トーキング・マイノリティ

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メタボな人々 その一

2012-07-01 20:40:18 | 私的関連

 メタボことメタボリックシンドロームは、少し前までは生活習慣病と呼ばれていた。そして生活習慣病の前は暫く「成人病」の呼称だったし、名称の変更に私は不快を感じている。精神分裂症を統合失調症と呼び換えるのと同じで、名称変更しても意味がない。中でも糖尿病は生活習慣病の代名詞、私の職場にもその病に罹っている者が2人ほどいた。

 私が社会人になったばかりの頃、職場には糖尿病に罹っている上司がいた。上司には定年後の第二の職場であり、確か60歳くらいだったはず。痩せてはいなかったが決して太ってもおらず、言われなければ糖尿病患者には見えなかっただろう。彼の話で初めて糖尿病者は自らインシュリンを注射することを知った。映画やТVドラマなどでは麻薬中毒者が腕をゴム管で縛り注射するシーンがあり、同じように注射するのかと思いきや、肩や太ももにするとのこと。
 上司は冗談めかして糖尿患者の尿は甘いから、地面にオシッコするとアリが集まってくると言っていたが、患者でない私には本当の話か分らない。ただし、症状が進めば自ら注射する羽目になるというのはショックを受けたし、注射嫌いの私には怖い病気だと思った。

 もう1人は十数年前に職場にいた当時40代半ばの男性の上司。彼は完全なメタボ体型で身長は平均よりやや高いが、体重は百キロちかくもあった。先の年配者は不明だが、この上司の家族には糖尿病者はいなかったという。体型を見ただけで大食感なのが分かったし、とにかく飲み食いが大好き。酒や高カロリーの食べ物の他に甘党で、よく職場に和菓子やケーキを買ってきて同僚や部下に振る舞っていた。
 そんな上司がめまいと体調不良が続いたため、病院に行ったら糖尿病が判明、即刻入院となった。正確な血糖値は忘れたが極めて高かったそうで、医者からはあと少しで倒れるところだったと宣告されたという。

 入院前の上司の尿は濃いオレンジ色で、放尿すると洗剤を入れたようにぶくぶくと泡立ったそうだ。めまいと体調不良が続いたにせよ、激務と残業続きのためと見ていたらしく、まさかこの病に罹っていたとは思いもよらなかったとか。家族には患者がいないため、完全に生活習慣による発病なのだ。
 退院後、彼からよく糖尿病の話を聞かされた。親切で陽気な性格もあり、入院時の出来事や退院後の闘病生活の話も聞いた。まだインシュリン注射をするまでには至らなかったにせよ、この病は一生治らないと聞かされ、改めて怖い病気だと感じた。ガンや結核も治るのに、痛みがないだけで一生病に向き合うとは言葉もなかった。

 飲み食いが大好きな上司は暫くは食事制限をしていたが、やがて甘いものや脂っこい食事をするようになってきた。それまでたらふく食べていたのに、いきなり制限されるのは辛いものがある。職場にまたケーキを買ってきてくれたのは有難かったが、つい大丈夫ですか?と口に出てしまう。非患者の同僚よりも本人自身の方が気にしなかったのか?又は深刻に考えても完治する訳でもないから、そこそこに制限することにしたのか。体重も一旦は減らしたが、再びアップしてきたそうだ。

 この病の怖いところは特に痛みがないことらしい。めまいや疲れがなかなか取れないなど誰もがあることだし、そのような症状をいちいち気にしていたら勤めなど出来ない。そのため軽く考えてしまい、病が進行するようだ。体の何処かに痛みがあればすぐに異常に気付くが、それがないなら発見も難しい。今のところ早期発見は尿検査が一番のようだ。おそらく上司も職場の健康診断で尿に異常があったはずなのに、軽く考え無視していたのやら。
 退院後やっと気付いたが、上司はよく飲料水を飲んでいた。太っている人は汗をかきやすいと言われるし、彼も職場の冷蔵庫に2ℓの炭酸飲料水のペットボトルを入れていた。外から戻るとそれをがぶ飲みする。これでは体に良いはずがない。それも後知恵で分かったのだが。
その二に続く

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