書店の雑誌コーナーだけでなく、コンビニにすら売っている、よくある「別冊宝島」のムックである。
この「別冊宝島」、ワイドショー並の誇大妄想と、何らの学術的裏付けもない浅はかな知識だけで、さまざまな分野の特集を組んでは、こうして何やらしたり顔のムックを発行する。そんなことは承知の上で、つい衝動買いしてしまった。
購買欲のそそらせ方が上手いのである。ちょっと興味を持ってるサブカル的なもの。そういうのは詳しく研究しようと思えば、図書館の書庫や古書点で、おそらく満足のいく資料が得られるだろう。しかしなかなかそこまで踏み切らない。そんなとき、日常的に目につくコンビニ窓側の陳列棚に、ポンっと、週間誌の目次のようなキャッチコピーで、手頃なムックがある。コンビニ的な衝動買いをしてしまう。
私は島が好きである。島に住んだこともあるし、無人島を探検して恐ろしい目に遇ったこともある。
おそらく私の島好きには、絶対的な他者への興味があるのだろう。しかもその他者は日本の中にありながら独自に形づくられた他者である。また同時に、死者をも含む歴史的な他者である。
島の歴史は島をある方向に規定し、それが本土の場合と比べて明瞭である。流刑地、海賊の拠点、水軍城、平家の落人伝説、伝染病の隔離島…
西日本には、こういった異次元が身近にあった。
本書では週間誌的な野次馬の域を出てはいないが、興味をそそらせる幾つかの島が取り上げられている。
死んだ島、通称「軍艦島」。乱立する高層アパート群の廃虚は、よく近未来を描いたアニメに登場する、核戦争後の風景とリンクする。
また個人的にいつか学習したいと思っていた、隠れキリシタンが土俗化した独特の宗教。これに関しては島名を伏せて収録されている。おそらく五島列島のどこかのはずだが、いずれきちんとした文献をあたりたい。
そして明らかに南洋諸島の文化に影響された秘祭も取り上げられている。全身をバナナの葉のようなもので包んだお化け・仮面神。これらの由来を、民俗学者はどこまで解明しているのだろう。
また逆に日本神話を連想させるような神々を奉り、巫が支配し、その弟が実務を行うという、原日本的な文化を残した島もあるというから不思議だ。
島は歴史を濃縮し、他者として私の知的欲求をいざなうのである。
本書は、この知的欲求を満たす根拠を持たない野次馬的な特集に過ぎないが、私の欲求が促進されたことは確かであろう。
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