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イデオロギーゴリ押しの説教臭い番組

2022-01-05 22:10:09 | 音楽、TV、観劇

 イスラム思想研究者の飯山陽氏は、昨年大晦日付のツイッターで紅白歌合戦を、「差別に偏見、LGBT…カラフルね…大晦日のお祭りはいつの間にか随分とまあ、イデオロギーゴリ押しの説教臭い番組になったんだなあ…」と酷評、「はー、つまらんな」と結んでいる。
 しかし、イデオロギーゴリ押しの説教臭い番組は大晦日のお祭りだけではない。昨年はクイーン結成50年に加えフレディ・マーキュリー没後30年ということもあり、NHKでは「99人のクイーン」という特集が組まれた(放送日:2021年11月27日)。この特集は録画していたので、年明けに観たが、これまた冒頭から“イデオロギーゴリ押しの説教臭”が出ていた。

 次は番組HPからの引用で、記事をアップするに当たり今回初めて見たが、紹介文からも“イデオロギーゴリ押しの説教臭”になるのが伺えた。
2021年。コロナ禍、分断や差別など混迷を深める世界で、クイーンの楽曲が今、多くの人々に勇気や励まし、真実の愛を与え続けている。結成50年・フレディ没後30年、クイーンはむしろ、今の時代にこそふさわしい輝きを放つ。
 番組では「2021年の今だからこそ聴きたいクイーンの一曲」を、クイーンを愛する著名人も含めた熱烈なファン99が選ぶ。あなたの選んだ一曲も含め、100人のクイーンの姿が浮かび上がる!

 クイーン特集ゆえに冒頭ではクイーンのプロモーションビデオが映されるが、字幕には「SDGs 気候変動 LGBT……」等の用語があり、これだけで「あっ、イデオロギーゴリ押しの説教臭い番組」になると感じた。
 HPにある「分断や差別など混迷を深める世界」の勿体ぶった説教も稚拙の極み。そもそも、分断や差別のない時代が人類史にあったのか?フレディ自身、ザンジバル革命という“分断や差別”で生まれ故郷を追われている。
 この場合は差別よりも迫害虐殺の方が相応しく、後年フレディの母はこの時を振り返り、「街中に死体が転がっていて怖かった……」と語っていた。

 小林克也が司会を務めていたが、初めの「今の時代だからQueenのメッセージが伝わってくる……」の発言に、ヲイヲイ、クイーンはメッセージバンドではないゾ、と言いたくなる。クイーンファンなら、彼らの楽曲に殆どメッセージはないことは知っているはずだし、他のバンドの様な社会へのメッセージがない曲が中心だったため、「クイーンは現実逃避」と批判した英国の評論家もいたほど。
 クイーンはノンポリバンドとしても知られており、フレディの個人秘書の著作『フレディ・マーキュリー 華麗なるボヘミアン・ラプソディ』(ピーター・フリーストーン著、DHC刊)に見える文章からも、フレディの姿勢が伺えよう。

フレディは政治に関して、たとえばU2のように自分たちの地位や名声を利用して、個人的な政治見解を浸透させるプロパガンダ的バンドを嫌っていた。政治に関しては個々の私見とみなしていたフレディは自分の政治的な意見を公の場で表明したことはなかった。
 自分がどんなことでも発言できる立場で、その言葉が世界中に伝わることにより、特定の政党やメディア機関の意のままに、または歪曲されてとらえることに対して敏感になっていた……」(77-78頁)

 クイーンの曲は70年代前半から90年代初めに発表されていて、曲からメッセージを読み解くとすれば、当時の時代背景や作曲者の属性への知識も必要だろう。だがHPからもNHKスタッフはそのようなことはお構いなし、強引に現代社会にこじつけることは目に見えている。
 クイーンほどロック界にエンターテイメントを持ち込んだバンドも珍しく、とにかくライブに来た観客に楽しませることをモットーとしていた。芸人と職人気質を兼ねそろえていたバンドだったが、私的には特にフレディがエンターテイメントを重視していたと思っている。

 今やインドはもちろん世界の映画産業の中心となったボリウッドだが、その前身は「パールシー・シアター」だった。名称通りパールシーが娯楽中心のシアターを創設、それが発展しボリウッドになる。今でも映画制作に携わっているパールシーは多く、パールシーのフレディが少年時代にパールシー・シアターに行っていたとしてもおかしくはない。

