先日寄ったガソリンスタンドの書棚に、『御用牙』の劇画本があったので、思わず手にとって読んだ。この劇画を父が持っていたので、私は小学生のころ一度見ている。とても小学生向けの内容ではないが、それでも結構楽しめた。今から思えばかなり荒唐無稽でも、子供心には主人公が格好よく思えたからだ。
江戸北町奉行所同心、板見半蔵。彼はその頭の切れ味と、激しい性格から“かみそり半蔵”とも呼ばれている。私が子供の頃に見て憶えているのは、「焼け太り」という題の話だった。ある日、半蔵の詰め所に若い人妻が駆け込んでくる。彼女の訴えでは、夫は働きもせず飲む打つ買うの遊び人で、少しでも苦言するとすぐ暴力を振るう、遊ぶ金欲しさに体を売ることを要求…ひどい亭主だと言う。しかし、半蔵は彼女の顔を見て不信に感じる。とても美しい人妻で髪もきちんと結われ、身なりも整っている。大抵の暴力亭主なら、髪をつかんで顔を張り飛ばすはずだ、と詰問する半蔵。女の身だしなみゆえ、と言う妻はさらに着物を脱いで裸体になる。その体は全身ひどいあざだらけだった。
これを見た半蔵の同僚は女の訴えどおり、夫の捕縛を命じる。しかし、妻に疑念を感じた半蔵は彼女に尋問、というより拷問で真相を暴く。拷問もズバリ言ってレイプなのだ。裸にして籠に吊るし、その籠を下ろした先には同じく裸となった半蔵が待ち構えている。その道にかけてはツワモノの彼に犯された彼女は、すっかり感じてしまい、口を割るのだ。この劇画を見たのは小学5年生頃であり、当時は意味がよく分らなかったが、よくないことなのは理解できた。ただ、今時の小学生なら、ネットもありもっと過激な画像を見ているかもしれない。
妻の白状から、これは初めから計画的な誣告(ぶこく・虚偽の訴え)であり、その元締めがいたことを半蔵はつきとめる。江戸時代も後期となれば、武家階級の中には窮乏する者も少なくなかった。そうなると結婚もままならず、独身の武家の娘たちは寂しさのあまり、同性愛に慰めを求め、件の人妻の全身のあざも実は過度のSMプレイで付いた結果であり、夫の暴力によるものではなかった。この状況を利用したのが武家の一味であり、彼らは同じ武家階級から選りすぐりの美女を金持ちの町人に近付けて娶らせる。そして頃合いを見計らい、奉行所に誣告。男は三下半で自由に離婚が出来たと思われがちな江戸時代だが、実際は名主、五人組も関ってくるので別れるのは容易ではなかったのだ。面子を潰された町人の男はコトを穏便に済ませたいが為、妻側に金子を払う羽目となる。「焼け太り」の題もここから来ている。
先に尋問(強姦→和姦?)した時、半蔵は人妻から「貴方も武士なら、武家の事情はご存知のはず」と言われている。それでも半蔵は見過ごすことはしない。武家の困窮を知りつつも涙を浮かべながら元締めの男たちを斬り捨てる。「たとえ飢えても、痩せても侍は侍なんだ…侍の世もそう長くはねえ…」。
先日見た『御用牙』には、“あざみ組み”という名の上級武家の妻たちの親睦団体が登場する。表向きは武家の妻らしく礼儀作法や教養を深める目的となっているが、実態は若い男を漁る不貞な女たちの集まりだった。この“あざみ組み”に潜入した半蔵の活躍を見ていたところ、スタンド店員から作業終了を告げられ、会計となる。会計後もスタンドに残り、劇画を見ている訳にもいかぬので、気持は惜しいが店を出た。暇を持て余した武家の奥方様が実際に不倫三昧を行っていたのかは極めて疑問だが、貞淑な妻なら劇画にするのが難しいし、ストーリーとしてもイマイチ。
半蔵は常日頃身体の鍛錬は怠らぬが、スタンドにあった本には己の“男”自身の鍛え方も描かれており、可笑しかった。下女に冷水を局所にぶっ掛けさせるのは序の口、棍棒で何度も叩かせる。使いモノにならなくなるのではないか、とつい下世話な空想をしてしまう。日々鍛えたモノで、容疑者の女たちを白状させるのが得意技。
いかに時代劇にせよ、現代から見ればかなりマッチョが色濃い作品だが、“かみそり半蔵”がタンカを切り、悪党を懲らしめるのは痛快だった。アウトロー型主人公なのだが、『ゴルゴ13』と異なり半蔵は体制側にいる人物。腕っ節も女にも強いヒーローというものは、男にとって永遠の理想だろう。あくが強く、型破りな主人公は今の劇画ではまず見かけないと思われる。
