星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

二月大歌舞伎 夜の部「通し狂言 盟三五大切」(3)

2011-03-03 | 観劇メモ(伝統芸能系)
夜の部「通し狂言 盟三五大切」2回目

劇場     大阪松竹座
観劇日    2011年2月20日(日) 
座席     1階3列

まだ書き足りなかったらしい(滝汗)。
2回しか観られなかったけれど、行けない日にもにざ様源五兵衛
に逢いたくて録画DVDを観てしまった。
しかし、同じにざ様が演じているのに映像の源五兵衛では全然足
りない。いや、違うな。足りないのは自分自身だ。
観ている時ののめり込み度。力の入り具合。源五兵衛の気持ちを
汲み取ろうとするあまりの理不尽な一体感。
あの極限のシンクロ状態はやっぱりナマでしか味わえないものだ。

<源五兵衛と小万>
20日夜。源五兵衛と小万の場面。
初めて前列で見た源五兵衞は、前回いったい私は何を見ていたの
だろうと思うくらい凄まじい形相だった。
狂気と恥辱、苦痛、意地、憤怒、あらゆる感情が忙しく立ち現れ
ては入れ替わる。それを全部とらえるのは前方席・肉眼でないと
到底無理。3階からのオペラグラスではわからなかった。
このまま永遠にエンドレスかと思う場面がどれだけ続いただろう。
見ているだけで手には汗、目には涙、体はガチガチ。
そんな刹那! 残酷に執拗に小万をなぶり殺しにしてゆく過程で
源五兵衞の表情に一瞬、0.5秒位、笑みが浮かんだのを見た。
この感情だけは混じっていないだろうと思っていたので驚いた。
ああいう高揚感の中では、演じ手にも予期せぬ感情がわき起るこ
ともあるのではないか。
怖い! なのにこの男から目が離せない。
男をここまで狂わせたのは、やはり嫉妬なのか。妄執なのか。
騙されたことへの怒りではなく。

小万の最期のその直後、ウォーーーッと、もの凄い大声とともに
衝立の向こうで一気に刀が振り落とされた。
男はさっき解いた帯を使い、今度はそれを包み始めた。
地唄がいつのまにか南無阿弥陀仏を唱えている。

静寂がもどった。と、にわかに音が聞こえてくる。
ザザザーッ。雨だ。
その包みを持ったまま、戸口を出ようとして手を差し出し上を見
る源五兵衛。いったん戻って、そばにある番傘を持ち歩き始める。
さっきまで修羅だった男が、いまは包みを持つその手指のなんて
優しいこと。なんて優しい眼差し。
数歩歩いて花道で止まり、男は片手でパンッと傘を開く。
後ろからぐるっと回して頭上へ。途端に花道は二人のハネムーン
ロードに変わる。雨の音はなおも鳴り止まない。
ゆっくり、愛おしそうに包みを抱えて歩いてゆく男の口からいつ
しか声明が・・・。
止めていた息がため息となって劇場に解き放たれる。ふうぅ~。
怖くて、悲しくて、それなのにどこまでも美しい。
ただこの時は座席が花道から遠すぎて、男の目から涙が流れたの
か、それとも汗だったのか、そこまではわからなかった。
その帰り道、源五兵衛が再び花道を通って自分の住まいへ向かう。
このときもゆっくり花道をゆく姿にただただ見とれる。

この後とった行動はたしかに常軌を逸している。
包みを解いて目前に置き、お前といっしょに食事をしたかった~
と語り始める源五兵衛・・・。

ここでハタと思った。
むしろ、小万をすでに「妻」と思い込んでいたのは源五兵衛で、
妻というよりも「オレの女」的いつまでも小万に恋をしちゃって
るのが三五郎なのではないかと。

<三五郎と小万>
三五郎はちゃらちゃらしていて、どこかチンピラ風情。
舟をこぎこぎ花道から出てくる最初のシーンはこちらから観ると
いつも背中ばかり。
でもこざっぱりした浴衣姿がよく似合い、芝雀さんのこってりし
た小万とは好対照な夫婦。ワケアリな二人は金儲けのために夫婦
であることを偽り、小万は客をとって商売する身。
前回、二人とも何かが足りない気がしていたのだけれど、この日
は親密度がグッと増し、色っぽいムフフなご両人♪
三五郎は小万スキスキモードにあふれていて、それゆえ源五兵衛
と小万の関係を気にしてヤキモチを焼いている、その気持ちが可
愛らしく、愛おしく感じられた。

どうかした瞬間に見せる眼差しがゾクゾクするほどの色気を醸す。
(キャーーーッ、なんてエエオトコ♪ 三五郎ーーーっ!と絶叫
したい気持ちを咄嗟に飲み込む私。以降悶々と二人を見つめる。)

商売とはいえ、他の男に女房を差し出す三五郎の心境はやはり割
り切れない部分があるらしい。(それがこの後、相手の男を騙し
て金をゆすることに発展していくわけだが、ともかく。)
舟の上で背中から小万の胸に手を回したり、体の向きを変えて、
おもむろにガバッと右のおみあしを見せながら、小万の体を押さ
え込むところも・・・いい感じ♪ キャッ。
月光がさし、向こうの舟には源五兵衛!
これに気づいた二人が慌てて芝居し、けっきょく小万が源五兵衛
の舟のほうに行ってしまうところで、「チクショーッ!」。
大人のオチで終わるこの場面、洒落っ気たっぷりで私は大好き。
この「チクショーッ!」に江戸の風情が一気に匂い立つのは、
ごめんなさい、歌舞伎座で観た菊五郎さんが絶品だった。
愛之助さんにリクエストする部分があるとしたらここかな。
初役だし、この若さではそれはなかなか難しいのではと思う。

※あと源五兵衛と三五郎についてチョコッと追記の予定で、とり
あえずアップ。(うう・・・)


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