2020年12月7日
「漱石とその時代」著者:江藤淳(新潮選書)が
本棚に(1巻~4巻まで)ある。夫が読んだものらしい。
調べたら5巻まで出版されてました。5巻は家にはないですが・・・。
なんとなく読んでみようかなと現在3巻まで読みすすんでます。
漱石の本は「我が輩は猫である」「坊っちゃん」は中学生ぐらい?
「三四郎」「虞美人草」は学生時代かな?
「心」「草枕」「夢十夜」は50代位に読んでのではないかと思う。
いつもぼんやり読書なのではっきりしたことはおぼえていない。
夏目漱石については自分の中では「坊ちゃん」とか面白いことを書く
小説家で英語教師というイメージはあまりなかった。
今回この評伝を読んでそれと違っていたので驚いている。(-_-;)
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1巻では複雑な生い立ち、生活環境など詳しく書かれている。
一番上のお兄さんのすすめで世の中の役に立つ人材になるには英語を
勉強するようといわれたいきさつや養子に出された後に養子先の
夫婦が離縁するに当たり彼が(本名:金之助)実家に戻るのに、
養育費として金の支払いがあったこと等、
肉親の親と育ての親の間で、情ではない打算的なやりとりの
シビアな現実に翻弄されて育った事など。
漱石の内面を探る書き方に惹かれた。
正岡子規との交流、高浜虚子との出会いなど。
正岡子規とのやりとりも手紙等の検証で
詳しくて頬笑ましく読みました。
高浜虚子と正岡子規の微妙な関係もこの本で理解でき興味深かった。
2巻では漱石(金之助)はイギリスに留学します。
イギリスでの彼の煩悶。
自分が日本を代表してヨーロッパ文明を吸収し理解しそれを持ち帰って
祖国に役立つことができるか?その悩みが一番だったのだろうか?
彼は神経衰弱気味になって懊悩します。
彼は二松学舎に少年期から漢文等を学びその素養が
彼の下敷きにあって、それからの英語勉強になるのですが
(東洋文学の方を彼は好んでいたのかしら?)
実際は「有用な人」になるべく留学中は官費の中で英語書籍を
多く購い集め、寒くて環境の悪い下宿にすみ、質素で貧しい
食事と背の高いヨーロッパ人に混じり生活する屈辱の生活。
キリスト教への改宗への誘いなどヨーロッパ文明との違和感に
悩んだと理解した。
たかが2,3年の留学でどっぷり西洋文化に浸ったつもりになって
英語を理解し蕩々とその文明を語れるものだろうか?
日本に帰ってそれができるか?
彼は江戸っ子気質たっぷりの人だと思うのだが、
そういうことがインチキくさい気がしたのだろうか?
金之助の英国留学の間に子規が死ぬ。
士族生まれの自負心をもって子規は四国から上京したが
青雲の志を果たせず病死する。
無念の死を控えた時の子規の詩を読むと胸が痛みました。
江戸から明治スタートという変換の時代に優秀な若者がヨーロッパに
行きその文化の軋轢に病死や客死した例も検証されている。
日本に招かれたお雇い外国人教師達も精神異常をきたしたり、
帰国する船上で身投げして自死する例もあった。
まず金之助が胃弱や神経衰弱で無事に日本に戻ってこられて
よかったということかもしれない。
もしかしたら我々は彼の作品に巡り合えなかったかもしれないのだから・・・。
3巻では金之助が日本に戻ってきて朝日新聞の社員になって
小説を書くくだりになっていくのですが。
ムクロジ 晩秋
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今回、私が興味をひかれたのは彼が英文学者であったということでした。
時々日記を長い英文で書いています。
時には日本語で表現したくない内容(心の吐露)を英文で表現している。
また金之助はあまたの詩を英文で書いてもいます。
それがKeats やShelley, Blake の書くような自然賛美や
大いなるものへ心を寄せ、抒情的でロマンチックというか夢や
生きる事の懊悩、小さな花、菫、などに寄せる想いなど記している。。
江藤淳は彼の心に棲んでいる女性への思慕もあると言っていますが・・・。
私が漱石に持っていたイメージ(江戸時代の戯作者と似た系列?)
とはかけ離れた内容でした。彼は本当は英文学者だったんですねぇ。
上田敏や高山樗牛などの力は彼にとっては似非っぽいものでした。
国の方針でラフカディオ ハーン(小泉八雲)は免職となり代わりに
金之助が東京帝国大学文化大学講師となって英語・英文学教師と
なりましたが最初その変更に反感を持った学生たちも彼の講義の
内容にはうなずかざるを得なかったようです。
力量ある、勤勉な英文学者だったんですね。
Pity is akin to love.彼の小説の中でこの文が出て日本語に訳すなら
「可哀そうだたぁ惚れたってことよ」と言わせています。
江戸っ子ぽい表現ながら洒落てるなと彼の小説を中学生の頃
読んだときに、覚えた英文でしたがやはり達人だったんですね。
ヒヨドリジョウゴ
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まだ3巻の途中なのですが、これは夏目漱石の小説を順番に読んだ
ほうがいいなぁと思っています。
彼の心の軌跡を少したどってみたいかも・・・。
日本経済新聞の朝刊の現在の連載小説が夏目漱石を扱ってます。
「ミチクサ先生」 作者は伊集院 静氏。
今年の春、伊集院氏は病気で途中休載していたが11月にまた再開している。
今の進捗は漱石がイギリスに留学する前の結婚生活中の話である。
江藤淳の「漱石とその時代」が骨子になってそれに枝葉をつけてるように見える。
まぁそれはそれで面白いですが・・。
ムクロジの実をご存じですか?木のてっぺんにできるんです!
10月頃のムクロジ