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江戸北町奉行所同心、板見半蔵。彼はその頭の切れ味と、激しい性格から“かみそり半蔵”とも呼ばれている。私が子供の頃に見て憶えているのは、「焼け太り」という題の話だった。ある日、半蔵の詰め所に若い人妻が駆け込んでくる。彼女の訴えでは、夫は働きもせず飲む打つ買うの遊び人で、少しでも苦言するとすぐ暴力を振るう、遊ぶ金欲しさに体を売ることを要求…ひどい亭主だと言う。しかし、半蔵は彼女の顔を見て不信に感じる。とても美しい人妻で髪もきちんと結われ、身なりも整っている。大抵の暴力亭主なら、髪をつかんで顔を張り飛ばすはずだ、と詰問する半蔵。女の身だしなみゆえ、と言う妻はさらに着物を脱いで裸体になる。その体は全身ひどいあざだらけだった。
これを見た半蔵の同僚は女の訴えどおり、夫の捕縛を命じる。しかし、妻に疑念を感じた半蔵は彼女に尋問、というより拷問で真相を暴く。拷問もズバリ言ってレイプなのだ。裸にして籠に吊るし、その籠を下ろした先には同じく裸となった半蔵が待ち構えている。その道にかけてはツワモノの彼に犯された彼女は、すっかり感じてしまい、口を割るのだ。この劇画を見たのは小学5年生頃であり、当時は意味がよく分らなかったが、よくないことなのは理解できた。ただ、今時の小学生なら、ネットもありもっと過激な画像を見ているかもしれない。
妻の白状から、これは初めから計画的な誣告(ぶこく・虚偽の訴え)であり、その元締めがいたことを半蔵はつきとめる。江戸時代も後期となれば、武家階級の中には窮乏する者も少なくなかった。そうなると結婚もままならず、独身の武家の娘たちは寂しさのあまり、同性愛に慰めを求め、件の人妻の全身のあざも実は過度のSMプレイで付いた結果であり、夫の暴力によるものではなかった。この状況を利用したのが武家の一味であり、彼らは同じ武家階級から選りすぐりの美女を金持ちの町人に近付けて娶らせる。そして頃合いを見計らい、奉行所に誣告。男は三下半で自由に離婚が出来たと思われがちな江戸時代だが、実際は名主、五人組も関ってくるので別れるのは容易ではなかったのだ。面子を潰された町人の男はコトを穏便に済ませたいが為、妻側に金子を払う羽目となる。「焼け太り」の題もここから来ている。
先に尋問(強姦→和姦?)した時、半蔵は人妻から「貴方も武士なら、武家の事情はご存知のはず」と言われている。それでも半蔵は見過ごすことはしない。武家の困窮を知りつつも涙を浮かべながら元締めの男たちを斬り捨てる。「たとえ飢えても、痩せても侍は侍なんだ…侍の世もそう長くはねえ…」。
先日見た『御用牙』には、“あざみ組み”という名の上級武家の妻たちの親睦団体が登場する。表向きは武家の妻らしく礼儀作法や教養を深める目的となっているが、実態は若い男を漁る不貞な女たちの集まりだった。この“あざみ組み”に潜入した半蔵の活躍を見ていたところ、スタンド店員から作業終了を告げられ、会計となる。会計後もスタンドに残り、劇画を見ている訳にもいかぬので、気持は惜しいが店を出た。暇を持て余した武家の奥方様が実際に不倫三昧を行っていたのかは極めて疑問だが、貞淑な妻なら劇画にするのが難しいし、ストーリーとしてもイマイチ。
半蔵は常日頃身体の鍛錬は怠らぬが、スタンドにあった本には己の“男”自身の鍛え方も描かれており、可笑しかった。下女に冷水を局所にぶっ掛けさせるのは序の口、棍棒で何度も叩かせる。使いモノにならなくなるのではないか、とつい下世話な空想をしてしまう。日々鍛えたモノで、容疑者の女たちを白状させるのが得意技。
いかに時代劇にせよ、現代から見ればかなりマッチョが色濃い作品だが、“かみそり半蔵”がタンカを切り、悪党を懲らしめるのは痛快だった。アウトロー型主人公なのだが、『ゴルゴ13』と異なり半蔵は体制側にいる人物。腕っ節も女にも強いヒーローというものは、男にとって永遠の理想だろう。あくが強く、型破りな主人公は今の劇画ではまず見かけないと思われる。
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アナルセックスを肯定的に描いている点では時代の先端か?「風と木の詩」よりもだいぶ前の作品です。
「御用牙」を検索したら、映画化されていたのを知りました。私は未見ですが、どのような半蔵となっていたのでしょう。
>>アナルセックスを肯定的に描いている点では時代の先端か?
ポルノに近そうな映画ですね(笑)。原作自体、その類のシーン満載でしたから。