その一の続き
シリーズの中で私が最も興味深いと感じたのが、「食品廃棄物は減らせるか」の放送。番組サイトから再び引用する。
-世界中で膨大な量の食品が、多くの場合、食卓に上がる前に廃棄されているという現実。「規格に合わない」、「賞味期限が近い」といった理由から、食べられるものでも廃棄されているのだ。ドイツの取材班がヨーロッパやアメリカなどで食品廃棄の現状を取材するとともに、食品の無駄を減らす取り組みを追った。
1年間に3百万トンのパンが廃棄されるEU。店頭に出したパンのおよそ2割が売れ残るというドイツでは、捨てられるパンを木材と混ぜて燃料にし、パンを焼いている業者もいる。さらに、食品廃棄物をバイオガスに利用するビジネスも進んでいる。 しかし、廃棄物処理場に運ばれる食品ゴミは、大量のメタンガスを発生する。食品の廃棄物を減らすことは、自動車の数を減らすことと同じく温室効果ガスの削減のために重要になっている。
ヨーロッパやアメリカで捨てられる食品の量は、世界で飢えに苦しむ人に必要な食料の3倍以上に及ぶという。番組は、食品を捨てている現実にもっと思いをはせるべきなのではないかと問いかけていく。
まだ賞味期限の一週間前にも関わらず店頭から食品を撤去、そのまま廃棄されるフランスのスーパーが紹介されていた。ヨーグルトやハムのようなパック入りの食品の中には開封されず、そのままゴミとして廃棄されるものもある。美味しそうなハムが棚から撤去されるのを見て、もったいないと感じた視聴者も少なくなかったはず。乳製品摂取の高い国にせよ、店内には50種類のヨーグルトが並び、それらには遺棄される食品も少なくない。
フランス以外の欧州のスーパーも似た様な有様だし、ドイツのスーパーの食品廃棄に至っては、容器ごと巨大なゴミ箱に投棄されていた!廃棄の前に食品と容器の分別さえしないのか?このシーンを見ただけで何処が“環境先進国”なのだと言いたくなった。
「ドイツ人の環境意識は高い」「日本人と違い欧州人は環境問題に関心を抱いている」等、やたら欧州の環境対策を持ち上げる日本の識者もいるが、実態はこの始末。渡欧した日本の知識人の意見よりも欧州のТV番組の方が信頼できそうだ。この放送を見ただけで、欧米を引き合いにエコを訴える日本人のまやかしを見た想いになった。
最近まで民主党重鎮の実家でもある某大手スーパーにパート勤めしていた私に友人の話によれば、勤務先では食品をパック毎捨てることはしなかったそうだ。件のスーパー以外の他社でも、賞味期限が近づくと値下げして特設コーナーに並べ、私も含めそれを買う消費者も多いはず。1日違っただけで食品が値下げになるのは結構なことだし、賞味期限を過ぎても大丈夫な食品も少なくない。欧州の有名スーパーではこの程度の対策もしていないのか?
