ジークフリート
第3幕
第2場
ヴォータンは、ジークフリートの到着を待つ。
〔さすらい人・ヴォータン〕
「ジークフリートが近づいてくる。」
森の小鳥を連れたジークフリートがやってくる。鳥は遠くに飛んで逃げてしまう。
〔ジークフリート〕
「小鳥は飛んで行ってしまった。これから先は自分で行くしかない。」
〔さすらい人・ヴォータン〕
「若者よ、どこへ行くのか?」
〔ジークフリート〕
「炎に囲まれた山を探している。そこで眠る女を目覚めさせるのだ。」
〔さすらい人・ヴォータン〕
「誰が岩山を探せ、女を目覚めさせろと言ったのか?」
〔ジークフリート〕
「森の小鳥だ。」
〔さすらい人・ヴォータン〕
「鳥は人間の言葉を話せないはずだが。」
〔ジークフリート〕
「俺が倒した大蛇の血をなめたことで、鳥の言葉がわかるようになった。」
〔さすらい人・ヴォータン〕
「大蛇を倒したというが、誰が大蛇を倒すように言ったのか?」
〔ジークフリート〕
「腹黒い小人ミーメだ。」
〔さすらい人・ヴォータン〕
「誰が大蛇を倒せるほどの剣を作れたのか?」
〔ジークフリート〕
「鍛冶屋には作れなかったから、俺が作った。」
〔さすらい人・ヴォータン〕
「折れた破片を作ったのは誰か?」
〔ジークフリート〕
「俺が知るわけないだろう。破片では役に立たないから、新たに剣を作り直したのだ。」
ヴォータンは満足そうに大笑いする。
Was lachst du mich aus?
何を笑ってるの?
<ジークフリート>
(いぶかしみながら)
なぜ、ぼくのことを笑うんだ?
質問好きの年寄りめ!いい加減にしろ。
ぼくをこれ以上、おしゃべりに付き合わせないでくれ!
道を教えるつもりなら、早く言えよ・・・
できないのなら、ムダ口をきくのはよせ!
<さすらい人>
まあ、待て、若いの!わしを年寄りと言うのなら、
それだけの敬意を払わなけりゃいけないぞ。
<ジークフリート>
これで、うんざりするなってのか!
ぼくが生まれてこのかた、
いつも行く手を遮るのは、年寄りだった。
だから、そいつをお払い箱にしてやったところだ。
あんたも、しつこくぼくの道を阻み続ける気なら、
せいぜい気をつけたほうがいいぞ・・・
(セリフに合わせた身振りで)
ミーメみたいな目にあわないようにな!
(さすらい人に向かって、さらに近付いて行く)
あんたは、なんて格好をしてるんだ・・・?
何だよ?このでっかい帽子は?
どうして、こんなに顔を覆っているんだ?
<さすらい人>
(相変わらず、その場から動かずに)
さすらい人は、こうするものだ・・・
向かい風の中を行く時には。
<ジークフリート>
(ますます近づいて、じろじろ見つめながら)
それに、帽子の下には、片目がない!
きっと、前に、別の男の行く手も遮ったので、
殴られて、目ん玉が飛び出ちまったんだろう?
さあ、さっさと立ち去れ。
さもないと、もう一つの目も、
失うことになってしまうぞ。
<さすらい人>
せがれよ・・・自分が知らないことについては、
学ばねばならぬというものだ。
わしが失ってしまった片方の目のおかげで、
お前は、わしに残された
もう一つの目を見ているのだからな。
<ジークフリート>
(注意深く聞いていたが、思わず大声で笑い出す)
愉快な爺さんだ!笑わせてくれるよ!
だがな、おしゃべりもこれぐらいにするんだ。
さっさと、ぼくに道を教えて、
自分の道を進んでくれ。
あんたが、ぼくの役に立つのは、道案内だけなんだから、
早く教えろ!さもなくば、体当たりしてぶっ飛ばすぞ!
Kenntest du mich, kühner Spross
私を知っていましたか、大胆な御曹司よ
… … …
<さすらい人>
(やさしげに)
勇気ある若者よ・・・お前がわしを誰だか知ったら、
そんな悪口は言わないだろうにな!
