いま松竹座に行かへんかったらどこ行くのん?
と書いたのは、2007年7月23日のブログ記事。
仁左衛門さんが女殺油地獄に出たときの公演だ。
今月は久々に同じフレーズを書きたい気分♪
13日の日曜日は昼夜通しだった。
昼と夜で見事に対照的な演目になっていると思う。
白と黒。
片や勧善懲悪のすっきり型。笑って帰れる。
片やズタズタのもやもや~。放心状態・・・。
だから、昼を見たら夜を。夜を見たら昼を。
もうそれしかないッ!!
観劇当日にツイートしたメモを見ながらまとめてみる。
未見の人にはネタバレになるのでご注意!!
昼の部「通し狂言 彦山権現誓助剱」2回目
劇場 大阪松竹座
観劇日 2011年2月13日(日)
座席 3階2列
今回は二幕と三幕。仁左衛門さんご登場前の舞台について少し
詳しく。
二度目の観劇は別の味わいがあった。
特に二幕目がいい!
自分の父の死をストレートに家族には言えないお園の「しの字尽
くし」。酔態と見せかけ、実は・・・。
1回見てわかってから見直してみると、コミカルな言動に笑いを
誘いながらも、心に抱えた悲痛を必死にこらえ、むりに演じてい
る様子が見えてくる。孝太郎さんの深みのある芝居に感心する。
段四郎さんの衣川弥三左衞門が要所要所でピリッと引き締める。
あくまでも冷静沈着で公明正大。だけど、中身はあったかくて。
お園の意志と技量を弥三左衞門が試すシーンが見せ場。
お園は剣術指南役娘としてのプライド、心意気を見せつけて天晴
れ。仇討ちへの強い憎しみと使命感にウルウルしてくる。
一方、夫に死なれた悲しみもそこそこに仇討ちに向かわねばなら
ない妻の気持ちを素直に表すお幸。住み慣れた我が家を眺めまわ
して名残惜しそうに立ち去る表情が胸を打つ。竹三郎さんお幸の
引っ込みに胡弓の音色がかぶり、涙涙。
三幕目。
車に乗せられ、他人に引っ張って来てもらい、足萎えの格好で再
びお菊と弥三郎との元に現れる京極。
いざ仇討ちと身構える二人に、悲惨な現状を訴える姿が弱々しく、
野太い声は今にも消え入りそう。
京極、心を入れ替えたかと思いきや・・・。
いやー、台車の上にうずくまっている京極が3階からみるとただの
布の塊みたいに見えるんだけど、その間に早変りしてるんだ~。
その瞬間パーッとね!
弥三郎は簡単にやられちゃうし、お菊はね~。
お菊の嘆きの台詞の間、京極は後ろの明王か何かの石碑に腰掛け、
右足を組んで、両手を広げて懐手。
実にふてぶてしいの!この憎たらしさが愛之助さん、うまいっ。
そこがマイ鑑賞ポイント♪
そのあと、おもむろにひと太刀。お菊の髪が~。油地獄みたいな
二人の見得が決まって、お菊のエビぞり~。
逃げ惑いながら上手に行くお菊を見てニヤリとほくそ笑みながら
近づく京極の顔にビクッ。
グリグリととどめを刺したあと、可愛い顔、と言いながら立ち去
ろうとする京極の着物の裾をつかむ、お菊の執念!
で「死んでも顔の可愛いやつよ」とズンズン顔を近づけ・・・
口をつけちゃう?(3階からは見えない・・・)
あー、ほんまにヤラシッ!(笑)
花道を引っ込む京極、目を一瞬閉じて余裕の引っ込み。
頬が痩せた感じの愛之助さん、なんだかとても艶っぽい~。
ドキドキ。
ちなみに、四幕。
六助の糸に乗った台詞が本当に素敵だ。特に高笑いのところが
気持ちよくて好き!
