ことば咀嚼日記

日々読んだ活字を自分の頭でムシャクシャ、時にはゴックン、時には、サクサク咀嚼する日記

雨に打たれる

2016-07-15 | 日記
一昨日の、ゲリラ豪雨のあった夕方、家族からSOSが入った。娘であるが、娘は一時間前に「じゃ、私は、天気がいいうちに自転車で先に帰るね」といって、量販店の前で別れた。自転車で10分もかかるかどうかの我が家に1時間後に「まだ道途中。自転車の前輪の鍵がはずせなくなって、引きずって家まで帰ろうとしたけど、力尽きた。助けてくれ」と来た。
あわてて車で現地まで駆けつけたら、娘は折りたたみの傘を挿して自転車の前で立っていた。ああ、雨は大丈夫だったのか、と安心した。前籠の重いリュックをとりあえず車の中に移し、自転車のカギを差し込んでまわそうとしたが、やはりびくともしない。「じゃ、今日はこの歩道の隅に寄せといて、とりあえず車で帰ろうか。雨ひどくなりそうだし。後で家からねじ回しかなんか道具を持ってきて取りに来ればいいし」と言うと「これは私の足だから、絶対持って帰る。こんなところに寝かせといたら持って行かれちゃう」と言う。それならと、車を止められる近くのスーパーの駐車場までまず車だけ移動させ、また私一人、歩いて自転車の場所まで帰ってきた。娘と一緒に、自転車の前輪を両側から持ち上げ、1.5キロほど、途中上り坂がきつかったが、その間、不思議に雨も止んでいて、でも30分ほどかかって家まで運べた。その足で、スーパーまで車を取りに行く途中、あのゲリラ豪雨。さっきまで止んでいたのに!突然、傘をさしていても、役に立たないものすごい雨が轟音とともに降りかかってきた。スカートはずぶぬれ。靴の中は浸水した船状態。その日に限って仕事帰りだったので、ロングスカートとパンプスだった。横断歩道を渡ったところで雨宿りするところもなく、もうここまで濡れたらもっと濡れたいという気持ちに変わってきて、雨の中を濡れ濡れねずみになってジャブジャブと歩いていると、スーパーのひさしの中で雨が止むのを待っているらしい学校帰りの子供たちの賢い姿が見えてきた。私を不思議そうに見ている。
水浸しのまま、車に乗り込み、何か、ヤッターという高揚感に満ちてきた。本当はスーパーで明日の買出しをしたかったが、ここまで水浸しだとビニール袋をかぶせられそうだったのでやめた。
ウルグアイ人で、世界で一番貧しい元大統領だったホセ・ムヒカさんが、「あなたがこれまでで一番幸せだと感じたことは?」と聞かれて、「外で雨に打たれたこと」と答えていた。政治活動で13年間収監されていて、初めて釈放されて、雨の中を濡れながら帰ったそうだ。やがて雨のしずくが顔を伝って口に入ったとき、本当に幸せを感じたそうだ。確かに獄中だと雨に打たれるという経験もできない。獄中でなくても雨に打たれるという経験はそんなにできない。私の感じた高揚感はそれだったのか。