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よい子の読書感想文 

読書感想文858

『プーチンの野望』(佐藤優 潮新書)

 書店のロシア・ウクライナ関連コーナーで平積みされており、手にとってみたことはあったが、内容のほとんどが、過去に雑誌に掲載されたプーチンやロシアに関する雑文の類いである。ウクライナ侵略開始後(2022年2月末以降)のものは、最後の第6章のみ。それで、ちょっとがっかりして買わず仕舞いだった。時勢に乗って、関連する文をリユースし、申し訳程度に少し書き下ろしを加えた内容なのである。
 だが早くも古書店で並んでいたので、買った。専門家のプーチン論を読むことに意義はあろうと思った。また、この1年半メディアが報じて疑わない欧米視点に染まってない論点、これは複眼的に見るための良いテクストになろうと思った。(同じ意味でエマニュエル・トッド『第三次世界大戦はもう始まっている』も有意義な読書ではあった)
 という期待に違わない読書となった。
 プーチンがロシアで支持される所以、その信念を支えるもの(そこに信仰が関わっていることは目から鱗だった。佐藤優ゆえに論及できたことだろう)、これらはウクライナでの不合理に見える戦略について、理解の助けになる。
 また、プーチンを支持するロシアの国民性も、私たちの理解の範疇を超えた文化的風土によるものらしい。ヒントとなる詩が引用されている。
“知恵でロシアはわからない。
一般の物差しで測ることができない
ロシアは独自の顔を持っている
ただロシアを信じることができるのみ”
 ロシア人の諦念に似た信仰は、国父のような独裁者に委ねられる、ということかもしれない。委ねられた側は、天命と心得、より思想を純化させてしまう。
 欧米の物差しでは図れない。ましてや、引き込むことなど愚かな奢りというべきだろう。

 と、参考となる読書ではあったが、終章は蛇足と感じた。創価学会の池田大作を持ち上げ、その著書『人間革命』を引用して、対話こそ解決策と締めくくる。
 がっかりとまでは言わぬが、それしか策は無いのかと脱力に見舞われる。
 温暖化対策には再生可能エネルギーです、と言われるようなものだ。わかりきったことを・・・という脱力である。
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