星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

だいとう塾特別講座(1)

2009-03-08 | AINOSUKEさん

講座名    2008年度だいとう塾特別講座
       「歌舞伎の世界 片岡愛之助さんに聞く」
講師      歌舞伎俳優  片岡愛之助
聞き手     文化プロデューサー 河内厚郎
場所      大東市立生涯学習センター アクロス
日時      2009年3月7日(土) 13時









今回も笑わせていただきました、愛之助寄席♪
ざっと1時間35分のトークの中でどれだけ笑ったことか。共演者の声色付き作品解説も可笑しかったし、なかでも先月の演目『吹雪峠』の話がサイコーでした。これからは講座とは言わず、高座と呼ばせてもらいます(笑)。
この日は愛之助さん、全身黒づくめ。黒のスーツ、黒のシャツ、黒の光沢あるタイ。笑顔でご登場でした。
テーブルをはさんで向かって左に河内厚郎さん、右が愛之助さん、奥にプロジェクター用スクリーン。今回も写真披露がありました。

新鮮なほうがいいから、事前に打ち合わせするのがイヤだそうで、今回も河内さんの質問にぶっつけ本番で答えてくださいました。
「僕は石橋を飛んで渡るほうなんですよ。たたいて崩れたらエライことですからね」とのこと。座右の銘は?「当たってくだけろ」(即答)と通じるものがあるかも。

メモによれば、トークの話題はざっとこんな感じ。
映画出演の話、写真集、二月花形歌舞伎(特に女殺油地獄、吹雪峠)、霊験亀山鉾で演じた2役、役を教わる人々、歌舞伎の世界に入った経緯、お気に入りの役、仲のいい役者仲間、楳茂都流家元襲名、出石永楽館のこけら落とし公演、歌舞伎公演の稽古のしかた、結婚観・好きな女性観、車、座右の銘、差し入れ、秀太郎さんのこと、若衆歌舞伎、上方歌舞伎に携わる人々について等。
その中から特に面白かった話を思い出してみます。

●吹雪峠
トークの順序とは全く違いますが、まず「二月花形歌舞伎」の話題から。
観劇した私たちの「?」が解消するようなお話が聞けました。ハガキで寄せられた質問の中から「忘れがたい失敗は?」をうけて、話し始める愛之助さん。
「『吹雪峠』ですね、あれは悲劇なんですよ」と言いつつ、すでに顔が笑っています。(ニタニタニタ~、一人思い出し笑い。)
稽古するにあたり、脚本の宇野信夫先生に師事された人が演出をつけてくださったとのこと。宇野先生の書かれた演出指示がかなり克明で、その通りにやってみたら「獅童くんが面白くて」。「ね、あにきぃ。(←獅童さんの声色で)って、それは違うやろ、と。」とにかく稽古場から大爆笑だったそう。
で、本番のとある1日。扉が壊れたそうです。
山小屋に入るなり扉をしめたら、外れたのか、扉が倒れてきた。で、ナナメに建てかけたらまた倒れてきて、大笑いしながら「えらい風だなあ」と言うと大爆笑。あとの二人も満面の笑みで見ている。「扉を見たら、また倒れてきて獅童くんの頭に当たって、イテッ!って。」
あんなに笑いこけたのは初めてでしたね、とのこと。しかも、獅童さん「このやつれたツラを見てくれ」の台詞を勝手に変えて「このしゃくれたツラを見てくれ」とアップで迫ってくる。ヤメテくれー、と。この日はグダグダだったそうです。
「もう僕ら3人にはやらせてもらえませんね」というので、会場爆笑!

そこで気になるのは、あれはシリアス?コメディ?という点。「先輩のビデオを見たら、笑いは一つもなかったんです。全然違う芝居になってしまいました。」(わわ、やっぱり!)直吉は直吉で歌舞伎っぽくしないといけないし、あとの二人はああだし、二つが別の演劇という感じ。
それでも「宇野先生の演出でやらせて頂きました」とのことでした。(え? 演出通り? ってことは、笑いが起きるのはまんざら間違いではないってこと? またまた新たな疑問がわいてしまいました。)

●女殺油地獄
与兵衛の役は1回目はわからずにやっていた部分もあるけれど、2回目になると、いろんな経験もしているので納得して演じられた部分が多い。また、出演している人たちが変わると新鮮でもある、と。
亀治郎さんとはひじょうにやりやすかったそうです。「ああいう女っているよなあと思います。ちょっとえらぶって、私がお姉さんなのよ、みたいな感じ」(←ここ亀治郎さんのお吉の顔真似で。)小菊についても「あんな女いるよねえ・・・・・・」。
獅童さんの話になると、またもや思い出し笑い。(今回のツボらしい)「ていっ、て怒るところが面白くて。もっと激しく怒ってと言ってたんですよ」とのこと。
与兵衛とはどういう人間か?「お父さんとお母さんが大好きで、思いやりがある。でも、だらしなくて、けっきょく内弁慶なんでしょうね」。

