ことば咀嚼日記

日々読んだ活字を自分の頭でムシャクシャ、時にはゴックン、時には、サクサク咀嚼する日記

名訳で読む空海

2016-02-11 | 日記
今、一番興味がある人は、空海と徳川家康です。1月の旧暦今年最後の旅に、二人にちなむ川崎大師と日光東照宮に行ってから、しみじみ、後世にまで、こんなに観光客や参拝客を集める人は他にいるのだろうかと感嘆しました。空海の本拠地の高野山も、いまだ人気です。空海のことを好きな人が非常に多いことが分かりました。内山鑑三の『代表的日本人』に日蓮は入っていて、空海が入っていないのが納得できません。日蓮より日本人に深く永く影響を与え続けている人ではないでしょうか。
キンドルで、角川から出ているビギナーズ向けの、空海『三教指帰』と『秘蔵宝鑰』をインストールしました。現代語訳の後に原文読み下し分がついています。この現代語訳がまたとてもわかりやすいのです。たとえば今読んでいるこの一節。

「およそ人間だれでも、この世に自分が好んで生まれてきたわけではありませんし、死ぬ場合も、自分がいやだといっても、死なないわけにはいけません。そして人々は、自分の心に関係なく生まれ生まれていろいろな世界を生まれ変わってゆきてゆき、死に去り、死に去り、死に去って三途(地獄・餓鬼・畜生の世界)の間をさまよっているのです。自分を生んでくれた父母も自分が生まれてきた由来を知りませんし、自分自身も死んでからどこへ行くのかわかっていないのです。過去を振り返っても、冥冥と暗くてその原初をたどれませんし、未来を考えてみても、漠々として明らかでなく、その終極をたずねることができません。」

こんなに易しくすらすら読めるなんて思いませんでした。読み下し文と比較してみても、直訳といっても良いほどそのまんまで、名訳ですね。