京極は師匠の敵ということもあるけど、六助の最大の憎しみは、
親孝行を装った、ということなのか、と思える。
この日は六助、「庭にひらりと」というシ-ンで一瞬どきり。
足元がちょっとあぶなくて「庭にひやりと」になりかけた。
そこはうまく事もなげにふるまう仁左衛門さんでございました。
大詰は意外にあっさり・・・。
夜の部「盟三五大切」
劇場 大阪松竹座
観劇日 2011年2月13日(日)
座席 3階右列
日曜日の1回目観劇以来、静かになれる時間があると頭の中をあ
のゆっくりした地唄が流れてくる。
(といっても歌詞はわからないのだけれど。)
そこにカンカンッじゃなく、柔らかく入る附け打ちの音。
舞台では源五兵衛がこれでもか、と言わんばかりに凄惨なシーン
を繰り広げているのに、そこに地唄を重ねるという歌舞伎独特の
美的センスにはまいった。
仁左衛門さん演じる源五兵衛が修羅を演じれば演じるほど、鬼に
なりきればなりきるほど、心は雨。泣いているのは源五兵衛自身
なんだよねー。
他人をズタズタにした分、自分自身もまたズタズタになっている。
そのうえ観ている観客の私まで・・・ズタズタのぼろぼろ。
雨の音を聴きながら、思いっきり悲しいのに、思いっきり美しい
と思ってしまう花道の引っ込み。
上の階から見ると、源五兵衛の破れ傘まで美しいと感じられた。
思いっきり息をつめて、固唾を飲んで見つめるあの場面。
最後まで見て、切り口上は救いなんだと気づいた。観客のための。
後世のどんな現代ドラマも斬新な時代劇もかなわない。
こんなことを江戸時代にやってのけた鶴屋南北というひとは。
三五郎の愛之助さんも初役でがんばってるよ。
薪車さんの八右衛門もいいよ。
だけど、それはそれ。これはこれ。
この演目はどうしたって仁左衛門さんでしょう~~~。
夜の部については2回目観劇後にあらためて書きたいと思う。
花道の仁左衛門さんをできるだけ長く観ていたいと思い、夜の部
は3階だけれど右列最後方席を選んだ。満足!
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二月大歌舞伎 昼の部「通し狂言 彦山権現誓助剱」(2)
二月大歌舞伎 昼の部「通し狂言 彦山権現誓助剱」(1)
歌舞伎以外の舞台
花組ヌーベル「盟三五大切」観劇メモ
文楽「国言詢音頭」(連休中の3本と二人オフ♪の後半に追記)
と書いたのは、2007年7月23日のブログ記事。
仁左衛門さんが女殺油地獄に出たときの公演だ。
今月は久々に同じフレーズを書きたい気分♪
13日の日曜日は昼夜通しだった。
昼と夜で見事に対照的な演目になっていると思う。
白と黒。
片や勧善懲悪のすっきり型。笑って帰れる。
片やズタズタのもやもや~。放心状態・・・。
だから、昼を見たら夜を。夜を見たら昼を。
もうそれしかないッ!!
観劇当日にツイートしたメモを見ながらまとめてみる。
未見の人にはネタバレになるのでご注意!!
昼の部「通し狂言 彦山権現誓助剱」2回目
劇場 大阪松竹座
観劇日 2011年2月13日(日)
座席 3階2列
今回は二幕と三幕。仁左衛門さんご登場前の舞台について少し
詳しく。
二度目の観劇は別の味わいがあった。
特に二幕目がいい!
自分の父の死をストレートに家族には言えないお園の「しの字尽
くし」。酔態と見せかけ、実は・・・。
1回見てわかってから見直してみると、コミカルな言動に笑いを
誘いながらも、心に抱えた悲痛を必死にこらえ、むりに演じてい
る様子が見えてくる。孝太郎さんの深みのある芝居に感心する。
段四郎さんの衣川弥三左衞門が要所要所でピリッと引き締める。
あくまでも冷静沈着で公明正大。だけど、中身はあったかくて。
お園の意志と技量を弥三左衞門が試すシーンが見せ場。
お園は剣術指南役娘としてのプライド、心意気を見せつけて天晴
れ。仇討ちへの強い憎しみと使命感にウルウルしてくる。
一方、夫に死なれた悲しみもそこそこに仇討ちに向かわねばなら
ない妻の気持ちを素直に表すお幸。住み慣れた我が家を眺めまわ
して名残惜しそうに立ち去る表情が胸を打つ。竹三郎さんお幸の
引っ込みに胡弓の音色がかぶり、涙涙。
三幕目。
車に乗せられ、他人に引っ張って来てもらい、足萎えの格好で再
びお菊と弥三郎との元に現れる京極。
いざ仇討ちと身構える二人に、悲惨な現状を訴える姿が弱々しく、
野太い声は今にも消え入りそう。
京極、心を入れ替えたかと思いきや・・・。
いやー、台車の上にうずくまっている京極が3階からみるとただの
布の塊みたいに見えるんだけど、その間に早変りしてるんだ~。
その瞬間パーッとね!
