1981年生まれの作家生田紗代さんの『オアシス』という小説が面白そうだったので、買って来ました。河出文庫です。
夫の単身赴任以来、数年心が壊れて、家事をまったくしなくなった母と、社会人1年生の姉と、語り手の女子高校生、芽衣子。そこに時々来る料理好きなバツイチの親戚のおじさん。
母親は、昼頃起きてくると、窓際の決まった席でじっと座り、トーストを食べている芽衣子に、「朝パンにするのもいいけど、たまには味噌汁ぐらい作りなさい」と言う。
しかし母親は言うばかりで自分は何もしない。芽衣子が「おかあさんもパン食べる?」と食パンをトースターに入れると、母は「お母さんもパンなの?」と不満そうに言う。
実は母は野菜の入った味噌汁を飲みたいのだが、自分では作る意欲がない。それでパンを食べる娘に、ぐずぐず文句を言うのだ。
娘は、母親を粗大ゴミのように思うが、それでもバイトに行く前に、母親のリクエストの野菜たっぷりの豚汁を作ってやる。にんじんをいちょう切りにしながら、恐ろしい考えが浮かぶ。
「ひょっとしたら自分は母親を愛しているのではないだろうか・・・」
関係が逆転した母親と娘との関係がおもしろかった。芽衣子も姉も、母親をもてあまして、憎んでいる。そんな母親に電話一本してこない父親のことも。
ビョウキの母の存在が、芽衣子には重いが、それとは感じさせない弾けたテンポのよさで暗くならない。
ふつうの料理がたくさん出てくるのもよかった。ピーナツバターを塗ったトーストとミルクとか、白菜と葱を刻んだうどんとか、おじさんの作るチーズリゾットとか、秋刀魚と大根おろしとか、そんなにたいしたものはないけど、日常の力ってすごいなあと感心した。
辛い時には、ご飯を作ったり、トイレを掃除したり、廊下を拭いたり、食器を洗ったり、手紙を出しに行ったりするのが、一番の癒しだと思う、自分でも。
夫の単身赴任以来、数年心が壊れて、家事をまったくしなくなった母と、社会人1年生の姉と、語り手の女子高校生、芽衣子。そこに時々来る料理好きなバツイチの親戚のおじさん。
母親は、昼頃起きてくると、窓際の決まった席でじっと座り、トーストを食べている芽衣子に、「朝パンにするのもいいけど、たまには味噌汁ぐらい作りなさい」と言う。
しかし母親は言うばかりで自分は何もしない。芽衣子が「おかあさんもパン食べる?」と食パンをトースターに入れると、母は「お母さんもパンなの?」と不満そうに言う。
実は母は野菜の入った味噌汁を飲みたいのだが、自分では作る意欲がない。それでパンを食べる娘に、ぐずぐず文句を言うのだ。
娘は、母親を粗大ゴミのように思うが、それでもバイトに行く前に、母親のリクエストの野菜たっぷりの豚汁を作ってやる。にんじんをいちょう切りにしながら、恐ろしい考えが浮かぶ。
「ひょっとしたら自分は母親を愛しているのではないだろうか・・・」
関係が逆転した母親と娘との関係がおもしろかった。芽衣子も姉も、母親をもてあまして、憎んでいる。そんな母親に電話一本してこない父親のことも。
ビョウキの母の存在が、芽衣子には重いが、それとは感じさせない弾けたテンポのよさで暗くならない。
ふつうの料理がたくさん出てくるのもよかった。ピーナツバターを塗ったトーストとミルクとか、白菜と葱を刻んだうどんとか、おじさんの作るチーズリゾットとか、秋刀魚と大根おろしとか、そんなにたいしたものはないけど、日常の力ってすごいなあと感心した。
辛い時には、ご飯を作ったり、トイレを掃除したり、廊下を拭いたり、食器を洗ったり、手紙を出しに行ったりするのが、一番の癒しだと思う、自分でも。