 はじめにクイーンを愛する著名人として登場したミュージシャンは、今回初めて知ったが、第一印象はミュージシャンではなくお笑い芸人。そんな男がクイーンを「ダサかっこいい」と評し、選んだ一曲は「レット・ミー・リブ」。
 私自身、クイーンをスタイリッシュとは思わないが、お前が言うな!と言いたくなるような小太り気味でファッションセンスの悪いミュージシャンだった。

 NHKが繰り返しクイーン特集を放送するのは、ファンが多いため確実に視聴率が取れると見込んでなのだ。飯山氏へのリツイートに、「洗脳しようと必死なメディアww」(Samuraikunさん、1月1日)があり、私もこれには同感。同時に息のかかった芸能人の売り込みもあろう。紅白がそうであるように。
 クイーン特集を組めば、多くのファンは見てくれるとNHKスタッフは見ており、それは大方当たっている。ちなみに私はイデオロギーゴリ押しの説教臭が鼻につき、11分くらいで見るのを止めた。メディア機関の意のまま歪曲されてとらえる、クイーンからのメッセージなど、見るに値しないから。それならファンサイトを見ていた方がマシ。

 2021年でなくとも聴きたいクイーンの曲を選べと言われたら、私は「セイブ・ミー」と「永遠の誓い」を挙げる。一曲だけ選ぶのは無理だし、このふたつの曲は果たしてNHKのランキング10位内に入っていただろうか?





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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (鳳山)
2022-01-06 23:43:18
そういえば今年の年末年始はほとんどテレビを見ませんでしたね。安っぽいお笑いか、説教臭い綺麗事番組しかなかったような気がします。

テレビがオワコンになったとはっきりした年末年始だったように思えます。
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あ~ぁ、ジャニーズ (のらくろ)
2022-01-07 18:05:25
今日は自宅でテレワークしており、先ほど本日の業務を終わり、今は私物に戻ったノートPCから書いている。

昨日のことだ、昨年内に3回使った青春18きっぷの4回目を使って、名古屋ー浜松を往復した。ただし、昨日はオフィスに出勤していたので、仕事がハネてから出かけたので、浜松では駅ビルを探索しただけ。東海道線は浜松から西へは、ほぼすべての列車が豊橋終点、以西へ向かおうとすれば豊橋での乗り継ぎが必要だ。

東海道線豊橋-岐阜間には、快速が走っており、車両は普通列車と大差ないが、停車駅は在来線特急並みに少なく、速い。ところが車内アナウンスで「本日は笠寺駅にも臨時停車致します」と言っている。笠寺?はて、なんで? あ、なんちゃらホールの最寄り駅だったな、ということは何かのイベントがあるのか?と思っていると、列車が笠寺駅に近づくに連れ、通常ならあり得ない徐行運転が増えてきた。なんだなんだと思っていると、笠寺駅に到着したら、ホームからあふれんばかりの老若「女」がぎっしり。それが快速車両にドドドと乗り込んできて、多分誰かのコンサートだったのだろう、周りの「ご同類」に向けてしゃべるしゃべる。のらくろは次の停車駅で下車したのだが、それまで座席が埋まるか埋まらないかの乗客数で車内は水を打ったように静かだったのがピーチクパーチク騒々しい。後で自宅へと向かう地下鉄で座って、スマホをググレば「関ジャニ∞」のコンサートと判明、でもあれだけ「密接、密集、密閉」空間で囀りまくれば、オミクロンのクラスターになってはいないかとガクブル。

それにしても、(今は亡き)スマップ、嵐ならともかく、関ジャニ∞におばさんからお婆さんまで混じっているってどうよ? ホストに入れ込む有閑マダムの疑似体験か?とツッコミたくなる。こんな現象が何年かすると「美人と言ってはダメだがイケメンは言ってもいい」とかいう愚かな言説に先導されたメス「学識経験者」サマが、したり顔でご高説を垂れるんだろうな、と嘆息するのらくろであった。
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鳳山さんへ (mugi)
2022-01-07 22:28:32
 年末年始のテレビ番組は何年も前から安っぽいお笑いか、説教臭い綺麗事番組ばかりになっていますよね。昔はそれでも見られてましたが、スマホの時代ではじり貧まっしぐらでしょう。

