3年を卒業させたら次は1年の担任になりたいとみんな希望するけど、希望通りになるとは限りません。
転勤すると決まった時に細かな配慮がいる生徒について、この生徒にはあの担任を~という希望がある場合も生活指導上ありました。
体格の良い部活が命といったピッチャーの男子生徒のクラス担任に指名を受けた事が15年ほど前にありました。
学年が8クラスほどあるので所属学年の生徒だけで手いっぱいですから、他学年までの顔は見知っていても詳しい名前までは知らないのが普通でした。
色眼鏡では見ないこと~
先入観は間違いの元~
まず目の前にいる生徒は真っ白なんだと自分に言い聞かせるのです。
言い聞かせながら教室に向かいます。
初対面ですから気合を入れて入り口の重たい戸を開けました。
同じクラスになったもの同士が何人ずつか小さく固まり集まっていましたがそれぞれの席に座りました。
不安そうに私を見ています。
固まりを崩さない黒い固まりの中心にいるのがIでした。
おそらくこちらの出方を窺って仲間に指示を出しているのでしょう~
なかなか彫りの深い濃い顔をした無口そうな生徒です。
2年の新学級担任なので、生徒もこちらの値踏みをしているのが良く分かります。
静かに席に着くように促して、落ち着いたところで催眠術にかける時の口調で小さな声で話し始めます~
穏やかな口調であくまでも丁寧に~
聞き取れないからよけい聞く姿勢が出てくるころに、出会えたと言う縁の深さをまず説きます。
『袖振れ合うも他生の縁』と板書して、少々縁があるという意味ではなくって、生まれる前から縁があったのだと話していきます。
選ばれた40人なんですよ~と分からせます。
次に自己紹介で家族構成を話しました。
男3人の母親で、上二人は大学生、下は高校生だから男の子の悩みはよく理解できます~
また、先生は4人姉妹の長女だから女の子の心理もわかります~
だんだん安心した顔つきになり聞き入っています。
Iもしっかりと聞いていました~
彼がこのクラスで一目も二目も置かれ、取り巻きを従えているのも分かりましたが、素直に自分を見つめることができるのだと言うことも顔つきで理解できました。
このIのボスに私がなればいいと決まりです。
新しい学年の新しいクラスになり、担任も新しく変わったわけだから、みんなのことは何一つ知りません。
真っ白の状態ですよね~
汚い色に仕上げていくのかきれいな色に塗り替えていくのかはあなたが今から決めることなのよ~
どんな色に染め上がっていくのか楽しみですよ~
美しい輝く色に染めたいのならば、ハチロウさんはこうおっしゃっていますよ~
ひとにはやさしく 自分にはきびしく/これを続けると/白は すばらしい色になる/
ひとをいたわり 自分をきたえる/これが重なると/輝きのある色になる
さあ、スタートは今日からですよ~
今話を聞いた感想や決意を短く20字以内で書きましょう~
と言いながら名刺大の紙を配ります。
大きな紙には抵抗を示すので、必要最小限のものを用意するのです。
Iは「一球入魂」と書き、「毛虫のように嫌われている俺だけど、いいかな~?」と疑問文で終わっていました。
つづきは明日~
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