栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

血統クリニック~日本ダービー再掲

2014-06-02 11:29:42 | 血統クリニック

朝起きたらダービーの回顧を書こうと思ってたんですがいろいろメンドクサイ用事が重なってしまい、これから「重賞の見どころ」安田記念と鳴尾記念の原稿を書かなければならないので、回顧は夕方か明日にやります
とりあえず「血統クリニック」を再掲しておきますが、頭の中にある雑感を箇条書きにすると

・私は責任とって単勝を買いましたが、レッドリヴェールは腹下が巻き上がっていたし前後駆の張りも桜花賞ほどではなかった

・ずっと手綱を取ってきた“お手馬”だからこそ、ノリも蛯名もかかるのを覚悟で出していけたし、かかり気味になってもなんとかなだめられたし、大一番で勝ちにいく競馬ができた

・先週のオークスの再現ともいえるし、父ハーツクライの有馬の再現ともいえる先行策

・ハーツクライ産駒が春クラシックで勝ち負けするには、母にNorthern Dancerクロスが必須ということが改めて立証された(ヌーヴォレコルトとワンアンドオンリーの完成度を早めたクロスとは)

・やはりナスキロクロスを持たないキンカメ産駒には府中G1は鬼門だった(配合に素直な前チャンピオンサイアー4)

・かなりのスローになったので距離適性短めの馬が全体に好戦

レッドリヴェール
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104324/
血統については桜花賞のエントリを参照。母父Dixieland Bandはその母Mississippi MudがAlibhai3×4にHyperion4×4・5、母母Sand BuggyがDetermineとHeliopolisを通じる「HyperionとSwynford」の組み合わせのクロスで、ここがLady Angelaの「Hyperion,Tracery,Swynford,Desmond」と脈絡するので、デインヒルのように頑強さを補えるNorthern Dancer血脈だ。さかのぼるとHaloと同じCosmahに辿り着く牝系で(リヴェールはCosmah4×5)近親に目立った活躍馬はいないが、オルフェーヴルもナカヤマフェスタもゴールドシップも近親にオープン級続出というわけではなく、「Lady Angela増幅」という配合のツボさえ押さえてあれば、多少のボール球でもホームランにしてしまう長打力こそが種牡馬ステイゴールドの最大の魅力といえよう。
小柄な牝馬でも非力なところは全く感じさせず、函館の極悪馬場に足を取られながら抜け出したり、阪神の急坂で力強く加速できる頑強さがある。3連勝はいずれも僅差で、勝負強さと我慢強さも特筆もの。小柄でも頑強で勝負強く我慢強いというのはまさにノーザンテーストの特長そのものだ。そしてテースト的に頑強なのに体質は実にしなやかで動きに柔らかみがあり、そういう意味ではオルフェーヴルのような“なのにの強さ”を持ち合わせた名馬なのかもしれないが、血統と体型と走りをすり合わせていけばいくほどマイラーではなく中距離馬に見えるし、それが能力を高く評価しながらも桜花賞やJFで◎を打たなかった理由でもある。実際外マイルの斬れ勝負というのはステゴ産駒の最も苦手とする領域で、東京と京都外と阪神外と新潟外の芝マイルの重賞では[1.3.0.29]、この連対4つはレッドリヴェールの桜花賞2着とJF勝ち、オルフェーヴルのシンザン記念2着、ウインプリメーラのチューリップ2着。外マイルのG1でハープスター相手に一歩も引かず叩き合うというのが、ステゴ産駒としてもいかに規格外かということが実感できるし、だから規格外のローテで規格外の快挙を成し遂げてしまっても驚くにはあたらない。一週前のフォトパドックではふっくら見せており、激走の疲労はないという判断。

ベルキャニオン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103836/
血統については皐月賞のエントリを参照。Nijinskyが強い伸びのある体型は全兄カミノタサハラに近く、タサハラより脚は長いがラトロ肩で掻き込んで走るのでそれほどストライドは伸びない。それはたとえばブエナビスタ(ラトロ肩)やダンスインザダークきょうだい(Ribot肩)なんかもそうで、Nijinsky的に胴伸びのある体型ならばことさらストライドを伸ばして完歩の大きさを稼ぐ必要はないのだ。ブエナを少し緩慢にしたようなイメージの中距離馬で、ダービーに出てくればワンアンドオンリーとどちらを上にするか悩むと皐月賞時に書いた。東京は[2.2.0.0]、距離2400mなら今度はイスラに雪辱…という絵も描けるが、プリンシパルはあのメンバーならばもっと楽に、もっと格が違うという勝ち方をしてほしかった。プリンシパルにしても共同通信にしても、これはG1級だというほどの説得力のある内容ではなかったし、中山が合わないという点を割り引いても皐月もスプリングも負けて強しというほどの内容ではなかった。東京2400mでベストパフォーマンスを出す可能性はかなり高いと思うし、ゴール前の叩き合いに加わっている可能性もかなり高いと思うが、ダービーの◎を捧げられる馬かとなると、○や☆がシックリくる馬だ。

