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よい子の読書感想文 

読書感想文868

『ニーチェからスターリンへ』(トロツキー 森田成也・志田昇訳 光文社古典新訳文庫)

 ウクライナ侵略について、何か示唆が得られるだろうかと手にした。
 トロツキーには個人的に関心があって、かつて『裏切られた革命』や『永続革命論』を読んだ。しかし、ウクライナ出身とは気づかなかった。
 私はそもそも、ロシアによるクリミア占拠までは、ウクライナに着目することもなかった。ソ連においては、一つの地域という扱いだったろうし、私が覚えた世界地図は、ソ連が存在した時代のものだった。
 ウクライナ侵略がきっかけで、ロシアとウクライナの歴史を紐解き、一筋縄ではないことを知った。もっと知りたいと思って、ソ連の指導者らの著作等を当たっている一環で、本書も手にした。
 
 多才さを再認識する読書となった。文学論にも秀でた才能を見せたトロツキーだが、人物論はライフワークと呼ぶべき仕事を残している。本書はその中でも優れたものを選んで編まれたもので、面白く読めてしまった。
 とはいえ、ウクライナについての言及はほとんどなく、行間からもウクライナへの想い等は読み取れなかった。
 そもそも、人生の大半を亡命先で過ごしたトロツキー。ロシア革命(それはソ連邦を形成することであり、ウクライナを後景に退ける結果となる)の原動力となった人。彼にとって、祖国ウクライナは、他人に語る類いのものではなかったのだろう。
 スターリンに対する舌鋒は鋭く読み応えがあるけれど、それは無論ウクライナ人としての批判ではない。世界革命を志したトロツキーは、故郷への愛着を文章に表しはしない。
 他の、未読の著作も紐解いてみたい。ウクライナについて、あるいはロシアとの関係性について、何らかの言及はあるはずだ。
 
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