バランス型でレバレッジ型
株式だけでなく債券等に投資するバランス型で基本は安定的な投資信託だが、レバレッジを掛けることにより収益率アップを目指すタイプの投資信託が注目を集めていた。3つほどピックアップして、3月19日の基準価格を確認すると以下の通りである。
出典 ヤフーファイナンス
設定時期に差があるので、基準価格の絶対値の差はあまり意味はないが、レバレッジの高いものほど悲惨な状況になっている。グローバル5.5倍バランスファンドは、今年2月12日の設定なので、1ヵ月ちょっとで4割も下げていることになる。
グローバル3倍3分法ファンドの運用内容
レバレッジ型の草分けであり、代表的な投資信託は、「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2019」で7位に入ったグローバル3倍3分法ファンド(1年決算型)だろう。この投資信託が設定される前に証券会社から案内がきていて注目はしていたが、レバレッジの効果がどのように効くのか不明だったこともあり、投資しなかった。
この投資信託の運用内容を目論見書から抜粋すると次のようになっている。
図の通りであるが、要約すると60%は全世界株式、40%は先進国リートとした上で200%分を先進国債券としている。値動きの激しい株式は60%として、残りは値動きが小さく、株式と反対方向に動く(逆相関)ことの多いリートや債券に投資先を配分して安定性と収益性を狙っている訳である。アイデアとしては確かにいいと思ったので、興味をもって観察していた。
この投資信託の基準価格の直近1年間のチャートは、以下の通りである。
出典 ヤフーファイナンス
基準価格を順調に上げていてさすがだなと思っていたら、2月21日に13,600円を超えた後は、米国株の急落に合わせて急落した。3月5日には13,000円近くまで一度戻したが、その後は力尽きた感じだ。3月に入ってリートも債券も売られるようになって、株式の下げに対する基準価格の下げのブレーキ役を果たせなくなっているからだ。直近では米国のS&P500の下げよりもきつくなっているほどだ。
参考までに、この投資信託の基準価格とTOPIX、S&P500の1年間の比較チャートも載せておく。
出典 ヤフーファイナンス
さすがに今回は、運用能力(投資信託の運用能力は低い)というよりも、相場環境のせいだと言っていいだろう。ただ、レバレッジを効かせている以上、リスクが増えているのは当然だとも言える。また、グローバル3倍3分法ファンドが人気だったからと言って、同じ運用会社がこの時期に安易にグローバル5.5倍バランスファンドを投入したのはいただけない。
キャッシュ・イズ・キング
米国10年債の利回りを確認してみると、直近半年のチャートは以下の通りで、3月9日を底に利回りは急反転している。債券価格は急落していることになる。
出典 SBI証券
リートも暴落しているし、金価格でさえ下げている。想定以上の危機的状況になって、売れるものはとにかく売って現金化する動きとなっている。いわゆるキャッシュ・イズ・キングというやつだ。このため、3倍3分法ファンド以外のレバレッジ型投資信託もレバレッジを効かせて急落している。
為替でも、リスクオフの円高なんかはどこかに飛んでしまい、ドルが最重要視されて円安だ。3月20日の日中は一時111.3円台にまで上げていた。3月9日には瞬間的に101.2円割れだったので10営業日で10円もドル高になっている。
債務/債券バブルの崩壊はこれから
株式市場の下げ方は既にバブル崩壊並みになっているが、株式市場は動きが早いので、早く下げているだけだ。本当のバブルが崩壊する(次に崩壊するのは債券/債務バブル)のはこれからだと思う。
今後、新型コロナウイルスの感染(武漢肺炎)拡大による業績悪化が各業界に行き渡り、それに伴って脆弱な企業の債務返済が滞り、デフォルトが頻発して債務/債券バブル崩壊に発展する。契機が何になるかは別にして、いずれ起こることは必然だったと思うし、しばらく耐えるしかないのだろう。フルインベストメントで投資しているので予想が外れればうれしいけど、今回のダメージは長く続くだろうなと覚悟している。
【2020.4.13追記】
グローバル3倍3分法ファンド等の状況について解説する日経の記事が出た。有料記事だが、登録すれば毎月10本までは無料で読める。
レバレッジ型で投資対象が上下すると損失が拡大し、投資対象が元の価格に戻ってもレバレッジ型では元に戻らないという基本的性質がある。そのことについて、次の記事(レバレッジの損失拡大効果)で解説したので、合わせてお読み頂きたい。