 それでもテレビ局関係者、特にNHKは危機感が無さ過ぎ。今でも高給取りだし、紅白低視聴率の責任も問われない。
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Re:あ~ぁ、ジャニーズ (mugi)
2022-01-08 22:01:54
>のらくろ さん、

 青春18きっぷを未だに使ったことのない私ですが、名称から利用できるのは若者だけと思っていました(汗)。5回まで使えるのはイイですね。

 笠寺駅の名も初めて知りました。ジャニーズ系に限らずアイドルに疎い私ですが、改めてジャニーズファンのスゴさに驚かされます。コンサート当日にはJRに臨時停車させるほどだった!
「関ジャニ∞」って名前だけは知っていましたが、今回ググって初めてメンバーの顔を見ました。若い女がおっかけをするならともかく、おばさんからお婆さんまで混じっていた??

 確かに有閑マダムでもなければホストに入れ込めないし、ジャニーズ追っかけの方が安上りです。しかし時期だけにオミクロンのクラスター元になる可能性大で、クラスターおばさんは怖すぎ。

>>「美人と言ってはダメだがイケメンは言ってもいい」とかいう愚かな言説に先導されたメス「学識経験者」サマ

 ご存知かもしれませんが、コイツはフェミニストが避妊薬認可に反対していた事実を隠していたとか。
https://note.com/mogura2001/n/n69861d1c85bd#52RRY

 日本の自称フェミニストの正体はこんな類ばかり。避妊薬が認可され望まぬ妊娠が減れば、不幸ビジネスの出番も減りますから。昔の中ピ連の方がマトモに思えてきました。
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Unknown (アミ)
2022-01-09 00:29:18
三島由紀夫は、「階級なき社会を目指す」と言いながら、軽井沢にプール付きの別荘を保有している日本共産党幹部の言行不一致を痛烈に批判していました。
豪華な部屋で、優雅に高級ワインを飲みながら、革命の理想を語るインテリの事をブルジョア左翼と呼ぶそうです(類語にサロンマルキスト、リムジンリベラル、シャンパン社会主義者、世田谷左翼などがあります)。
家父長制度は女性の敵だと言いながら、家父長である父親の遺産でタワマン暮し。高級外車を乗り回して、自分は貧しくなる気はないが、若者には「等しくまずしくなりましょう(でも、私は別よ)」とのたまう自称フェミニストは、典型的なブルジョア左翼でしょう。
言行不一致の人間の言説は説得力はありませんし、人によっては単なる偽善者にしか見えないでしょうから、どのような高説を垂れても支持されるはずがないのに、なぜか当人は気づかないのは、不思議です。
こうした人間をマスコミが学識者として持ちあげるのは、世論誘導として利用できるというのもあるのでしょうが、マスコミの上層部もブルジョア左翼たちが占めているからではないかと、個人的に思っています。
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アミさんへ (mugi)
2022-01-09 22:20:03
 しかも日本共産党トップの別荘の敷地面積は小学校を上回るそうですよ。ただ、残念なことにこの優雅な暮らしぶりはあまり知られていませんよね。対照的に普段街で目にする活動家たちは貧相で身なりもみすぼらしい。これだけで共産党の実態が伺えます。
 私の父方の伯父は実は共産党員でした。日本全国で活動、反核平和を訴えながら、最後は大阪でホームレスの果てに福祉病院で死去しています。伯父のことは以前記事にしましたが、私の共産党への強い敵意の元は伯父のことがあります。
https://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/4557e934d01550173181613b271966fc

 ブルジョア左翼やサロンマルキスト、リムジンリベラル、シャンパン社会主義者、世田谷左翼という言葉は初めて知りましたが、言いえて妙ですね。日本の共産党員をロシア人は、「日本でうまいビールを飲みながら共産主義の夢を語っている」と蔑んでいました。まだゴルバチョフ時代でしたが。
https://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/5ec37540e55984c862fcb19e4948ba4f

>>マスコミの上層部もブルジョア左翼たちが占めているからではないかと、個人的に思っています。

 私も同じ思いです。彼等は総じて高学歴でも、全くの世間知らずで庶民とはかけ離れた暮らしをしている。高学歴の苦学生は今時まれだし、親の資産で勉学に最適な環境が準備されます。最高学府を出た“有識者”が的外れ発言を繰り返すのも、生い立ちが影響しているかも。
 尤も学歴も実はカネで買えることが少なくないようで、第三世界のリーダーやその子女が欧米の有名大に入れるのもそのためとか。
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