長崎めぐみ教会 tearoom 2

日本イエス・キリスト教団 長崎めぐみ教会から、楽しいお知らせ、牧師のつぶやき、日記、メッセージなどお楽しみください!

テニスン詩集から

2019-03-28 13:28:12 | 

 

『イン・メモリアム』

 

CI

 

見る人がいなくても、庭の木々は風に揺らぐだろう。

  優しく咲く花もひらひら落ちるだろう。

  可愛がる人がいなくても、あのブナの木は茶色の芽をだすし、

この楓の木は紅葉して散ってしまうだろう。

 

可愛がる人がいなくても、向日葵は美しく咲き映えて

  種子の丸い花盤を焔とばかり放射状に輝かせ、

  乱れ咲く真っ赤なカーネーションは

蜜蜂の羽音に満ちた大気に夏の日の香りを添える。

 

可愛がる人がいなくても、数多くの砂州を通りすぎ、

  小川は平野を音立てながら下ってゆくだろう。

  昼間にも、また夜になって子熊座が

ぐるぐると北極星のまわりを巡る、その時にも。

 

気にかける人がいなくても、小川は風わたる森のまわりを

  流れゆき、青鷺や水鶏の巣に水を漲らせ、

  あるいは入り江、あるいは窪みともなり、

大空わたる月の光を砕いて銀の矢とするだろう。

 

そして遂には、庭や荒野からも

  新しい連想が湧きいで、

  年々歳々、まわりの風景も、新しく移住した人の

子どもにも馴染みのあるものとなろう。

 

年々歳々、農夫はいつもの農地を耕し、

  森の木々を伐って農地を作ったりするが、

  年々歳々、私たちへの記憶は薄れて

丘が取り巻くこのあたり一帯からも消えることになろう。

 

 

岩波文庫

「テニスン詩集」西前美巳編

   


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