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歴史的に、二千年以上に亘って、ユダヤ人の土地 その一

2021-06-17 21:10:33 | 音楽、TV、観劇

 6月8日のBSフジ・プライムニュースでは、イスラエルとパレスチナ両大使による直接対談が放送された。録画時間を間違えたため、私が見たのは21時以降になってしまったが、BSフジHP「イスラエル×パレスチナ“直接対論”」にはその概要が載っている。
 大使と言え、ゲストの正式の肩書はイスラエル・ストゥルロヴ駐日イスラエル臨時代理大使と駐日パレスチナ常駐総代表部ワリード・シアム代表。
 両者ともに水掛け論に終始しており、特にストゥルロヴ・イスラエル臨時代理の発言、「歴史的に二千年以上に亘ってユダヤ人の土地に向かって(ハマスは)ロケット弾を撃ち込んでいる…」は印象的だった。

 この一言だけで唖然とさせられたが、同時にやはり「約束の地」を頑なに妄信している選民思想(レイシストの権化)のユダヤ人らしい……とも感じた。古代のユダヤ戦争、それに伴うディアスポラだけで現イスラエル領土は、歴史的に、二千年以上に亘って、殆どユダヤ人の土地ではなかったのは日本人でも知っている。ユダヤ人の土地だったのはせいぜい2世紀までと、イスラエル建国の20世紀半ば以降だ。
 にも関らず肥満が目立つイスラエル臨時代理殿は、日本人は何も知らないとでも思っているのだろうか?尤もイスラエル外交官は、こう発言しなければ務まらないのだろうが。その“約束の地”も、聖絶というジェノサイドの果てに獲得したことは、旧約聖書にも誇らしげに書かれている。

 私が初めに見たのは、ストゥルロヴ臨時代理大使が今回の紛争での攻撃対象はハマスやテロリストであり、パレスチナ市民を狙った訳ではない、と主張していた場面。イスラエルの攻撃は軍事拠点を狙ったピンポイント攻撃とも言っている。そして犠牲になったパレスチナ市民には申し訳なく思っているとも。
 攻撃対象はハマスの軍事拠点に止まらず、AP通信ビルも爆破されている。「イスラエル、「妨害電波出したから(AP通信ビルを)爆破した」←「ハマスの情報部門が入っているから」と言ってなかった?」(6月11日付)というブログ記事があり、記事には次の一文がある。
イスラエルは最初「ハマスの情報部門が入っているから」と発表していたのですが、爆破から1ヶ月近く経って、しれっと違うことを言い出しています。

 これもイスラエルの鉄面皮の一例だが、ストゥルロヴ臨時代理大使は1日にロケット弾がイスラエル領内に400発も撃ち込まれ、その距離も千葉-埼玉間くらいの至近距離から発射されたという。彼はロケット弾の型式を描いたボードを見せ、実に様々なロケット弾があることを初めて知った。いずれのロケット弾も全て鉛筆そっくりの形をしていたが、つい貧乏庶民感覚で一発幾らするのだろう?と考えてしまった。
 ボードを視聴者に見せるのも、イスラエルにとってこれは自衛手段なのだ、と強調する目的なのだ。臨時代理にせよ、卑しくも正式なイスラエル大使なら当然の姿勢だろう。

 シアム代表が猛然と反論していたのは書くまでもなく、イスラエルの軍事行動は虐殺と断言する。死者数はイスラエルが13名(うち子供2名)に対し、パレスチナは254名(うち子供67名)と具体的数値を挙げていた。
 シアム代表もまた犠牲となったパレスチナの子供たちの顔写真が写ったボードを見せていたが、この写真はニューヨークタイムズ紙に載ったものという。子供たちは十歳前後なので、痛ましいと感じない視聴者は稀だろう。ハマス戦闘員よりも非戦闘員の方が遥かに犠牲となってるのだ。
 
 但し、ハマスは問題ではない、というシアム代表。パレスチナ全体がオープンエアの監獄となっており、イスラエルの軍事占領がずっと続いている状態というのだ。イスラエルは65も出された国連安保案や国際世論を全く無視しており、彼らが軍事攻撃するのであれば、我々には自衛する権利がある、と。
 シアム代表はイスラエルによる軍事占領は止めるべきであるといい、何時ものパレスチナ人の原則論を繰り返している。実際には歴史的に、二千年以上に亘って、一時期を除いてユダヤ人の土地ではなかったにせよ、ユダヤ人にこれが受け入れられるはずもなく、軍事占領を止めるはずはない。シアム代表もそれは熟知しているはずだが、日本の視聴者には“軍事占領”の言葉は効果的と思っているのだろうか。

 ゲストにはイスラエル・パレスチナ“両大使”の他、アラビア語研修を受けたアラブ・スクール出の外交評論家・宮家邦彦氏が出演していた。ガザを見ている宮家氏は、何度もパレスチナの現状は胸が痛むと話していた。ただ、アラブ諸国にはイスラエルと国交を結ぼうとする国々が出ていることを指摘、パレスチナの姿勢の在り方に疑問を呈しているようだ。
 イスラエルと国交を結ぼうとするアラブ諸国の例を宮家氏が挙げた時、そばでストゥルロヴ臨時代理大使が微笑みながら頷いていたが、「アラブの大義」は既に時代遅れになっているのだ。
その二に続く

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