今回時間の都合で実現しなかったけれど、本当は「豊嶋屋油店の場」で終わりにせず、「逮夜供養の場」もつけたかったのだと。「あのままだったら、どんよりとなってしまうでしょう」。「次回やらせていただけたら、ぜひそれをやりたいです」。(ハイッ、それ見たいです。ていうか、三演、四演と続けてほしい!)

●映画のこと
「私は貝になりたい」「Beauty」「宮城野」等、たくさんの映画に出演しているという話から、女優さんとのロマンスは? という話に。ロマンスはないけれど「宮城野」では初のラブシーンがありましたよ。ということで、女優さんとの共演は緊張するが、男の人とのラブシーンは違和感がない、と。染五郎さんとの舞台でボーイズラブをやった時も全然抵抗なかったそう。
(↓話がだんだんそれていって・・・)
当時ボーイズラブの取材を受けた時、みんなが担当の春猿さんにフッたら「なんであたしが担当なの?」(←ここ春猿さんの声色で)って。(会場よろこぶ♪)とにかく女優さんは緊張する、というお話でした。

●写真集
話題の写真集ですがヌード写真ですか? という河内さんの質問に「ちょっと待ってくださいよー!」「僕、写真集なんて出そうとは思ってなかったんですよー! 売れない写真集なんて悲しいし。長年とってきた写真でもないですし。」でも、カメラマンさんがよく撮ってくださいました、と。
撮影は11~1月の3カ月間。100の質問なんて本音がそのままだし、とつけ加えてから、急に私たちのほうを見て「買ってください!!」

●1月の「霊験亀山鉾」
たくさんの役を演じたように見えるけれど、実は2役。それをお客さんの中にはわかってない人もいらっしゃるようなんです、と。
5役もやってましたね、って言われたんですけど。「せっかく台詞で説明してるんですけどね」とツッコム愛之助さん。
仁左衛門さんの2役についても、井戸の中に落ちた人がナンデ棺桶から出てくるのかわからない、という人がありまして。「それは2役なんですけど」と、再びツッコム愛之助さん。


ふう~。とりあえず今回はこれぐらいに・・・。
テンポよく、ほとんどよどみなくしゃべり、お話の中でツッコミまくるんだけど、キツイことを言っても不快じゃないし、耳ざわりがいい。そんな愛之助さんのトークの味が文字で伝えられないのがもどかしい~。
今から出かけてしまうので、続きはまたあらためて!(の予定)


だいとう塾特別講座(2)(このブログ内の関連記事)

●愛之助さんの過去のセミナー、講演レポ
「古典はともだち歌舞伎セミナー」第一部だけ(2006年12月)
「歌舞伎講座「片岡愛之助 歌舞伎への招待」(2008年3月)
講演会「愛之助」とわたし(1)(2008年5月)
講演会「愛之助」とわたし(2)(2008年5月)
7日遅れの福知山レポ(2008年10月)


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12 コメント

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楽しんで読ませていただきました。 (鈴ねこ)
2009-03-08 09:26:30
その場が名浮かぶレポ、有難うございます。
今年の浅草はさびしかったですが、関西でははじけまくりでしたようで。

とても楽しく拝読、今後も楽しみにしています。
それにしても、愛之助さんはどこから見ても性格がチャーミングですね。姿声は論外ですが。
ありがとうございました、遠征したくなりました。
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ありがと~~♪ (しろう)
2009-03-08 10:16:34
ムンパリさま♪
期待半分で覗いてみたら・・レポはやっ!!
すばらしいですっ!
愛之助さんの味、文字でじゅうぶん伝わってますっ!
あの大すきなやわらかい関西弁もくしゃっと笑顔も・・
うぅ、読んだだけで顔が緩んでしまう(爆)
ありがとう~~!続編楽しみにしてます。
わたしもいつかまたこういうトークをナマで聴きたいです。
わたしは昨日、15年ほど前の愛之助さんの姿に「きゃ♪」とときめき、
その後「Beauty」で再びうつくしくないものになってまいりました(笑)


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くふふ (桜扇)
2009-03-08 11:57:06
吹雪峠の話は本当に面白かったですね。歌舞伎じゃなくてコントみたい(笑)。演劇界の劇評がコワイですね。

