トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

荒らしについて その①

2018-07-05 21:40:13 | マスコミ、ネット

 6月24日(日)20:00前後、福岡市で起きた有名ブロガー殺害事件。この事件は多くのニュースサイトでも取り上げられており、考えさせられたブロガーも多かっただろう。これまでもネオ麦茶事件秋葉原通り魔事件のように、ネットトラブルの挙句凶行に及んだ犯人はいたが、どちらも若者だった。
 だが今回の実行犯・松本英光は、犯行時無職という点では同じでも42歳なのだ。通り魔と化したネット依存症による無差別殺人ではなく、特定の人物を標的とした点が以前とは違っている。日本で有名ブロガーが殺害されたのは、今回が初めてだろう。容疑者は被害者のみならず、ユーザー方々に罵詈雑言を浴びせる“荒らし”を繰り返していたのだ。

 6月25日付「痛いニュース」の見出しは、【ネット殺人】有名ブロガーHagex氏を殺害した犯人が出頭前にネットで犯行声明「低能先生と馬鹿にされ殺意」となっている。このタイトルではHagexこと岡本顕一郎氏が犯人に“低能先生”と名づけたような印象を受けるが、低能先生とはじめに呼んだのは岡本氏ではなく、匿名の書込み者だったようだ。松本が何度も他のユーザーに“低能”の罵倒を繰り返したため、逆に低能先生とあだ名される羽目になった。
 現実世界では口に出来ない罵詈雑言を浴びせるのが荒らしだが、意外に彼らは少しでも言い返されたりすると逆ギレする傾向がある。己は言いたい放題の癖に、他人から些細なことを言われるや激高するのだ。

 記事にするに当ってニュースサイトを複数見たが、中でも興味深かったのが日刊SPA!と東洋経済電子版のサイト。前者でのタイトルは「低能先生はなぜHagex氏を刺殺した?報道とは違う“ネット民が見た経緯”」、記事では「低能先生vs Hagex氏の直接的なバトルはなかった」となっている。Hagex氏が松本をやり込めていたのではなかったのは予想外だった。
 日刊SPA!は「ネット上のバトルが原因でなく、バトルの場がなくなったことに逆上」という見方を取っている。書込みを制限されて怒りを増幅させたところに、「『低能先生』に人を殺せる筈がない」という匿名の煽りが決定打となり凶行に及んだというのだ。

 一方、東洋経済電子版のコラムニストはITジャーナリスト・本田雅一氏。タイトルは「「低能先生」を凶行に駆り立てたネット民の闇/匿名コミュニティによる正義追求の恐ろしさ」。数年前、毎日のように誹謗中傷のツイートや加工した画像を投稿された経験を持つ本田氏だけに、より詳細な解析をしている。
 私も含め事件で初めてHagex氏を知ったユーザーも少なくなかっただろうし、ここまで対立するまでにどんなやり取りがあったのか分らない人が多い。本田氏がリンクした松本のコメントに目を通したら、「低能」よりも「今すぐ死ね」「ゴミクズ」の言葉がやたら使われている。

低能先生からのIDコール」というエントリーは、2月から6月はじめのコメントが載っており、ここでも「今すぐ死ね」「ゴミクズ」のオンパレードである。「低能先生の捨てIDをわかる限り集める(2018/5/31まで)」では、今年に入ってからの大量の捨てIDの数に圧倒された。
 2003年から翌年初め頃まで私も2ちゃんねるをしていたし、私がよくアクセスしていた歴史板や映画、宗教板でも、この類はいた。死ね、ゴミクズ、はもちろんハゲ、童貞、低学歴、ヒキニート等の罵詈雑言が飛び交っていた。掲示板に張り付き、このような荒らしを繰り返していれば、高校中退で親のすねかじりの無職と見なされて当然だろう。

 だが、低能先生は実は低学歴でもニートでもなかった。松本容疑者の父へのインタビューが載ったサイトも多数あり、「匿名党」というブログ記事が面白かった。記事名「実家が天草で九大卒の松本英光容疑者(42)に悪影響を与えたのはイスラム文化と儒教文化」は、管理人の冗談にせよ、2012年までは福岡県内のラーメンの製麺工場で働いた職歴もある。
 12年に突然、一身上の都合を理由に退職したそうだが、職場でトラブルでもあったのか?父は立ち直るのを信じ、アパートの家賃代として月3万6千円の仕送りを2年間続けたという。

 8年間在籍した大学ではイスラム文学や中国文学を学んだというが、毎日新聞サイトによれば結局は中退したそうだ。一応は文学部で学んだにも係らず、あの書込みは酷すぎる。「国語能力低すぎだよお前w」というレスは、元有名大在籍者の肥大化したプライドもあろうが、「お前が言うな!」の典型だ。
その②に続く

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