前から気になっていた。読んで外れの少ない著者であるし、将門という題材も興味を惹いた。
と、期待しただけに、やや肩透かしの感は否めなかった。物語る意図はないらしく、ちょっとした古典の解説書といった風なのだ。
表題作の他は、幕末の志士伝。これらも創作的なものでなく、資料を辿りつつ著者の想像が少しだけ挟まれる。
なんだ、つまらないなと思いながらも、通勤電車でさくさく読み進んでいた。純粋に歴史の勉強になったし、最後には、もっと読んでいたい名残惜しさとともに頁を閉じた。
落ち着いた、静かな文体で、憶測は最小限に、真摯な態度で文章は紡がれていく。読んでいて、いつのまにか、心地よくなっていたのだと、最後の名残惜しい気持ちで初めて気づいた。
この読後感の影響か、翌日、長く見ていなかった図鑑や地図などを、ゆっくり眺めて過ごした。不思議な自足感が訪れた。
地味な作品集だが、初心を思い出させてくれた。意外な作用だった。
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