数日前の事。
福岡の義姉が、一泊で我が家に遊びにきていた。
「佐賀の川副に、珍しい古民家があるって。」
「いいね。見に行こうか。」
狭い路地を抜けた先に、目指す古民家はあった。
山口家住宅。
パンフに寄れば、
この地方特有の『漏斗谷造り』の典型として、昭和49年、国の重要文化財に指定された古民家で、築年代は19世紀初頭と推定される。
屋根の中央に、口の字型の窪みを作っているのが特徴で、
窪みに溜まった雨水は、瓦製の樋(テェー)により、屋外に排出される仕組みだ。
これが『テェー』である。
重要文化財ではあるが、現在も住宅として使用されている。
入口には、中を見学する際は、声をかけて欲しい旨が書いてある。
「すいませーーん。見せてくださーい。」
「あー、どうも。どうぞこちらに。」
ご主人は、漏斗谷造りの謂れや、古民家維持の苦労話を、丁寧に話してくれた。
「屋根や土壁の外側は葦(よし)で葺いとります。約40年に一度、葺替えせんといかんです。」
「ははあ。そんなもんですか。」
「で、葺替え費用はいくらぐらいち思われますか?」
「えーっと、300万円ぐらい?」
「その十倍ですたい。約3000万円です。」
「ひょえーーー!!」
もっとも、費用の大半には、国と自治体の補助金が出るとの事。
それでも、分母が大きいだけに、自己負担は結構な金額になる。
維持管理の手間ひまも、大変なものだろう。
現にこうやって、見学者が訪れたなら、自分の時間を割いて、説明してくれている。
これで見学無料とは、太っ腹すぎる。
屋根裏を見上げると、漏斗になっているのが良く分かる。
漏斗の底に見える黒い樋が『テェー』である。
「屋根は、定期的に燻さんといかんです。そん時は、そん釜で焚いとります。」
?
そう言う割には、数個の火災報知器が、屋根裏に設置されているのだが。
燻す際は、どうしているのだろう?
「それが、どう調整してるのか、燻す時は報知器は鳴らんとですよ。」
「へえー。」
神業的調整と言うしか無い。
あまり長く、ご主人の時間を奪う訳にもいくまい。
「そろそろ失礼します。どうも、貴重なお話有り難うございました。」
「またどうぞ。いらして下さい。」
次の目的地に向かう為、ナビに入力。
ナビが指し示したのは、車幅ギリギリの路地だった。
「その角、曲がれるとね。」
「う~~ん。」
事件は起こった。
ガリガリガリ!!
「ワギャー!!」(家内&義姉)
「ムグググ」(私)
・・・これ以上は書かない😭