昔から気にかけていたお前から、
そんなに脅されては、わしは、とてもつらくなる。
わしは昔から、輝かしいお前の一族を愛していた。
激怒して、恐怖に突き落としたこともあったがな。
至高の存在であるわしが、こんなにも優しくしているのだから、 嫉妬の念をかき立てたりはしないでくれ・・・
そうなったら、わしとお前は破滅だぞ!
<ジークフリート>
教えないというのか?頑固な奴だ!
それならば、そこをどけ。
わかっているぞ。そこを進めば、
眠る女の人にたどりつくんだ。
あの小鳥が、そう教えてくれたんだ。
ここに来たら、逃げてしまったあの小鳥が。
(急に、辺りは、また真っ暗になる)
<さすらい人>
(怒りを爆発させ、命令するような姿勢で)
あの小鳥は、身を守るため逃げたのだ!
カラス達の主がここにいると気付いたからだ・・・。
カラス達につかまっては、大変だからな!
お前だって、あの小鳥に教わった道を、
このまま進むことはできないぞ!
<ジークフリート>
(大いに驚き、反抗的な態度のまま、後じさりする)
おいおい!ぼくを止めようというのか!
あんたは誰なんだ?
ぼくの行く手を邪魔しようと言うのか?
… … …
〔さすらい人・ヴォータン〕
「私の力が眠る乙女を守っている。彼女を目覚めさせる男が現れれば、私の力は失われる。炎の海が女を囲んでいる。お前が炎を恐れないなら、私の槍でお前の道をふさごう。この槍はお前の持っている剣を一度砕いたのだ。」
〔ジークフリート〕
「お前は父の仇だな。槍を振り回せばいい。俺の剣で折ってやる。」
ジークフリートがヴォータンの槍を折る。落雷と岩山から炎が上がる。
〔さすらい人・ヴォータン〕
「行くがいい、私に止めることはできない。」
Ein Feuermeer umflutet die Frau
火の海が女を襲う
〔さすらい人・ヴォータン〕
「私の力が眠る乙女を守っている。彼女を目覚めさせる男が現れれば、私の力は失われる。炎の海が女を囲んでいる。お前が炎を恐れないなら、私の槍でお前の道をふさごう。この槍はお前の持っている剣を一度砕いたのだ。」
〔ジークフリート〕
「お前は父の仇だな。槍を振り回せばいい。俺の剣で折ってやる。」
ジークフリートがヴォータンの槍を折る。落雷と岩山から炎が上がる。
山口市の山火事3日目にして大変な事になっちょる
— つりよんしんちゃん (@tsuri4shinchan) September 20, 2024
出火場所反対側まで延焼中#山火事 #山口市 pic.twitter.com/2eErqsrVjD
<さすらい人>
(後じさりしながら)
行け!もう、わしには、お前を止められない!
(さすらい人は、突然、真っ暗闇の中に消えてしまう)
<ジークフリート>
臆病者め!武器をやられたから逃げたんだな?
(どんどん下のほうに垂れこめて行く火の雲が、ますます明るくなって、ジークフリートの目をとらえる)
ああ!何て素敵な炎だ!素晴らしい輝きだ!
今は遮るものもなく、ぼくの行く手を照らしている。
さあ、炎を浴びに行こう!
炎の中に、花嫁を見つけに行こう・・・
ホホー!いざ行こう!
かわいい仲間を、呼び寄せに行こう!
間奏
(ジークフリートは、ホルンを口に当て、獣を呼び寄せる時のメロディーを吹き鳴らしながら、波打つ炎の中へ飛び込んでいく。 山頂から押し寄せていた炎は、今や舞台前方に広がっている。ジークフリートの姿はすぐに見えなくなってしまうが、彼は山頂を目指して進んでいるように思われる。 明るさが最高潮に達するところで炎は弱まりはじめ、あたかも曙光に照らし出されたような、ますます繊細な雲の輝きへと変化していく)
導入
第3場
岩山
炎を通り抜けたジークフリート。青空が広がった、岩山の上。
Happy Birthday to Kirsten Flagstad! #Brünnhilde pic.twitter.com/z27wUd0hvK
— Minnesota Opera (@mnopera) July 12, 2015
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@wagnerianchan
Wagner,Richard/Siegfried
〘 … いずれにせよ、勢いのある2人があのプチ炎上騒動を吹き飛ばしたのは間違いなさそうだ。〙
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