トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

封建時代の日本女性の実態

2006-08-10 21:15:46 | 読書/日本史
 フェミニストたちが好む日本女性史観では、“常に抑圧されたいる弱者”との結論に必ず行き着く。だが、女性作家の書いたエッセイを見ると、そのイメージは完全に覆される。『歴史をさわがせた女たち-庶民篇』(永井路子 著)には、実に楽しい女性論が載っているので紹介したい。

この頃の女は実にけしからん。夫は朝早くから勤めに出るのに、妻の方は夫を送り出してしまうと、留守を幸い女ばかり寄り集まって、ぺちゃくちゃと無駄話。挙句の果ては「ほんとうにうちの亭主たら、働きが悪いんだから」と、散々悪口の言い放題。かと思うと、カルタ遊びや花札賭博、時には若い男も引っ張り込んで酒を飲む。或いは芝居見物、日帰り旅行、高級料亭で大金をはたいての飲み食い。その上亭主が帰ってきてもご苦労様とも言わず、水を汲ませたり料理を作らせたり…。
 いかに夫を騙してこき使うかが、女の腕の見せ所と心得ている。これでは女房は主人、夫は下人と言うより他はない。それでも不義密通をしなければみつけものだが、それならそれで、あたしは貞女なんですからね。有り難く思ってよ」、当り前のことを恩着せがましく言って威張りかえる

 上記の一節は平成の現代の世相を書いたものではない。江戸末期の『世辞見聞録』の一部で、筆者は武陽隠師だが、もちろんペンネームで本名は不明。学者の説では江戸に住んでいた浪人ではないかとされる。
 それにしても、現代口語訳してみると、何と21世紀初頭と酷似しているではないか。これが江戸末期の封建時代の既婚女性の実態だ。

 永井氏の『歴史を~』には戦国時代の女性の風俗も記されている。来日した宣教師ルイス・フロイスの『日欧文化比較』では、定説を覆すことまで書かれている。例えば3例ほど挙げてみると日本では処女の純潔は少しも重んじられず、もしそれを失っても不名誉でもなければ結婚の障害にはならない道を歩く時、妻が前を歩き、夫は後についていく夫婦が別の財産を持っていて、時には妻が夫に高利で貸し付ける…当時の西欧は処女が重要視され、道では夫が前を歩く、財産は全て夫婦共有と、日本とは全く逆だったのだ。
 他にもフロイスは西欧女性は余り酒を飲まないのに、日本女性はおおっぴらに酔っ払うとも書いている。中国に至っては近代まで女は酒家に入れなかったのだ。日本女性がもっとも虐げられていた時代の印象が強い戦国の世も、フロイスの記録は実に興味深い。

  フェミニストに限らず西欧に比べ日本では、女性の性も抑圧されていたとの思い込みがあるが、これもかなり怪しい。『歴史を』に紹介されている中世艶笑小話 には3人の男を手玉に取る女の話が出てくる。その男たちが同じ日に尋ねてくるハプニングだが、これと同じような話はアラビアンナイトやインドの民話にもあ るで、いつの時代も性を楽しんだ女がいたのだろう。

 永井氏の本には載ってないが、17世紀来日したイギリス商館長リチャード・コックスの日記には面白い記述が見える。彼は若い日本の女を現地妻としたのはいいが、帯や着物を買って女の機嫌を取っていたのに、コックスの留守中彼女は数人の若い日本の男と遊んでいた、と商館長日記にある。コックスは年もいっていたにせよ、似たようなことは現代もありがちだ。

 高知県の“はちきん”とは実は4人の男を手玉に取ることから来ているそうなので、高知女性は大したものだ。こうして見ると、女性史を一番知らないのはフェミニスト自身ではないのだろうか。

◆関連記事:「フェミニズムという名のマルクス史観

よろしかったら、クリックお願いします


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
落語 (似非紳士)
2006-08-11 00:34:33
難しい本は読みませんが(小説しか読まないんです)十\五年以上の落語好きとしては江戸時代の男尊女卑など嘘もいいところです。

落語にでてくる亭主はどいつも牛馬のごとくに女将さんにこき使われますし、よほどの大店(おおだな)でないかぎり、商家の実権は女性にあったそうですよ。
返信する
酔夢譚 (Mars)
2006-08-11 19:58:45
こんばんは、mugiさん。



残念ながら、ご紹介頂きました作家の方々とは異なり、フェミニストの言を鵜呑みする女性も、決して少なくないと思います。また、そういう女性であっても、日本の何処が世界一男尊女卑なのか説明できる者は少ないでしょうね。



これは自分の経験で申し訳ないですが、上記のようなある女性に、日本の何処が世界一男尊女卑なのか聞いてみました。すると予想通り、説明もできませんでした。また、以前ご紹介いただいたサティーや割礼、中国の一人っ子政策、韓国の男尊女卑(女を三日殴らないと狐になる、という諺もあるそうです)を説明しても、内容は理解できても、やはり、日本が世界一男尊女卑ということまでは納得してもらえませんでした。

(また、同じ女性からも、フェミニスト批判があることを説明しましたが、それも、渋々納得、という感じでした。)



まぁ、説明する私が男ということもあるでしょうし、説明自体もつたないものですが、やはり、信じきっているものを改めるのは、相当容易ならざるものでしょう。



男女同権で、女性の権利と共に、義務も増大するのであれば、納得する男性もすくなくないでしょう。しかし、フェミニスはそうではないですし。



所詮人間なんて、男と女しかいなくて、いがみ合っていてもしょうがないのですが、、、。

返信する
杉浦日向子さん (mugi)
2006-08-11 21:34:27
>似非紳士さん

落語はTVの笑点くらいしか聞いた事がありませんが、男子過剰の江戸では女性はむしろ大切にされていたと、漫画家の故・杉浦日向子さんが仰ってました。男尊女卑と言う言葉は中国起源ですからね。

マルクス史観論者からすれば、このような史実を直視できないのですよ。彼らの妄言が暴かれるから。
返信する
男尊女卑 (mugi)
2006-08-11 21:36:44
こんばんは、Marsさん。



残念ながら日本のマスコミはフェミニストの類を“自由な女性”と持ち上げるので、彼女たちの言動を鵜呑みにする人々も少なくないでしょう。ただし、これに騙されるのはむしろ男性の方が多いような気がします。人間は同性にはシビアですから。



フェミニストへの批判はやはり同性の方がずっと効果的ですよ。これは何も日本だけでなく、アメリカだったか、フェミニストが震え上がる女性の論客がいるそうです。まして、日本のフェミニストのようなアマちゃんのお嬢ちゃん(精神年齢)では。

男尊女卑の例にロシアも加えてください。「女房殴れば、キャベツスープが美味くなる(または和が生まれる)」の諺があります。



フェミニストは異性はともかく、同性さえも愛せず愛されない連中なのが実態ではないでしょうか。
返信する