パート勤めしていた友人もこの番組を見ており、私同様に食べ物を大量廃棄しているのは日本くらいだと思っていたという。だが、質素倹約のイメージのあるドイツも実際は夥しい食品廃棄物を出していたのだった。大きすぎたり小さすぎたり凹みのあるジャガイモが畑にそのまま遺棄されているシーンもあり、農家の話では収穫量の半分近くは出荷されないらしい。おそらく日本でも似た様なケースはあると思われ、食べ物を粗末にする風潮には複雑な想いになる。
ただ、「食品廃棄物は減らせるか」という課題は難しい。膨大な食品廃棄物を出すのは論外だが、それが温室効果ガス発生に繋がるというのは疑問だし、温暖化説には似非科学がまかり通っている。世界で飢えに苦しむ人々が多いのは事実だが、食品廃棄物を減らしても彼らを救うことにはならないだろう。地球上に食品が足りないのではなく、その配分がアンバランスなだけなのだ。
◆関連記事:「欧米幻想と権威主義」
「キツネ文と出羽ギツネ―似非学者たちの正体」
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あれは最終的に処分されてしまうのでしょうね。不条理ですよね。
小生夏風邪にやられ、ダウンしています。
今少し、元気がありそうなので少し書きます。
アイルランドで暮らしていた頃、近くのスーパーでは、毎日夕方になると、ハム売り場で、一斉期限切れ商品の撤去が行われていました。(90年代初頭の話)
ハム、サラミ、チーズなどの製品は、大きな塊から、200g、300gという単位で、薄切りしてもらって購入していくのですが、それぞれの1本毎に賞味期限があるらしく、夕方になると、撤去係が来て、半分残っているサラミ、1/3残っているハム、チーズなどの塊を、かっさらっていきます。
当時の新聞、TV報道によると、これら撤去される「期限切れ商品」は、各種の施設(孤児院、老人ホーム、救貧食事所)などで使用されるという。期限切れ1日後、2日後でも、すぐに危険と言うことはないので、教会などが運営している社会福祉施設での食事用に再利用されるということでした。
日本では、期限切れが近づくとまず3%引き、更には30%引き、場合によっては50%引きで最近は売られるようになっていて、合理的です。
小生も30%引き、50%引きでも、すぐ食べるつもりなら買うし、決して「買う人がいない」ということもありません。
そういえば、昔ウィーンの日本食専門店などでは、瓶詰め、缶詰がやはり半値で売られていて、しかし、賞味期限からは1年経過、などということもあった。店主が食べてみて、大丈夫だったから、との理由で、そういうやり方で売っていた。日本食品は、国内価格の3--5倍していた時代ですから、賞味期限よりは価格の安さがありがたい、という面もあった。結構、欧州では、小生はお腹が上部になっていて、こういうものでも平気で食べていました。
ただ、値下げされて特設コーナーに置かれた野菜や果物には主婦たちが結構立ち寄っています。その日のうちなら大丈夫だろうし、現に私も買ったことがあります(笑)。
この放送ではスーパーが何時も大量の食品を並べているのは、消費者もそのような状態を求めているのではないか…と分析していました。商品棚が空っぽならば消費者は別の店に行ってしまい、それを恐れるスーパーも豊富な品ぞろえをせざるを得ないとか。
確かに客が来なければスーパーはお手上げですから、売れ残った食品を廃棄するのも必要経費の内と考えているのやら。それでも萎びてもいない野菜や果物を大量に廃棄するのはもったいなさすぎます。
今年も猛暑が続いておりますが、夏風邪に罹ったとは大変ですね。扇風機に少し長く当たっても風邪の原因になりますから、くれぐれもお大事に。
ハム、サラミ、チーズなどの畜産食品が大きな塊から200g、300gという単位で切り売りされるとは、さすがアイルランドです。仰る通りこのような畜産加工品なら、期限切れ1日後、2日後でも充分食べられます。放送で紹介されていた期限前に撤去、廃棄する仏独のスーパーは酷すぎる。さらに賞味期限が以前よりも短くなってきているそうです。
実は私も期限切れ3日後くらいの畜産食品を食べたことがあります(笑)。別に不味くはなかったうえ腹には異状なかったし、冬場にせよ、期限切れの牛乳を飲んでも大丈夫でした。低脂肪乳なのでホワイトソースも作れず、捨てるのは惜しいので飲み干しました。刺身や生肉なら話は別ですが、消費者は賞味期限に少し神経質になっているのではないでしょうか?
