7月17日(火)から4日間に亘りNHK BS世界のドキュメンタリーで、【シリーズ 消費社会はどこへ?】を放送していた。番組HPにも7月17日(火)「電球をめぐる陰謀!」、7月18日(水)「ニューロマーケティング/消費者は買わされている?」、7月19日(木)「脱・使い捨てプラスチック宣言!」、7月20日(金)「食品廃棄物は減らせるか」が紹介されている。ニューロマーケティングだけは途中で眠ってしまったが、他は全て見た。どれも考えさせられるテーマだったが、私的には「電球をめぐる陰謀!」「食品廃棄物は減らせるか」が面白かった。以下は「電球をめぐる陰謀!」の番組HPからの引用。
-エジソンが発明した電球が売り出された1881年、その耐用時間は1500時間だった。1924年には2500時間に延びた。しかし1925年に世界の電球製造会社が集まり耐用時間を1000時間に限ることを決定。世界各地で作られた長持ちの電球は一つも製品化されなかった。
同じような考え方は現代にもある。破れるように作られたストッキング、決まった枚数を印刷すると壊れるプリンター、電池交換ができなかった初期のipodなどだ。消費者の方もモノを買うことが幸福だと考え、新しいものを買い続けている。しかしその一方で、不要になった電機製品は中古品と偽ってアフリカのガーナに輸出、投棄されて国土を汚している。
電球をめぐる“陰謀”を証言と資料を元に解き明かし、消費社会の在り方に警鐘を鳴らす。
番組の冒頭で自宅用のプリンターが壊れ、家電販売店に修理を頼もうとするスペインの若者が登場する。しかし店では修理よりも新商品を勧めたり、旧製品では部品が既に作られていないようなことを説明したりする。納得のいかない若者は自らプリンターの内部を調べ、メーカーのからくりを知ることになる。
実は私も同じような体験をしている。今家庭で使用しているプリンターは2台目となるが、さほど印刷していなかった1台目のそれは突然印刷できなくなった。ヘッドクリーニングをしても治らず、購入先の量販店に修理を依頼したら、スペインの若者と同じことを言われた。さらに若い店員から言われた一言「プリンターは消耗品ですから…」は唖然とさせられた。1万円近い製品も“消耗品”なのか?機会に疎い私はスペイン人青年と違い、結局新品を買う羽目になった。
「電球をめぐる陰謀!」では何度も「意図的な老朽化」という言葉が使われており、メーカー各社がカルテルを結び、長持ちのしない意図的な老朽化対策が取られたのだった。電球の耐用時間を1000時間に限ることに決定した組織を番組では“ボイホス・カルテル”と呼んでおり、欧米企業以外にも日本も含め第三世界のメーカーが参加していたという。
技術的には長時間耐用の電球は作れたのにも拘らず、カルテルはメーカーの耐用時間を実に細かくチェック、目標値を超えれば罰金や制裁を受け、そのメーカーの製品が市場から締め出されるシステムを作り上げたのである。
アメリカの大恐慌時代、バーナード・ロンドンという実業家が議会に大胆な提案書を提出する。商品には全て寿命を設定、機能の停止した商品は政府機関に引き渡され破壊されるという内容で、そうすれば企業の生産も労働者の職場も維持できる訳だ。「意図的な老朽化」の法的義務付けだが、この提案は受け入れられなかったという。
電球といえば流行りのLEDもなぜ一律に耐用4万時間が謳われているのか、不思議でならない。さらに長時間のLED製品化も可能かもしれないが、これまた“意図的な老朽化”戦略の一環だろうか?21世紀版“ボイホス・カルテル”が世界市場を牛耳っているのか?エコと銘打ち、大々的な宣伝を通じ、消費者は新商品を無理矢理買わされていると感じることもある。
ただし、エコを唱える者も胡散臭い。先進国の大量消費生活を非難しつつ、己自身は生産活動や技術支援、奉仕活動さえロクにせず、途上国を風来坊している輩は偽善者の極みだし、イザとなれば母国の医療福祉に頼るという日本的“甘えの構造”も少なくないようだ。
その二に続く
◆関連記事:「エコロジスト、その偽善と独善」
「途上国の人間は心が美しい?」
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そういえば「ソニースイッチ」という言葉もありました。今やどの企業からも「矜持」という表現はきえさったのでしょうか。残念ですね。これでは地球も遠からず消費され尽くされることでしょう。次の新しい地球があればいいのですけれど。
なります。(半導体は量子力学に従って動作しているので不可避。)
例えば、1時間で壊れる確率が 10万分の 1 なら 4万時間で 1/3 壊れます。
ならば、1時間で壊れる確率が 100万分の 1 まで上げれば 40万時間持つ
じゃないか、と思われるかと思います。
技術的にはおそらく可能です。
でも、そうすると製造コスト(≒製品価格≒環境への負荷)が 10倍以上に
なり誰も得をしないことがおこります。
カルテルによる「意図的な老朽化」は論外ですが、電気製品に限らず製品
の寿命は技術的な可能性と製造コストを天秤にかけて決まります。
例えば、半導体の中でも プリンタや PC、ケータイのような IT 関連機器
は先端の半導体の性能向上が 3年で 2倍 (3年で同じ能力ならコストが
1/2 になる)というのを考慮して(3 年程度での買い替えを考慮して)、
比較的に短寿命で低コスト側の製品です。
一方で、車載や医療機器などは人命に関わるので高コストでも長寿命で
高信頼性を実現した製品です。
番組は見ていませんが、こうしたことを言及していましたか?
していなければ、ただのプロパガンダでしょう。
PS.
プリンタは製品としてはやや特殊で、いうなれば水道の蛇口と同じです。
水道代のかわりにインク代で儲けを出してます。正しく『消耗品』です。
一時期、ケータイをタダ同然で配っていたでしょう。あれは水道代の
かわりに通信代でしたがそれと同じです。
私もエジソン時代の電球が現代よりも長持ちだったことを、この番組で初めて知りました。いくら良質な製品を作っても、コスト面に問題があれば製品化も難しい。
ただ、電気技師の夫のいる友人から聞いた話ですが、電球はこまめに消すよりも15分以上使わない限り、そのままつけておく方が球が切れにくいと言う話を最近聞きました。
仮に次の新しい地球が発見されたとしても、人類はそこでも資源浪費と環境破壊を繰り返しそうですね。植民惑星間の戦争も考えられるし、アニメの世界が現実化しそうです。
私は電気機器に疎いのに加え理工系発想がまるで駄目なので、量子力学的な確率の問題は全く頭に浮かびませんでした!貴方の指摘はまたもハッとさせられました。IT関連機器が比較的に短寿命で低コスト側の製品に対し、車載や医療機器などは高コストでも長寿命で高信頼性を実現した製品というのは目からウロコです。
女はケチなので、IT関連機器は頻繁にモデルチェンジを繰り返し、暴利を貪っている…という疑いがぬぐえないのです。
プリンタが水道の蛇口と同じという論もユニークですね。最近は安くなりましたが、やはり1万円の“消耗品”は安価とは感じられない。ケータイがタダ同然でも通信代はタダではありませんし、タダくらい怖いものはないのです。
この番組では貴方の指摘された確立や製造コスト面には言及していませんでした。旧東ドイツの例を挙げ、共産主義圏では「意図的な老朽化」などは考えられなかったと説明しています。この引き合いは私も不可解でしたが、やはりプロパガンダだった?