ことば咀嚼日記

日々読んだ活字を自分の頭でムシャクシャ、時にはゴックン、時には、サクサク咀嚼する日記

妄想と食欲

2011-09-25 | 日記
見逃してしまった『マイバックページ』がまたやっているというので観に行った。

原作者の川本三郎氏の書いた『林芙美子の昭和』という本を読んで、淡々とした、でも何かその奥に秘めたものがありそうな、しかし読後感は何か寂しい感じがする文章が好きだったから。
映画もまさにそのような感触だった。
監督は『リンダ・リンダ・リンダ』と同じ人だというから、また見たくなった。決して明るくない画面を撮る人で、過ぎ去った過去の記憶を辿るときの、あの薄暗い感覚が気に入っている。


いろいろな人が出てくるが、私が唯一、納得できた言葉は、高校生のモデルの女の子が語る言葉だけだった。

「納得」というのは、体も含めた心から「うん、そうだな。同感」という意味だ。

   男の人の泣く姿が好き。私はちゃんと泣ける男の人が好き。
   

自称革命家の男や、主人公のジャーナリストや、新聞記者やら、たくさんの男の人が出てきたけれど、彼らの吐く言葉が観念的過ぎて、概念だけで具体性が抜け落ちていて、そういう人達が、60年代に吹き荒れた政治の嵐の中で、何とかして自分の体から出る言葉を捜しているような、もどかしさを感じた。

松山ケンイチ演じる「革命家」が、人を殺す計画をたてながら、また実際に人を使って自分の計画のために自衛官を殺めた後で、スパゲティナポリタンをガツガツ食べるシーンは(この男は概念を語った後、やたらに物をガツガツ食べる)、概念と実感の中で必死にバランスをとろうとしている感じがした。