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4月23日放送のBS世界のドキュメンタリー「米 ザ・ビレッジズ エイジレスな老後の陰で」は、米国事情に関心の薄い私にも面白かった。以下は番組HPでの紹介。
―アメリカ・フロリダ州。引退した富裕層のための居住地「ザ・ビレッジズ」にはアメリカ全土から移住を希望する人が絶えず、拡張工事が進む。マンハッタンほどの広大なこの街で、金持ちシニアたちは再びめぐってきた「青春」をおう歌する。
しかし、トランプの支持者が多く暮らす街は今、アメリカの分断を象徴するかのように地元住民との間に摩擦を引き起こしている。原題:The Bubble/スイス・オーストリア 2020年
「ザ・ビレッジズ」はフロリダ州中央部にある世界最大の退職者コミュニティで、55歳以上の人々がおよそ15万人以上暮らしているそうだ。敷地は約142平方キロメートルあり、マンハッタン島の約2倍という広さ。
そして「ザ・ビレッジズ」にはゴルフコースが54、プールは70、娯楽施設は96、社交クラブは3千余りあり、至れり尽くせりの居住地なのだ。ちなみに敷地内に子供向けの公園はひとつのみで、まさに老人天国の巨大村という印象を受けた。
番組HPにあるように、この地の住民は富裕層の引退者だが、彼らの大半は老後は子供の世話になりたくないため、それまで懸命に働いて資金を稼いだ成功者である。もちろん金持ちシニアでなければ住民になれず、この地でも結局生活ではカネがモノを言う。
インタビューに応じた老女によれば「ザ・ビレッジズ」では社交が欠かせず、見た目も重要という。アンチエイジングに精を出し、美容整形も躊躇わないのはいかにも米国女性だが、医師は頼んだ部位以外にも手術を行ったというから強欲だ。女性は術後の痛みに苦しみつつ、それでも結果には満足していた。
「ザ・ビレッジズ」の住民には子や孫がいても、それほど会わず、寂しいとは思わないと言った女性もいた。ここは老人ばかりだから、むしろ気兼ねしないともいう。元気なうちはスポーツやダンスに興じる老人の姿は理想的に見える。それでも高齢者が多いため、周囲ではぽつぽつ昇天する人が出て、救急車が「ザ・ビレッジズ」に入る時は気遣ってサイレンを鳴らさないようにしているそうだ。
映像に移る居住者は白人ばかり、有色人種は全く見かけなかった。いくらメディアが多文化共生社会をがなり立てても、同胞との共生を望む本能は消えない。収入によらず白人は白人同士、黒人は黒人同士で暮らしたがるのが米国社会の現状だし、無理に共生社会を作ろうとするからこそ分断するのだ。
日本の老人ホームとは別世界の「ザ・ビレッジズ」。但し「ザ・ビレッジズ」経営者は高齢者ではなくバリバリの現役世代で、引退した富裕層対象に夢の老後を仕掛けるビジネスセンスには舌を巻く。メディアを使ってイメージ戦略を展開、「ザ・ビレッジズ」住民にも問題を口外しないよう圧力をかけることもあると云われる。資本主義社会にあっては、老後もビジネスなのだ。
ただ、米国の老人も富裕層は限られており、老後破産したり止むを得ず子供と同居する老人もいる。2018年8月付だが、「日本は大丈夫?アメリカで急増する65歳以上の破産とその原因」という記事には、世界トップの経済大国で破産する高齢者の例が挙げられている。尤も元ネタはニューヨーク・タイムズ紙の調査なので、破産申請する高齢者の例をいささか強調しているのやら。
一方で、「日米の衝撃的な「老後格差」」という記事もあり、執筆者は投資家・岩崎 日出俊氏。岩崎氏は自分と同じくAFS交換留学生として米国で過ごした途上国からの留学生が、ゼロから生活基盤を立ち上げ、太平洋を見渡す豪邸を建てたケースを書いている。「日本の高校の同窓会には当然ながらそんな風景はありません」というが、私にはこれぞアメリカでは~~、と極例を持ち出す島国思考に見える。
原題はThe Bubble、番組制作者には「ザ・ビレッジズ」はそう見えているのか?経済が好調ならば、この類のシニア向け居住地はフロリダ以外にも増え続けるだろう。対照的に下層老人は英語もロクに話せない外国移民が多く住むアパートでの暮らしを強いられる。
いずれにせよ、老後は孫子に囲まれて過ごすといった人生観は、もう時代遅れになっている。
日米の衝撃的な「老後格差」を書いている投資家は、何故か米国に居住していませんね。やはり医療保険がないのが最大のネックなのやら。尤も日本の医療保険も危ない状況のようですが。