
(写真は、映画「この世界の片隅に」の
パンフレットから。)
私のブログは、テーマをウォーキングに絞って
いるので、基本的にはウォーキングに関係のない
映画評や書評は書かないことにしているのですが、
今回は特別に筆をとりました。

映画「この世界の片隅に」は、同名の原作漫画=
こうの文代、監督=片渕須直、主人公の声=能年
玲奈で、監督の片渕はジブリで宮崎駿の元に
いた人らしいです。
今月、日本アカデミー賞授賞式で、「君の名は。」
を抑えて、最優秀アニメーション賞を受賞
しました。

以下、映像は全て、映画館で購入した
パンフレット(1,000円)からです。

物語の舞台は、第二次世界大戦中の広島県・呉市
です。

昭和19年、呉に嫁いできた18歳の絵が得意な
女の子「すず」が、戦時下の苦しい生活の
なかでも、たくましく懸命に生き抜く姿が
描かれた作品です。

いわゆる”普通の日常”が描かれているだけです
が、テンポが良くて間延びしていないところが
素晴らしいです。

これまでの似たタイプの映画といえば、「火垂る
の墓」を思い出しますが、これとは対照的な全く
異なるトーンの映画です。

全編が悲しいトーンに包まれた「火垂るの墓」に
対し、「この世界の片隅に」は、戦時下のリアル
な日常の生活感溢れる”前向き”の映画です。
これまでの多くの戦争映画は、軍隊での経験や
戦場の描写が中心でした。

しかし、この映画は、戦時下に普通に生きて、
普通過ぎたために切り捨てられてしまった当時の
”日常”を、丁寧に丹念に掘り起こして描いて
います。


従って、戦争経験のない我々も、この映画の
お蔭で、戦時中の暮らしを“疑似体験”する
ことが出来ます。
また、当時の日常生活を描いた映画とは言い
ながら、空襲に高射砲で対抗する臨場感溢れる
戦闘シーンも一部にはあり、見ていると戦時下の
世界にどんどん引き込まれていきます。

この映画は、所謂、反戦映画の範疇に入る
のでしょうが、反戦映画にこんな描き方も
あったのか!、と不意を突かれたような感じ
でした。

普通の反戦映画とは逆の雰囲気の”前向き”の
映画で、日常の生活感に溢れています。
しかし、戦争は進み、舞台の呉市は、海軍の
根拠地だったために何度も空襲に襲われます。
その様な中で、主人公は、空襲で姪を失い、また
母は原爆で即死、父は戦病死、そして自らも
片方の腕を失ってしまいます。

ネタバレになるといけないので、これ以上の
ストーリーの紹介は控えますが、一つだけ、
私が最も驚いたシーンについて述べます。
それは、おっとりとして抜けている主人公のすず
が、終戦の玉音放送を聴いたときの意外な
リアクションでした!

玉音放送に対する一般庶民のリアクションという
のは、既に観念化されていて、脱力感や安堵感に
襲われて、うなだれながら放送を聞く、という
シーンだと思っていました。
しかし、玉音放送を聞いた主人公は、
「なんで? まだ負けてないのに!」、
「ここに未だ5人も残っている。私は未だ左手も
両足もある」と、両手を握りしめながら、
悔しがって、泣き叫びます!


このセリフに、私は思わず震えてしまいました。
そして、実際、当時の一般庶民のホントの
リアクションというのはどうだったんだろう
なあ~、と考え込んでしまいました・・・

主人公は、空襲や原爆で、両親や親戚や友人を
失い、自らも片腕を失いました。
そう考えると、玉音放送で「怒る」というのは、
人間としては、ごく自然で、リアルなリアク
ションなのかなあ~、という気がしてきました。
この戦争は、脱力感や安堵感に包まれて玉音放送
を聞くには、あまりにも犠牲が多すぎたのだと
思います。

間もなく、戦争体験者だけではなくて、当時の
日常生活の様子や景色などを緻密に再現出来る人
がいなくなります。
そういう意味で、この様なレベルの高い”戦争
映画”はこれが最後だろうと思い、今回は特別に
筆をとりました。

また、この映画は、クラウドファンディング
によって制作資金を集めたことでも話題に
なりました。

原作漫画の映像化を強く望んだファンによって、
目標額の2倍近い4,000万円が集まったそうです。
