始めて二年になる。恋人(こいびと)たちの別れる確率(かくりつ)が一番多くなる時期(じき)だ。例(たと)えここを無事(ぶじ)に乗り切ったとしても、後は惰性(だせい)でズルズルと行くだけかもしれない。この関係(かんけい)を続(つづ)けるか、それとも別の道へ進(すす)むか。教子は決断(けつだん)の時だと感じていた。
「あたしたちの恋って、そろそろ期限切れなのかな? どう思う?」
ここまで言って何の反応(はんのう)もなかったら終(お)わりにしよう。教子はそう決(き)めた。だって、女はそんなに待てないの。彼は相変(あいか)わらずゲームを続けながら、気のない返事を繰(く)り返す。
教子は小さなため息(いき)をついた。そして、彼に別れを切り出そうとしたとき、不意(ふい)に彼が言った。「結婚(けっこん)しよう」――教子はキョトンと彼を見つめる。
「俺(おれ)たちの恋は今日で終わりだ。明日から、俺は君のことをずっと愛(あい)することにするよ」
「えっ? それって…、どういう…」教子は頭の中が真っ白になっていた。
「だから、プロポーズしてるんだよ。俺と一緒(いっしょ)になってくれ。…ダメかな?」
「そ、そんな…。ダメじゃないけど…。――はい。よろしくお願いします」
<つぶやき>愛は動詞(どうし)だと誰(だれ)かが言った。愛は伝(つた)え続けなければ消(き)えてしまうものかもね。
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