ことば咀嚼日記

日々読んだ活字を自分の頭でムシャクシャ、時にはゴックン、時には、サクサク咀嚼する日記

イラン映画

2012-06-07 | 日記
飛び込みで『別離』という映画を見ました。
どんな映画かまったく知らずに、街を歩いていてうまく時間が合ったのでフラっと見ました。
イラン映画でした。
イラン映画を見るのはこれが初めてかもしれません。
主人公がいったい誰だか分からない作りになっていて、一応、一組の中流階級の夫婦が中心に出てきますが、その周囲にいろいろな人が出てきて、すべての人の視点から見られる映画でした。

ペルシャ語というのを初めて聞きました。でもなぜか夫役の俳優は、いつもお礼を言う時最後に「メルシー!」と言います。それから「模型」という言葉をそのまま「モケイ」と言って使っているのも驚きました。偶然でしょうか。日本語そのままです。

お話は全然抵抗ありません。日本でもザラにある話です。一組の夫と妻が、アルツハイマーを患っている夫の父親との同居で疲れ果て、妻が外国へ娘を連れて出て行こうとしています。
妻が実家に帰ったあと、老人の介護人として田舎からやってきた女の人と子供と、その夫であるダメ男と、その他いろいろな人が出てきます。

みんな、それぞれ相手がいちばん大切にしているものを傷付けていて、そのことに気がつかないで、どんどん傷を広げていくように思いました。

たとえば、妻がいちばん傷ついているのは、夫が自分よりも父親を大切にし(ているように感じ)、自分が出て行くときに夫が後を追わなかったという事実です。
介護人として田舎からやってきた女は、お金を盗ったと、雇い主の夫に腹立ち紛れに言われたことに、深く傷ついています。
そして夫は、介護の女が、ちょっと留守をするといって、自分の父親の手をベッドに縛って一人で寝かせているうちに父親がベッドから落ちていたことに、傷ついています。いや、それより以前に妻が自分を(捨てて)実家に帰ってしまったことに傷ついていたので、介護人のやったことにものすごく腹がたったのでしょう。
夫婦の11才になる娘は、自分が家に残れば、両親はまたもとに戻るにちがいないと思い、母親といっしょに実家へ行こうとはしません。

大切にしていることを人からないがしろにされると腹が立ち、傷つきますが、傷つけている人はそのことに気がついていないことが多いものです。
だから、「そういうことを言われたりされたりすると、本当に傷つく」と一言、言えばどうでしょうか。
傷ついている人は、そんなこともはっきりいえないほど傷ついているのでしょうが、それでも言う勇気を持つべきだと思いました。
そこで、何かが変わると思うからです。
自分の大切にしているものを少しだけ手放してみるのも大切なことのように思いました。

見てよかった映画です。