ワンアンドオンリー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011105072/
血統は皐月賞のエントリを参照。母がNorthern Dancerのクロスで自身はHaloのニアリークロス、LyphardとDanzigを通じるNorthern DancerとFair Trialのクロス、トニービンとSpecialを通じるHyperionとNasrullahとFair Trialの組み合わせのクロスなど、ヌーヴォレコルトとはいろいろと共通点の多い配合で、有力な血のクロスをできるだけ近い世代に多くつくることにより、ハーツクライの晩成の血を比較的早期に開花させることに成功したといえよう。とはいえまだ全体に緩さが残っているのも事実で、だから同時期の父同様、後方から末脚を伸ばす競馬になっているというところはあるのだろう。大跳びで器用に立ち回れる馬ではないから、皐月賞は最内を引いてしまった時点でいったん下げて大外に持ちだして、ストライドロスのない大外捲りで追い込むしかなかったし、あれはあれでノリらしい決め打ちではあった。距離は2000mぐらいがベストだと思うが東京に替わるのはプラスだし、そしてダービーはこういう2000mベストの差し馬が勝ちやすいレースでもある。ただゴール前1Fが12秒台のときは[1.1.0.1](着外は皐月4着)、11秒台のときは[1.2.0.2](着外は東スポと小倉新馬)でデリッツァリモーネやプロクリスあたりに先着を許している。スローで上がり11.5-11.5の瞬発力勝負よりは、ある程度流れて11.8-12.0の持続力勝負が希望だろう。

イスラボニータ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103565/
血統については皐月賞のエントリを参照。「サンデー×ミスプロ」の組み合わせでCozzeneを通じるナスキロクロスだから体質が非常に柔らかく、しなやかに大きくストライドを伸ばして走れるのが最大の長所だ。今でもベストは外1800mだと思ってはいるのだが、皐月賞は内枠からスッと好位につけると2角までの外に持ちだせるポジションを確保していたのがさすがで、ストライドで走る馬だけに中山内回りでもなるべくストライドロスのないようなコーナリングで回ってこようという目論見どおりのレース運び。馬場が高速化していたのも斬れ味を発揮するにはプラスだった。東京替わりは大歓迎だから、あとは距離2400mがどうかという点だけだろう。母イスラコジーンはCozzene×Crafty Prospectorというマイラー血統で芝8.5~9Fを主戦場としたが、そこにフジキセキという血統のイメージどおりの伸びのない体型。体型にあまり伸びがないが体質が柔らかくてアクションや可動域が大きくて全身運動できるということは、エネルギーを浪費しやすいということでもある。

ワールドインパクト
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104051/
ダノンジェラート、ロジプリンセスの全弟で、母ペンカナプリンセスはフレッドダーリンS(英G3・芝7F)に勝ち愛1000ギニー2着。牝祖Treasure ChestはMy Dear Gil(In Realityなどの母)の全妹にあたる名血だが、近親に目立った活躍馬はいない。ディープインパクトとの配合はLyphard4×5、Northern Dancer5×5・5・6、Halo≒Sir Ivor3・5×6、Sir Gaylord6×7・7、Busted4×6。そして母系にVaguely Nobleが入るのはクロウキャニオン4兄弟やプリンセスオリビア兄弟などと同じで、これはBurghclere≒Aureoleのニアリークロス。Halo≒Sir Ivor的機動力もナスキロ的柔さもLyphard的ハイインロー的粘りも増幅したちょっと総花的で幕の内弁当的な配合というべきで、兄姉はナスキロ柔さで差すストレッチランナーに出ているのに対し、この馬は体質は柔いのだが行っても差してもハイインロー的な持続力を感じさせる脚質だ。青葉賞(11.8-11.1-11.9)は早め先頭で踏ん張り、大寒桜賞(上がり12.0-11.7-12.0)は大外一気で差し切ったが、上がりタイムを考慮すると使っている脚はだいたい似たようなもので、ようはワンペースかつ持続的に11.8-11.8で走りつづけるHyperion的脚質で、しかもVaguely Nobleを引くだけにあまり馬群の中で揉まれる形は好ましくない、という馬だろう。この相手に大寒桜のような大外一気が通用するとは思えないので、青葉のように残り200mで先頭に立つ競馬でいいと思うし、その形ならば馬券圏内の可能性も少なくないと思う。相手ナリに走れそうなところを買って、青葉賞組では2着のこちらをとりたい。