弥三郎は簡単にやられちゃうし、お菊はね~。
お菊の嘆きの台詞の間、京極は後ろの明王か何かの石碑に腰掛け、
右足を組んで、両手を広げて懐手。
実にふてぶてしいの!この憎たらしさが愛之助さん、うまいっ。
そこがマイ鑑賞ポイント♪
そのあと、おもむろにひと太刀。お菊の髪が~。油地獄みたいな
二人の見得が決まって、お菊のエビぞり~。
逃げ惑いながら上手に行くお菊を見てニヤリとほくそ笑みながら
近づく京極の顔にビクッ。
グリグリととどめを刺したあと、可愛い顔、と言いながら立ち去
ろうとする京極の着物の裾をつかむ、お菊の執念!
で「死んでも顔の可愛いやつよ」とズンズン顔を近づけ・・・
口をつけちゃう?(3階からは見えない・・・)
あー、ほんまにヤラシッ!(笑)
花道を引っ込む京極、目を一瞬閉じて余裕の引っ込み。
頬が痩せた感じの愛之助さん、なんだかとても艶っぽい~。
ドキドキ。
ちなみに、四幕。
六助の糸に乗った台詞が本当に素敵だ。特に高笑いのところが
気持ちよくて好き!
京極は師匠の敵ということもあるけど、六助の最大の憎しみは、
親孝行を装った、ということなのか、と思える。
この日は六助、「庭にひらりと」というシ-ンで一瞬どきり。
足元がちょっとあぶなくて「庭にひやりと」になりかけた。
そこはうまく事もなげにふるまう仁左衛門さんでございました。
大詰は意外にあっさり・・・。
夜の部「盟三五大切」
劇場 大阪松竹座
観劇日 2011年2月13日(日)
座席 3階右列
日曜日の1回目観劇以来、静かになれる時間があると頭の中をあ
のゆっくりした地唄が流れてくる。
(といっても歌詞はわからないのだけれど。)
そこにカンカンッじゃなく、柔らかく入る附け打ちの音。
舞台では源五兵衛がこれでもか、と言わんばかりに凄惨なシーン
を繰り広げているのに、そこに地唄を重ねるという歌舞伎独特の
美的センスにはまいった。
仁左衛門さん演じる源五兵衛が修羅を演じれば演じるほど、鬼に
なりきればなりきるほど、心は雨。泣いているのは源五兵衛自身
なんだよねー。
他人をズタズタにした分、自分自身もまたズタズタになっている。
そのうえ観ている観客の私まで・・・ズタズタのぼろぼろ。
雨の音を聴きながら、思いっきり悲しいのに、思いっきり美しい
と思ってしまう花道の引っ込み。
上の階から見ると、源五兵衛の破れ傘まで美しいと感じられた。
思いっきり息をつめて、固唾を飲んで見つめるあの場面。
最後まで見て、切り口上は救いなんだと気づいた。観客のための。
後世のどんな現代ドラマも斬新な時代劇もかなわない。
こんなことを江戸時代にやってのけた鶴屋南北というひとは。
三五郎の愛之助さんも初役でがんばってるよ。
薪車さんの八右衛門もいいよ。
だけど、それはそれ。これはこれ。
この演目はどうしたって仁左衛門さんでしょう~~~。
夜の部については2回目観劇後にあらためて書きたいと思う。
花道の仁左衛門さんをできるだけ長く観ていたいと思い、夜の部
は3階だけれど右列最後方席を選んだ。満足!
●このブログ内の関連記事
二月大歌舞伎 昼の部「通し狂言 彦山権現誓助剱」(2)
二月大歌舞伎 昼の部「通し狂言 彦山権現誓助剱」(1)
歌舞伎以外の舞台
花組ヌーベル「盟三五大切」観劇メモ
文楽「国言詢音頭」(連休中の3本と二人オフ♪の後半に追記)
(…って覚えていらっしゃいますでしょうか^^;)
私も夜の部だけですが観に行きました!!
しかも同じ13日に…ニアミス(!?)だったのですね。
本当に終わってしまうのが勿体なく思えるくらい素晴らしい舞台でした。
役者さん達の見事なアンサンブル…仁左さまが素晴らしいのは言うまでもありませんが(愛之助さんが素敵なのも^^)、やはり舞台の表裏の方々の息やテンションがぴったり合わなくてはあそこまで素晴らしいものはできないなあとあらためて感じました。
マグネット…私も同じ外郎売さんを購入しましたです(^^)
もちろん、その個性的なHNは忘れられませんよ~!
そうですか、同じあの場におられたのですね♪
> やはり舞台の表裏の方々の息やテンションが
> ぴったり合わなくては
そうですねー、音楽、附け打ち、雨の音・・・
今回は音が強く印象に残ってますね。
もしかしたら私たちの固唾を飲む音も?(ゴクリ!)
本当に何もかもが素晴しい一体感を味わえた舞台です。