たぶん、私の蔵書の中で、積ん読最長記録を樹立してしまった本である。どこかの古本屋で入手してきて、何年も実家に置いたままで、そういえば読んでなかったと休暇で持参して、またしても読まずに積んでいた。トータル12年くらい。ウィスキーならそこそこの熟成具合だ。
原因は、おそらく外国の戯曲みたいな登場人物の多さにある。しかもそれぞれが複雑な親戚関係を形成していて、それを踏まえて読まねばならないというのが、まずはストレスだった。100ページくらい読み進んでも、まだ『彼らの血縁関係って?』と最初の説明を参照していたくらいなのだ。
三世代に渡る大河ドラマであるが、綿密に組み立てられたものではなさそうで、どんどん膨らんで肉付けされたような無計画さが感じられた。そのためか、読んでいて掴みどころがわからないことが少なくなかった。
それでも読めたのは、この作品のネームバリューだけでなく、激情的な作中人物たちのドラマに引っ張られたからだろうか。まるでヒステリーのように、愛し、憎み、世代を越えた物語が続いていく。
特に最後、ヒースクリッフが愛人の幻に取り付かれていく過程は、なかなか鬼気せまるものがあった。
【そうだ、あのヘアトンの姿が、わしの不滅の愛の、当然わがものであるべきものをつかんでおこうとする狂おしいまでの努力の、わしの堕落の、わしの誇りの、わしの幸福の、そしてわしのもだえのまぼろしだったのだ。】
しかし作者は結婚どころか恋愛らしいことさえせずに若死にしたというのだから、この想像力(創作力)はすごいものだ。
映画の原作としては、良い素材なのだろうと思う。この原作の香りが記憶に新しいうちに、映画を観てみたいと思う。
