トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

ジェイン・オースティンの読書会 07/米/ロビン・スウィコード監督

2008-06-15 20:24:44 | 映画
 題名どおり文豪ジェイン・オースティンの本を読み、語り合う男女6人のメンバーをめぐる物語。たとえ文豪の本でなくとも、関心のある本を読んで語り合う読書会など、本好きからすれば実に羨ましい試みだと思う。読書の感想は十人十色だが、他人の意見を聞くのも面白いし、本の見方の幅が広がる。

 カリフォルニアのある町で、6人が半年間に亘り1月に1冊のペースで、ジェイン・オースティンの本を語り合う読書会が開かれることになった。メンバーの最年長のバーナデットは離婚暦6回という人生体験豊富な女性。趣味のまるで違うビジネスマンの夫より、教え子に心ひかれている高校教師プルーディー。独身キャリアウーマンのジョスリンに、彼女の学生時代からの親友のシルヴィア。シルヴィアの娘で同性愛者アレグラ。シルヴィアは結婚後20数年目にして夫から突然別れ話を持ちかけられ、読書会で傷心を癒す。黒一点がSF大好き青年グリック

 読書会は各々の家や時に海辺で行われる。酒と料理を楽しみながら、オースティンの小説について意見を交わす。見解の違いからちょっとした論争になったり、登場人物に自分の人生や心境を投影させたりして進行する。読書自体は孤独な趣味でも、それを通じ人との繋がりが出来るのは素晴らしいと思う。
 読書会で唯一の男性メンバー、グリックは、実は他の女性メンバーと異なり、元々はオースティンの愛読者ではなかった。彼がこの会に参加したのは、ジョスリンがお目当てだった。仕事を含めあらゆることには積極的でも、恋には消極的なジョスリンは未だ独身で犬を飼っている。そのジョスリンに惹かれたため、グリックは読書会に参加する。

 グリックは読書会のためより、ジョスリンと話すためオースティンを読み、彼女に語りかけた。一方、自分の大好きなSFも推薦、ジョスリンに読むことを求める。オースティンの愛読者ということもあり、ジョスリンの口ぶりからSFは低俗と見下しているのが知れる。日本と同じくやはりアメリカもSFの評価はイマイチのようだ。グリックはSF作家には女性も結構多く、アンドレ・ノートン(太陽の女王号シリーズ)、アーシュラ・K・ル=グウィン(ゲド戦記)の名を挙げたので、前者の本を読んでいた私も妙に嬉しかった。グリックの家にはロボットのフィギュアが多く飾られ、フィギュアを集める男の趣味は日米共通らしい。昭和一桁生まれの私の父もゼロ戦や軍艦、車の模型を茶の間に飾り、「こんなもの、何処がいいのやら」と母はグチっていた。女には模型好きな男の趣味は理解できないが、男にもブランドバックに大金をはたく女の心理は理解不能だろう。

 グリックがSF好きなのは父の影響がある。何人も姉のいる女系家族に育ち、家に男は自分と父のみだったので、父子は隠れ家同然の物置でSFを見ていたのだ。年上の女に弱いのも姉の影響があり、メールでジョスリンとの付き合い方を姉に相談する弟だった。彼自身も恋愛には奥手であり、姉が弟の背中を押し、ジョスリンと目出度くカップルになるというオチ。
 また、シルヴィアの夫は妻の許に戻って夫婦関係は元の鞘に納まり、アレグラはまた新たな恋人が出来る。プルーディーは教え子への思いを断ち切り、ゲーマーだった彼女の夫もまたオースティンを読むようになった。そしてバーナデッドは7人目の夫と共にメンバーの前に姿を現す…万事メデタシメデタシでご都合主義が鼻に付くが、大人のファンタジー映画だった。

 グリックが生涯独身だったジェイン・オースティンが恋愛を描いていた動機を、恋に飢えていたからと推測したのには頷ける。また犬を飼う人は他人に服従を求める傾向があると指摘したのも興味深い。
 それにしても、読書会とは何と贅沢なクラブなのだろう。文豪だと堅苦しい雰囲気があるので、SF読書会など気楽でいいのではないか、と一緒に見た友人に話したら、友人いわく「それって、オタクの集まりになるんじゃないの?」。確かに…

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