同窓会に参加するため、地元・秋田に帰省した。行きつけだった古書店に寄るのが、帰省時のルーティンのひとつだったのだが、年々その数は減ってゆき、市内の古書店は(神保町にあるような本格的なものは)、ここ二十年のうちに5軒が無くなり、残り1軒になってしまった。
駅から歩いてその界隈まで行き、昼食後、本の虫と化した。
復路は飛行機と電車を乗り継いで帰るので、車での帰省と違い、好きなだけ買って帰ることはできない。2冊までと制限して吟味した。10冊くらい欲しいものがあったが、本書と、原書房の『ドイツ参謀本部』を選んだ。
旅の道連れに、しかも帰省の旅には最適なものを見つけた。きっとシリーズ中、あまり人気のない1冊だったのだろう。都内のブックオフなどではお目にかかったことがなかった。
本書は表題の通り、秋田と飛騨の2本立てでお得な気分だが、それだけ秋田が軽易に扱われているようで、若干残念ではある。(それは読後、打ち消されるわけだが)
当初、司馬遼太郎は秋田空港からタクシーで象潟に向かう。土地勘のある私としては、タクシー代が心配になってしまうが、それだけの予算が出版サイドから出ていたのだろう。
象潟を訪れた俳人や象潟の歴史について、かなり詳しく書かれている。地元の私も知らなかった。その後一行は秋田市に移動し、金足の奈良家を訪れ、菅江真澄の足跡を辿る。県内各地にその逸話が残る江戸時代の紀行家であるが、恥ずかしながら断片的な知識しかない。
そして、最もウェイトが置かれているのが県北だ。大館や鹿角が輩出した学者らを司馬遼太郎は絶賛している。その人物伝が、地域の歴史とともに語られて、あまりに面白く、いっきに読んでしまった。勢いに任せて『飛騨紀行』も。
『街道をゆく』は他にはまだ『モンゴル紀行』しか読んでいないが、これはなかなか侮れない紀行文学である。暇つぶしに読むには失礼な質の高さなのである。これからも継続的に読んでいこうと思った。