トゥザワールド
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103975/
血統については皐月賞のエントリを参照。「サンデー×ミスプロ」の組み合わせらしい柔らか体質で脚も長いが、そこは配合に素直なキンカメ産駒、NureyevのクロスにSharpen Upが絡むことでハイインロー的Lady Juror的な粘りと機動力に長けた脚質に出た。皐月賞はもう少しタフな馬場になってほしかったところだが、川田としては機動力と粘りは活かししきった騎乗だった。対イスラという点でいうと、2400mに延びるのはこちらに分があり、東京に替わるのはあちらに分があり、差し引きではコース替わりのマイナスのほうが大きいか。去年のコディーノのときにも書いたが、これまで東京芝G1で馬券に絡んだキンカメ産駒は、ロードカナロア、ローズキングダム、アパパネ、ルーラーシップ、コスモセンサー、ベルシャザール、レディアルバローザの6頭で、Hornbeam≒パロクサイド6×4・4譲りの大跳びのルーラー以外はみんなナスキロのクロス持ち。これも配合に素直なキンカメらしい現象といえるが、ナスキロのクロスを持たない本馬にとっては嫌なデータに違いない。

ハギノハイブリッド
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104344/
サイレントメロディの甥で、母母サイレントハピネスはローズS勝ち馬で、その全妹に阪神JFのスティンガーがいる。タニノギムレット×トニービンはクリスタルパレスとKalamounを通じる「Grey SovereignとPrince Bio」の組み合わせのクロスになるが、本馬以外に目立った活躍馬は出ていない。牝祖Real DelightはBull Lea×Blue LarkspurだからRobertoの母母Rareleaと3/4同血で、本馬はHail to Reason4×5とRarelea≒Real Delight5×7によりRoberto血脈を増幅しており(飛節のつくりなどはかなりRoberto的Bull Lea的)、近親の菊2着フローテーション(スペシャルウィーク×リアルシャダイ×レガシーオブストレングス)や同父の京都新聞杯勝ち馬クレスコグランド(タニノギムレット×サンデーサイレンス)とイメージが重なるようなRobertoっぽいステイヤーに出た。京都新聞杯も鋭く斬れたというよりは持続力でジワジワ抜け出してきたという勝ち方で、菊花賞で狙ってみたくなる馬ではあるのだが、ダービーを勝ち負けするには中距離馬としての爆発力が少し足りないか。クレスコグランド(5着)ぐらい走れれば健闘というべきでは。

アドマイヤデウス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011105911/
血統については皐月賞のエントリを参照。「叔父アドマイヤフジに似た実直で粘り強いHyperion的脚質で、エアレーション中山の2000mはピッタリだが、皐月賞で◎が打てると大きな声で言えるほどの“ハッとする脚”は使ったことはない」と書いたが、中山芝が急激に高速化したことでそのあたりの弱点が露わになった印象。東京向きの斬れ味があるほうではないし、もう少し前々で粘着力を活かすようなレース運びならば見せ場はつくれるだろうが、巻き返しの材料は乏しいというべきか。

ショウナンラグーン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011102893/
母母メジロドーベルはオークスと秋華賞とエリザベス女王杯勝ちで、その父メジロライアンはHyperion5・6×5・5、母メジロビューティーはPerfume≒Nasrullah4×4・5。そこにHalo≒Boldnesian2×4のマンハッタンカフェが配され、Nasrullah≒Royal Charger5・5×5であまり強いクロスをもたないシンボリクリスエスが配されて、ショウナンラグーン自身はHail to Reason4×5、Boldnesian6×6など緩い父母相似配合になっている。
シンボリクリスエス産駒らしい長手の体型で、Seattle SlewとLaw Societyを通じるボルキロのクロスだからショウナンマイティのような斬れもあり、セントポーリアは上がりが速すぎて追い込めなかったが本質的には中山より東京向きの差し馬だと思っている。青葉賞は「勝ち時計が2分26秒を切る」か「スローならば上がり3Fに11.5より速いラップが二つある」か、このどちらかをクリアしていないと本番では通用しない…という古くからの言い伝えがあり、過去10年でこれをクリアしたフェノーメノとウインバリアシオンとペルーサとアドマイヤメインとダンツキッチョウとハイアーゲームは本番で[0.4.0.2]、クリアできなかった4頭は[0.0.0.4]。今年の青葉賞は勝ち時計2.26.5で上がり11.8-11.1-11.9、同父のアプレザンレーヴは2.26.2で走破してレース上がり11.6-11.4-12.0、ダービーはロジユニヴァースの5着だった。