今年の新年会で初めて愛ちゃんの生トークを聞いての今回のレポだったので、しゃべっている声の調子とかが想像出来て今まで以上に楽しく読まさせて頂きました♪

ホントは今日Beautyを見に行くつもりにしていたのですが、寝坊とアクシデントがあり断念!明日出直しま~す。
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ありがとうございます (とみた)
2009-03-08 16:15:23
吹雪峠は、直吉についてだけ言えば、確かに悲劇でしたよ。獅童さんの「このしゃくれた面~」というのは、私が見た7日にも言ってました。絶対原作と違うと思ったんですが、「やつれた面」だったんですねえ。

亀治郎さんは、十二夜の麻阿を見た同僚が「ああいう女いる」と言ってましたから、実在感のある女を演じるのがうまいんですね。

愛之助さんの「ていっ」ははっきり記憶に残ってるほど印象強かったんですが、獅童さんのはどんなだったんでしょう。かわいいの?
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はじめまして。 (ムンパリ)
2009-03-09 01:27:05
鈴ねこさん、ようこそ♪
コメントを頂きましてありがとうございます。
去年は関西人にとっては大変キビシクて大変でしたが、
今年はゆっくり地元で楽しませて頂いております。
ちなみに、バレンタインは大阪でしたが、ホワイトデーは
東京で楽しいイベントがあるようですね♪
羨ましいです。

> 愛之助さんはどこから見ても性格がチャーミングですね。
おっしゃる通りだと思います。
舞台と同じくらい、トークの内容も話し方も魅力的です♪
返信する
うひゃ! (ムンパリ)
2009-03-09 01:27:41
しろうさん、期待されてました?(笑)
去年、生トーク(聴講)デビューしちゃったしろうさんなら、
よ~く伝わったかもしれませんね。
ホントはもっと面白いことも言ってたんだけど、知らない人が
読んで語弊があるといけないので、控えめに書いてます(笑)。
あ、若鮎の巻、見たんですね~♪
「beauty」もリピーターですか!
名古屋は松嶋屋三昧の日々なんですねー。
存分に楽しんでくださいね。
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おほほ (ムンパリ)
2009-03-09 01:33:48
桜扇さん、よかったです~♪
生トーク・・・使用前、使用後みたいなカンジ?(笑)
関西人はよく、親しみをこめて会話の中にツッコミを入れるん
ですけど(悪意はまったくなく)、愛之助さんは特にツッコミ
の間と切れ味がいいので、つい笑ってしまうんです。
自分で話を広げながらツッコミも入れ、ときにはフォローも
するというカミワザトーク♪
あ、「Beauty」を見に行かれるときはハンカチ2枚、
持っていってくださいねー!!

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あら! (ムンパリ)
2009-03-09 01:36:14
とみたさん、2月も来られてたんですか。
(すみません。勘ちがいしておりました。)
でも、与兵衛は封印しちゃってたわけですね(笑)。
私が見た吹雪峠は2回とも「このしゃくれた面~」ではなく
「やつれた面」でした。日によって変えてたんだ~~~。

私の場合、愛之助さんの「ていっ」は、師匠の仁左衛門さんを怒る
という構図が可笑しくて、それでニマニマした覚えがあります。
今回の獅童さんの怒り方は、愛之助さんの注文通りですね。
ビックリするくらい大声で、短く「ていっ!」というか
「てっ!」に近いかな。情け容赦なくピシャリ!という感じでした。
愛之助さんの時は1回だけでしたが、獅童さんは歩き始めて
そのまま行ってしまうと見せかけて、もう一度「ていっ!」と
言うので、お客さんにすごくウケてました。

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涙、涙でした。 (桜扇)
2009-03-09 22:07:29
Beauty、見て来ました。
いい作品でしたねぇ。
貝になりたいよりBeautyの方が泣けて仕方ありませんでした。ハンカチ二枚は本当に必要でした。
無念さとか戦争に対する不条理さが全く無い訳ではないけれど、ある程度納得できる終わり方だったかな、と思います、私的にはですけど。
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わたくしも・・・ (ちづる)
2009-03-10 01:07:20
愛之助高座で笑わせていただきました~(*^^*)

吹雪峠の話、すごかった。。。(笑)
戸が外れた日ではなかったですが、2度目に観たときは、わたしも「しゃくれ」で吹きました!あれは反則や!(笑)

そうそう、七之助くんの女方は女性から見てもほんとにキレイですが、役者仲間さんから見てもそうなんですね。
「どっちにもいいカオして、ああいう女いるよね~。でもきれいからええわ~。許す」
って言ってましたよね(笑)
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