ポテチ 11/日/中村義洋 監督

「僕、凄いことに気づいちゃったんです…」がこの映画のコピー。『アヒルと鴨のコインロッカー』『ゴールデンスランバー』に続く仙台市在住の作家・伊坂幸太郎原作と、中村義洋監督のコンビによる仙台が舞台の三作目。『アヒルと鴨～』と同じく今回も主役は濱田岳。チラシには「同じ生年月日でありながら、対照的な人生を歩む2人の青年」の見出しに続き、次のように解説されている。

－原作は伊坂13冊目の中短編集『フィッシュストーリー』(新潮文庫刊)の中の中編「ポテチ」。仙台の街で生まれ育った2人の青年の奇妙な運命を独自の切り口で描いた感動の人間ドラマです。プロ野球のスター選手・尾崎と、空き巣を生業とする凡人・今村、別々の人生を歩んでいるかのように思えた2人は、目に見えない強い力で引き寄せられていった…
　そんな運命に翻弄される主人公を通して、家族や恋人、友人、大切な人を想うあたたかな気持ち、運命に負けない強い心を独特のユーモアで描いていきます。

　この作品を見るには少し迷いがあった。上映時間が68分と短いのでDVDが出るのを待ってレンタルすればよい…とも考えたが、前回と同じくオール仙台ロケの文句に釣られ、結局見てしまった。そして時間だけでなく、出来も3作目は期待外れだった。レビューにもあったが、空き巣をしている割に主人公やその仲間にリアリティが感じられない。映画の世界だから…と言えばそれまでだが、やはり物足りなさがある。映画に映る場所も前作のように名所が出てくるのではなく、街の中心地が出てくるだけなので、こちらも不満だった。

　主人公が空き巣の今村で彼の側から描かれているため、プロ野球のスター選手・尾崎はあまり登場しない。この2人の生年月日が同じという設定が後半で重要な意味があるのが明らかになる。なぜ今村が尾崎にかなり拘っていたのか、単なる野球好きという理由ではなかったのだ。それで映画のコピーにもなっている今村の台詞「僕、凄いことに気づいちゃったんです…」が活きてくる。彼がそれに気付いたのは健康診断の血液検査かきっかけだった。

　出番が少ないながら野球のスター選手が登場人物のためか、主人公含め仲間の男たちは皆野球の話になると熱中する。今村が尾崎の記録や打数を熱心に話しても、恋人はバッドに球が当たった記録で興奮するのが理解できない。私も含め女には同じ思いの人が多く、野球のルールさえよく分からない者もいる。題名は忘れたがかなり前に見た米映画でも、野球の記録になると男たちが目の色を変えて喋りまくるシーンがあり、女はそれに呆れているシーンがあった。ちなみにポテチに登場する球団名は仙台ライオンズと東条ジャイアンツ。このチーム名も酷い。

　タイトル通りこの作品にはカルビーのポテチが出てくるため、鑑賞後にそれが食べたくなった方もいただろう。塩味を好む今村に対し、恋人はコンソメ味。間違って買われたので恋人がやむを得ず塩味を食べることになるが、意外にそれも美味しかったというシーンがある。実は私も同じ体験があり、私の場合は塩味が好みだが、友人が買ってきたのがコンソメだったので仕方なくそれを食べたら、思ったよりもあっさりした味だった。もっとも今でも買うのは塩味の方。

　今年2月、監督と濱田岳がプロモーションでNHK仙台放送局に来た。ローカルニュースでその様子が放送されたが、その時濱田は短パンをはいていたのだから驚いた。地元キャスターもそれを指し、「寒そうですね～」と言っていたが、1年で最も寒い時期に短パンで来るのだから、東京人はわざわざ風邪をひきに来たのか？と皮肉を言いたくなる。
　仙台が舞台の2004年度朝ドラ『天花』にもヒロインが恋人と出会う七夕祭りのシーンに、恋人が革ジャンを着ていたのに地元では唖然としたものだった。スタッフはいったい何を調べていたのだ？週間最高視聴率を初めて20%台を下回る低視聴率を出したこのドラマは、地元でも不評だった。



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　 「ゴールデンスランバー」

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