誰でも自由なこころで 時代小説「かもうな」掲載中

江戸時代の仙臺藩髙橋家に養子に入った治郎の生涯を愛馬のすず風を通して描いた作品です。時代考は本当に大変でした。

かもうな 集約(6)

2024年03月01日 20時26分26秒 | 日記

かもうな

              「この子は親に似ず利発ものです。貴方さまのご教育次第では海にも山にもなると思います。

              どうぞ末永く可愛がって下さるようお願いを申し上げます。」

              父の佐藤長十郎は目を潤ませながら頭を下げた。

              時右衛門が袱紗に包んだ金子百両を差し出すと長十郎は改まり

              「これでも武士でござる、金子を頂きましては最愛の子を売ることとなり申す。今回は大恩あ

              る宍戸さまのお声がかりでかくなる仕儀となり申したが。」

              膝の上の両手を握りしめ震わせながら泣くまいと必死で耐えていた。

              時右衛門夫婦も改めて畏まり

              「必ずや貴方さまの子を幸せに致します。仙臺に御用の折には是非我が家にお立ち寄りください。」

              長十郎は毅然として

              「いや 治郎とは縁を切ったも同然 これが最後の親としての務めでございます。親とは寂しいもので

              ございますなぁ。」

              時右衛門夫婦は言うべき言葉が見つからなかった。

              その後、時右衛門夫婦の懸命の説得もあって結局支度金二十両をことになった。

              最後の別れ

              長十郎家族は治郎との最後の時を過ごすため家族で鎌先温泉へと向かった。

              久しぶりに家族との温泉、これが治郎にとっての父母兄との今生の別れとなる。

              三人さっさと鎌先温泉

              白石堤のコスモスすすき

              あっくてふだふだ(豊富)旅籠のお風呂

              木ぼこ買って抱いて寝る

              治郎は父兄とふだふだな湯船に浸りながら、これから一人になるさびしさと我が身に

              おきるであろうさまざまな出来事が走馬灯のように思い浮かんでは消え、その寂しさ

              は一層とつのるのはどうしょうもなかった。湯ぶねに寄りかかり

              「熱い 熱い」

              と言いながら流れ落ちる涙を拭く治郎の健気さを受け止めるかのように父はしっかり

              と次郎を抱きしめるのであった。

 

               集約(7)「すず風」に続く

 

 

 



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