パンに関して言うと、我々は、共産圏時代に、ブルガリアで不味い「ドブルジャ」というパンしかほとんど店で買えない、という極端な品数の少ない、限定された食品事情も経験しました。
そうすると、パンすら、機会があると外国で、大量購入して、冷凍庫で保管して、少しずつ食べるということにもなる。
だから、結構、古くて、ぱさついたパンも平気で食べれるようになりました。
元来が、全粒粉とか、ライ麦入りとか、それなりに品質が良く、おいしい西欧系のパンは、古くて乾燥したパンも、少し暖めたり、工夫して食べるとおいしかった。
欧州大陸は、食パンという角張ったパンは少なく、丸形、或いは円錐形、或いは楕円形というの普通で、こういうパンが、本当においしい。
乾いたパン、硬いパンが好きな小生一家のこのみを不思議に思う人もいるのですが、欧州のパンの味を追求していくと、日本の食パンは、味が薄く、つまらないです。
私の小学校時代の給食のパンは本当に不味く、食べきれず家に持ち帰る児童も少なくありませんでした。私の持ち帰ったコッペパンを食べた昭和一桁の母さえ不味いという有様。パサついており、パン粉にしても美味しくありませんでした。もしかすると私がご飯党なのも、子供の頃に食べた不味いパンが原因になっているのかもしれません。
欧州大陸のパンは丸型や楕円形が多く、日本で一般的な食パンは英国経由ということを、以前室長さんから教えて頂きました。私もフランスパンは好きですが、某メーカーの耳までソフトな食パンも好みです。本格的な欧州のパンを食べたことがないこともありますが、日本のパン屋のパンも最近は美味しいものが殆どだと思います。
「あまった食べ物」が農業を救う
ウンコと生ゴミを生かす循環社会
2012年6月1日 第1版第1刷発行
著者 山田浩太
発行者 小林成彦
発行所 株式会社PHP研究所
ISBN978-4-569-80420-0
目次
はじめに
第一章
化学肥料・農薬の本当の問題
化学肥料による土の「作り方」
なぜ有機質肥料ではなく化学肥料が選ばれるのか
化学肥料にどこまで頼れるのか
化学肥料が土壌のバランスを破壊している
伝統的農業の担い手は二世代前にいなくなった
自分の糞の中で生活する鶏、豚
農薬を使った農業の怖さ
虫の成長と植物の生長が折り合うのはいつか
不作になったときこそビジネスチャンス
第二章
なぜ野菜は美味しくなくなったのか──発酵の話
牛糞と豚糞と鶏糞の違い
牛糞、鶏糞を活用する
生ゴミを肥料に
発酵とは?腐敗とは?
よい発酵のコツは、適温で寝かすこと
肥溜めは何が優れているのか
江戸時代の日本では、食べるものは肥料の原料だった
江戸の循環システムの実際
山の中での土葬を認めてほしい
糖度は高く、残留硝酸塩濃度は低く
不安をもたらす残留硝酸塩
体液の濃度が濃くなったら要注意
残留硝酸塩が減らなくない理由
多くの農家は農協が売る肥料しか使わない
スーパーのバイヤーは知っている
お茶は硝酸が多ければ多いほど美味しくなる?
なぜお茶に布をかぶせるのか
有機農業イコール安全は幻想
有機JASの問題点
「有機野菜は美味しい」とは一概にいえない
第三章
有機肥料で土を作り、野菜を育てる
物理特性を上げる
塩素置換容量──肥料の器の大きさ
三大栄養素を?肥で与える
微量要素をきちんと与える
有機質肥料は徐々に効く
有機質肥料は病気の発生も抑える
ネギの害虫、病気に農薬なしで対処する
トマト畑の悲劇
植物の声を聞く
原点に返れ
マニュアル化の落とし穴
「有機農業は儲からない」は嘘
コメを無農薬で育てる
農薬なしで茶菓子用の干し芋生産
第四章
循環型社会を目指して
窒素、リン酸、カリウムで溢れかえっている国 日本
循環ネットワークの構築──メリットがないと人は動か
ない
生ゴミを有効活用すれば、食べるだけでリサイクルに参
加できる
財源とお役所の体質という問題
生ゴミを発酵させただけで満足するな
幼稚園で農業実習
母親の半分が泣いた
ゴミ80%カットに成功した町の新たな取り組み
「循環テーマパーク」の復活を目指して
政治、行政が果たすべき役割
循環システムの成功例
農業が高齢化社会を元気にする
日本の農業の構造的な歪み
構造改革の志
障がい者を雇用する
福祉の視点を乗り越えて
耕作放棄地の問題に取り組む
自社の生ゴミを肥料化して活用
施肥のバランスと配合は、ほぼ窒素で決まる
世の中の空気が変わった
下水汚泥は使えるか
お金より気持ちを大切にする社会
理想の死に方
あとがき
解説
紹介された新書はタイトルからして面白そうですね。昔は人糞は田畑の肥やしでした。
我が家の庭では秋から初冬にかけて、野菜や果物の皮などを埋めることもあります。その甲斐があってか土が肥え、夏場はちょっとした家庭菜園となりました。もっとも、土を掘り返すと大きなミミズも出てくるし、何度見てもミミズは苦手です。