10月27日、東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)で行われたTFC55のコンサートに行ってきた。TFC55とは東儀秀樹×古澤巌×cobaら3人組のユニットでメンバーは全員1959年生まれ、ユニット結成時は55歳だったことにちなんでいるそうだ。今年の全国ツアーの公式サイトもあり、ツアースケジュールに目を通すと、東北でのツアーは仙台が最初なのだ。
3年前の11月に行われた仙台公演では東儀秀樹×古澤巌の2人組だったが、今回はcobaも加わったトリオのコンサートが鑑賞できた。cobaが有名なアコーディオン奏者とは聞いていたが、演奏自体は今回初めて聞いた。3人揃ったTFC55のステージは、本当に良かった。
公演は2部構成となっており、第1部のオープニングがビートルズのゲット・バック。時期は秋たけなわなので、しっとりと落ち着いた曲がメインになると思っていたのに、全く予想外だった。編曲したのはcobaで、彼は他の曲の編曲も手掛けている。スカボロー・フェアも1部の曲目に入っており、前半はロック色の濃い演奏となった。
今回のステージで、東儀さんは何度か足を前方に向かって蹴るポーズをとっていたが、これはロックスターがよくやるものである。ステージでも語っていたが、彼はビートルズが大好きだそうだ。これではゲット・バックが曲目に入っていても不思議はない。
cobaのアコーディオン演奏にも驚いた。アコーディオンといえばクラシックで地味な楽器という印象があるが、彼の演奏はダイナミックで力強かった。楽器は演奏者や曲にも左右されるようで、アコーディオンのイメージが変わった観客も多かったかもしれない。
仙台公演の主催は当然河北新報で、コンサートチケットも河北の電話予約で購入した。予約確定後、河北の担当者が直に自宅にチケットを届けに来たが、この時の担当者がcobaをとにかく褒めまくっていたことを憶えている。私的には東儀さん目当てのコンサートで、後の2人は付録同然の存在だったが、cobaといい、古澤といいトップアーティストだった。
やはりルックス的には東儀さんが一番なのだ。3人の中では最も長身、他の2人のように小太りではなくスリムな体型。観客の大半は中高年女性だったが、ビジュアル的にはやはり東儀さんに目が行ったはず。1番太めなのはcoba、茶髪にしているため益々変なオッサンくさく見えた。
しかし演奏となれば、ヴァイオリンや篳篥(ひちりき)よりもアコーディオンの方が音色があるのだ。cobaによれば、世界のアコーディオン生産の8割を占めているのがイタリアのカステルフィダルド市で、彼は市から名誉市民賞を授与されたという。名誉市民賞は世界で3人目であり、日本人としては初めての受賞。私は公演で初めて知ったが、ニュースサイトにも載っていた。
1部公演のラストでは珍しく撮影許可が出たため、携帯やスマホでステージを撮りまくる人が大勢いた。動画は困るが、撮った映像はネットで公開してもOKというのも現代的だ。
会場では握手券入りの特別グッズも置かれており、グッズ購入者はコンサート終了後、メンバーと握手できることになっている。これまた何処かのアイドルグループと同じ商法だ。尤も私は買わなかったが。
公演2部では、東儀さんと古澤が狩衣姿でステージに上がった。笙(しょう)を奏しながら登場した前者は御公家様さながらで実に様になっていたが、古澤も狩衣が似合っている。尤も狩衣でヴァイオリンは弾き難いだろうし、アコーディオンとなればもっと大変。そのためか、cobaは狩衣姿にはならなかった。
2部はさすがにロック調ではなく、秋らしく落ち着いた曲が多かった。アンコールで使われたのがアズ・タイム・ゴーズ・バイ、これまた映画の曲である。
河北新報は何度も仙台公演の広告を載せていたので、案外チケットの売れ行きが良くないのでは?と思っていた。しかし、会場はほぼ満席状態、2階はもちろん3階にも客が入っていた。
先に書いたとおり観客の大半は中高年女性、私が見た限り若くてもせいぜい30代後半だった。中には夫婦連れらしき中高年男性も見かけたが、演奏者トリオが今年58歳だから客層も高くなるのだ。この年代では、今流行のアイドル集団は見る気も起きないだろう。
東儀秀樹のコンサートには何度か行っているが、喋るのも億劫そうな以前に比べて最近は饒舌になってきた。「仙台はノリがイイね」「仙台、サイコー」等、お世辞まで言っている!他市の会場でも同じことを言うだろうが、これまではなかったこと。会場の照明は素晴らしかったし、期待した以上に満足させられた。
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