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どうして人間みたいに動いているんだよ。」
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業田義家 『空気人形』
「空気人形」が映画でまもなく見られるようですが、「空気人形」と聞いて、「空気さなぎ」(1Q84)を連想しました。どちらも、幻想の世界から来たロリコン少女が関係します。空気人形にいたってはメイドカフェの格好で、買い物に行ったりして、ご主人様に本当の恋人が出来ると、自ら空気を抜いてほしいと頼んで、ぺしゃんこのビニール人形にもどります。
「空気」とは何でしょうか。目で見えないものですが、その場にあってその場を支配しているものとも言えるし、人間の頭の中で作り上げた幻想とも言えるし、人間が生きていく上で欠かせないものとも言えます。
幻想は日々、現実によって打ち砕かれます。それはとても健全なことです。「空気人形」では、男が、空気人形に、自分の体の触り方を教えてもらって、まず自分の肉体の質感を自覚するところからはじまります。そして現実に目覚めるのです。
ビニール人形に、生身の人間が自分の質感を教えてもらうなんて、へんな話ですが、そのステップをふまないともう直接自分の体に気づくことができなくなってしまったのでしょうか。思わず自分の二の腕をぎゅっとつまんでしまいました。