トーセンスターダム
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103748/
血統については皐月賞のエントリを参照。ディープ×ノーザンテースト×クラフティワイフはトーセンホマレボシやヒストリカルと同じだが、こちらは母父にエンドスウィープが入ったので母がMr.Prospector3×4で、自身はTom Rolfeの母Pocahontasのクロス5×6になり、前駆のつくりがTom Rolfe的で掻き込んで走るところはベールドインパクト(Pocahontas5×7)やゲシュタルト(Tom Rolfe6×5)と似ている。わりと前の掻き込みの強さに頼って走っていて、その意味では3角からの下りでジンワリ惰性をつけていける京都は合っているのだろうし、きさらぎ賞は渋った馬場もプラスだった。現時点ではパンパンの良だとトップクラスと互すのは難しいか。

タガノグランパ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011105005/
キングカメハメハ×スペシャルウィークはクラリティシチーと同じで、母父がサンデー系でクロスがNorthern DancerとMill Reefだからローズキングダム的なアウトラインの配合でもあり、だから外1800mがベストではないかと書いてきた。皐月賞の大敗は内回りが半分、距離が半分だろう。父や母父にはあまり似ておらず、ラストタイクーンとタガノテイオー牝系のマイラーっぽさが出た体型。グルームダンサーというのはスマートレイアーやココパシオン一族の母系にも入るが、わりとマイラー寄りの適性を主張する血ではある。

スズカデヴィアス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011105898/
血統については皐月賞のエントリを参照。キンカメ×サンデー×Seattle Slewというのは柔らかくストライドを伸ばして斬れたい配合だが、一方でNureyev≒Fairy King4×4やPassadoble≒Alleged4×5でパワーや粘りも増しており、なるほど斬れもパワーも機動力も粘着力も兼備していて弱点が少ないが、オープンまでくると大物を食うだけの大技がない…というちょっと玉虫色な脚質の中距離馬。ソルレヴァンテなどもそうだが、配合を凝っただけの成果はあったけれど、配合を凝りすぎてキャラがハッキリ立ってないという側面もまたある。

サウンズオブアース
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104377/
ブルーグラスS(米G1・AW9F)勝ちDominicanの半弟。母ファーストバイオリンはChris Evertにさかのぼる名牝系で、Dixieland Band×Secretariat×Hoist the Flagと母系に入っていい種牡馬が代々配されており、繁殖牝馬としてはなかなか期待大の血脈構成。ただネオユニヴァース×Dixieland Bandというのはパワーと粘りで中山内回りを捲りたい血統だが、その一方でSecretariatからナスキロ柔い体質を受け継いだのでパワー型に特化しきれず、京都外回りをミカエルビスティーのようなストライドで差してくる。このパワーにも斬れにも特化できないキャラの弱さが、オープン級相手だと少し詰めが甘い成績とリンクしているように思える。

サトノルパン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011102913/
血統はNHKマイルのエントリを参照。母の影響が強いマイラー体型をしているが、Halo≒Sir Ivor≒Drone≒デプスのニアリークロスで、兄たちよりもSir Gaylord的な細身でナスキロ柔い体質になった。まだトモが非力で、現状は高速馬場の京都外1600mで一番斬れる馬だろう。ガツンと引っかかってしまったNHKマイルはノーカンとしたいが、たとえ折り合ったとしても2400mは長いのでは。

エキマエ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104563/
Storm CatにCaerleonにダンシングブレーヴにSeattle Slewにデュールとナスキロ血脈が豊富な配合で、東京向きの柔さはある体質だ。ただいかにもメイショウボーラーのマイラーという体型だけに、2400mでは食指が伸びない。

ヌーヴォレコルトとワンアンドオンリーの完成度を早めたクロスとは
http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/fbef8c503d3459d6e38eaad08aafd50c
晩成ハーツクライを3歳春に完成に近づけるには
http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/becfa6776ddaf1e4041bc91b3f721633
配合に素直な前チャンピオンサイアー(4)~東京G1で好走したキンカメ産駒は、みなナスキロのクロスだった(2)
http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/9da23315b01de3a41341d71dac7fe1f1

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