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総務省と通信事業者の癒着、族議員…誰が「スマホ料金」値下げを妨害しているのか【山田 明×原 英史】 デイリー新潮 2020/12/26 05:56

2020-12-27 08:19:47 | 日記

鉄のトライアングル

通信・放送業界は、政府(総務省)が管理する電波を使う許認可事業の業界です。…
…いろいろな分野で役所と業界と族議員が鉄のトライアングルを構成し、その結果、業界の寡占状態などが生まれ、競争が生じずにサービスが悪くなり値段が上がる、といったことです。…

〘 帯域が限られているため、寡占状態が生まれ、コストが上がり、携帯料金は高くなる。…

なぜ放置されてきたかというと、世間で認識されていないから。つまり「電波」は、役所にとっても、通信・放送業界にとっても、世間の目に触れさせたくない聖域だったのです。

しかし、10月27日に武田良太総務大臣が発表した携帯料金の引き下げに向けたアクション・プランには「周波数の有効利用の促進」と書いてあった。

本来ならば民間会社の競争によって料金は下がるべきものですが、シェア全体の9割を占める、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社が裏で手を組んだように、公正取引委員会から不公正な取引だと警告を受けるくらいひどい契約の仕方やさまざまな囲い込みをやっており、その犠牲になってきたのが日本の消費者。結果として、11月に発表された上半期決算では、大手3社の営業利益が合計でおよそ1・7兆円。総務省が認可する公共の電波を使ってやっているビジネスを、上場企業のトップ3が独占しているという、とんでもない事態になっているわけです。…

…さらに競争を推し進めるためには、今は大手3社が独占している、携帯電話にとって使い勝手のいい「プラチナバンド」(700〜900MHz)と呼ばれる電波やこれに隣接する優良な電波の開放が必要です。その電波がどこにあるのかというと、放送局が囲い込んでいる。この周波数帯の使用状況を詳しく分析したアゴラ研究所の池田信夫所長によれば、放送局に割り当てられている帯域の中の8割近くは使われないまま放置されています。この浪費が疑われる電波の容量は、現在大手3社が使用している電波の総容量とほぼ同じです。

つまり、この電波を楽天を含む新たな事業者に開放すれば、現在のカルテルまがいの状態から脱却し、競争による料金の値下げを可能にする環境が整います。…

鉄のトライアングル

通信・放送業界は、政府(総務省)が管理する電波を使う許認可事業の業界です。…

…いろいろな分野で役所と業界と族議員が鉄のトライアングルを構成し、その結果、業界の寡占状態などが生まれ、競争が生じずにサービスが悪くなり値段が上がる、といったことです。…

…たとえば、本の中には個人名こそ出ていないものの、旧郵政省・総務省からNTTグループに天下った役人たちの一覧表、どの官職の人間がどのポストに就いたのかが出てきます。要するに、役人にとって通信会社は天下り先ですし、通信会社にとって総務省はメシの種である電波を与えてくれる存在。天下り官僚は政治へのロビイングも担い、トライアングルの結節点になる。そんな構図だから、政策決定が歪み、国民、消費者の利益が損なわれるのです。…

…総務省が電波の配分の利権を持っているから、それ欲しさにNTTはすり寄る。そこでNTTと総務省は手を握ります。そうすると、規制をするところと規制をされるところの境がなくなる。…

…この30年ほど、世界の通信業界ではさまざまな革新が起こり、GAFA等のネット関連企業が世界経済を席巻しました。しかし、自分たちの既得権益を守ることに汲々とし、消費者の利益に思いが至らなければ、イノベーションなど起こりようがありません。…

…総務省と放送業界の関係の深さは、通信業界の比ではありません。それは、かつて田中角栄が作った放送の県域免許制度が生み出した、放送利権の世界です。

電波は県境に関係なく飛んでいきますが、免許は県域を対象に与えられます。そのため東京のキー局で制作した番組を全国にながすには、県域免許を持っているローカル局にネットワーク料を支払う必要があります。東京から全国のローカル局に1500億円ともいわれる資金が流れ、ゾンビ企業予備軍と言われるローカル局を生き長らえさせてきた構造です。

県域免許の対象となる放送はテレビ以外にAMやFMのラジオもあります。それが日本中にある。膨大な数です。調べてみると、電波の認可権限があるところはすべて天下りの対象になる、ということを長年やってきているわけです。

電波の開放を進めれば放送利権にメスを入れざるを得なくなります。地方創生は菅政権の主要政策ですが、地方銀行の改革と並んでローカル放送局の改革も避けて通れないでしょう。…

…放送局以外に行政機関も帯域をたくさん持っているのですが、これら帯域を貸借対照表のように一括管理する、有効利用しているかどうかの監視体制を再構築するなど、相当踏み込んだ内容でした。当時の総務省も提言を受け入れたはずなのですが、3年経ってみたらほとんど実施されていません。…

…テレビ局が囲い込む「プラチナバンド」を取り上げ、電波の開放まで行きつくのは大変なことですが、私は菅総理には期待しています。まずは携帯料金値下げをやって大部分の日本のユーザーが恩恵を被る成果を上げ、さらに改革を進めてほしいと願っています。

料金を下げたあとの次のステップは、開放によってさらにプラスの効果を生み出すことです。新たに自由に使える帯域が出てくれば、5Gなど新しい用途で使ったり、いろんなアプリケーションを日本が世界に先駆けて作っていけたりする気運にもなりえます。その意味では、伸びしろ、つまり未使用のまま眠っている電波がある日本は今、世界で最も恵まれている状況なのかもしれません。〙


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