月岡芳年が女性のしぐさを「~したい」と描いた美人画
見立多以尽(みたてたいづくし)より
『かおが見たい』
国立国会図書館デジタルコレクション
大蘇芳年筆
詞書
巫山(ふさん)の雨を憎む歌妓(べっぴん)は
俳優買(どうらく)の お座敷つづきに
とかく不参の雨を妬(ねた)まれ
破鏡(はきょう)ふたたび待合の 軒行燈を照さずして
髭大尽を取逃せば 懇望(ねだり)て置いた釵(かんざし)も
落花かさねて頭(こおべ)にのぼらず
何と正午の号砲後(どんすぎ)に 化粧(みじまい)だけは仕あげても
面白からぬ口なしの 山吹色の楮幣(さつ)の顔
見ねば心のすみかねる 欲の世の中 欲の世の中。
操觚者 轉々堂主人
【巫山の雨】: 楚の懐王が昼寝の夢の中で巫山の神女と契ったという故事から
男女が夢の中で結ばれること また、男女が情を交わすこと。
【落花枝に返らず 破鏡再び照らさず】: 一度損なわれたものや
死んでしまったものは二度と元に戻らないというたとえ