呑舞さんの脳活俳句日記

俳句漬けの毎日。夢の中でも俳句を詠み、昼間は時々カメラを持って外出し、俳句の材料を捜す日々。句会報告や俳論を掲載します。

俳句とインターネット

2016-10-20 08:36:40 | 俳句

マサチューセッツの渓谷の秋                    アメリカの友人から近況が届いた。アメリカでも今、秋真っ盛りであるとの添え書きがある。遠く離れた外国の今を知る事が出来る。拙宅別荘より広い。

   便利な世の中に成ったものだ。好きな時に何時でも情報を手に入れたり、外国の友人に近況を伝えたり、インターネットを利用して多くの友人と繋がることが出来る。今や、ネット環境無しでは十分な情報を手に入れることが出来ない。逆に言えば、ネット環境を利用して多くの情報を手に入れることが出来る世の中に成ったと言うべきかも知れない。ただ、その便利さの陰で色々な不都合が発生している事も否めない。俳句の世界においても事情は同じでは無いだろう。単純に一期一会と言うような狭い考え方では成り立たない様な俳句の世界が形成されつつあるように感じられる。以下は、結社誌に最近投稿した筆者の文章である。主宰がどのように感じられるのかは氣になる所である。

   「最近、インターネットを利用して俳句を投句して互選をしたり、主催者(主宰)からの選評も頂ける様なホームページやフェイスブックを使った句会が増えている。ネット環境(パソコンに限らず、スマホや通信機能搭載のタブレットでも良い)さえ構築できれば、全国規模で俳句を楽しむ事が出来る。勿論、結社に参加して実際の句会を体験する事の必要性を否定するものでは無いが、結社の枠を超えて多くの俳人に接し、また、多くの人に自分の作品(俳句)を読んで貰える機会が増える事は、俳句に対する視野を広げる事にも繋がるような気がする。

   また、従来の結社が独自のネット句会を運営する例も増えている。ただ、結社内のネット句会では(多くの場合、非会員の投句を認める場合が多い様ではあるが)、やはり結社の枠内に留まる事となり、余り参加範囲が広がらない様である。経験的に言えば、超結社で運営するネット句会が一番効果的かつ刺激的であると思う。インターネットの発達によって俳句の世界も様変わりしつつある様に感じられる。」

   ただ、付言すれば、ネット句会の甘えや馴れ合いも些か目には付く。特にフェイスブック句会等では、選句に際しての匿名性が担保されず、特定の個人同士の遣り取りのような状況が発生する。句会の本来の狙いは、選句の匿名性と選句理由や感想を明確にする所から、自分の投句に対する他人の客観的な評価を知る事が出来る点にあるのでは無いだろうか。匿名性を前提にする句会は、大変な手間が掛かることは否めない。現在、投句数の多いネット句会としては、投句の整理や選句結果、講評等についての手際の良い現代俳句協会のネット句会に勝るものは無い様である。千句を超える投句の中から五選する方法だが、読むだけで大変ではある。

   投句資格が45歳未満とか、俳句経験が5年未満とか、若年層に視点を当てた既存誌への投稿は、若い俳人を育てるための手段かも知れないが、現在の俳句人口の多くを占めるシニア世代の俳人に対する配慮を感じる事が出来ない。人生経験や年代によって醸される情緒や感性を詠んだ佳句は多い。既存誌も従来の枠を超えても良い時期では無いだろうか。ネット句会には、このような縛りが無いことが大いに評価される。

      (秋日:呑舞近詠)

      採る者の影なき里の熟柿かな

      演習地隠るる楯の花芒

      藪中に赤き一点烏瓜

      フレームに収まり切れぬ紅葉山

      長袖を一枚増やし秋の旅

      円窓や一幅掛の花紅葉

      一冊が二冊に増える夜長かな

      四阿囲む落葉の海に漂へり

     手元だけ氣になるスマホ木守柿

     親の歳超えて生きゐる秋思かな

     (最近、ネット句会で特選、秀句に選ばれた句)

     (特選)

     尺取りや己の尺を測り得ず

     夏衣乳房の張りの清やかなる

     (秀逸)

     地獄へと続くやうなり蟻の穴

 

 

(平成28年10月20日記)

 

 

 

 


「舞俳句会」定例句会紹介

2016-10-14 16:00:58 | 俳句

喜怒哀楽書房発行「喜怒哀楽10-11月号Vol:88」

舞俳句会8月6日(土)定例句会紹介記事

当日の句会風景

 「舞」句会誌

 少し旧聞になるが、今日、喜怒哀楽書房から文芸誌「喜怒哀楽10-11Vol.88」が届いた。この句会は、8月6日(土)、かながわ労働プラザにおいて実施した「舞俳句会」の本部句会・勉強会が取材されたものであり、当日飛び入りで参加されたいつき組の黒岩徳将さんを含めて28人という大人数で行われ、会場も少し狭い感じがした。

 句会の冒頭で継続勉強会「芭蕉研究」の第1回から第3回までを担当している秋津寺彦氏によって第2回目となる研究発表があり、続いて句会を行った。句会は当期雑詠55句について、各自披講した作品について意見を述べたあと、山西主宰から講評を頂くと言う形式で行い、55句投句の中から主宰特選2句の発表があった。

(主宰特選2句)

  ざりがにを捕る子にばら色のかかと   さをり

  解体ビルに鉄筋のひげ夏の雲        恵

(当日高得点句2句)

  あめんぼう水面の雲横切れり

  脚見せて幕引く黒子夏芝居

(呑舞詠)

  青芒風に生死の区別あり   呑舞

 呑舞詠は、会員特選1点と言う得点で、捗々しい結果ではなかった。山西主宰からは、「風死す」と言う季語もあり、風には生死の区別があるとした着眼点がおもしろい。「風に生死の区別あり」も「風に生と死」くらいに減らして、もう少し季語の青芒のことを言えば、具体物に重心が移り、その中に抽象が入ってもっといい句になる、との講評を頂いた。呑舞には、少し難しい注文に聞こえた。

 因みに、上記「喜怒哀楽」誌には出席者全員の一句抄が掲載されている。また、この記事については、香川在住の俳人涼野海音氏のブログでも紹介して頂いている。

  喜怒哀楽書房HPは、http://www.eseihon.com/kukai/kukai-74931

(平成28年10月14日記)

 


結社「舞」第六回研修会

2016-10-11 15:09:21 | 俳句

結社「舞」第六回研修会(記念句会)実施

横浜球場前の公園(今日の会場となる「横浜情報文化センター」に近い)

句会風景

  平成28年10月2日(日)横浜情報文化センターで結社「舞」の研究会及び記念句会を実施した。 結社としての研究会は、今年で第六回目になる。会場は、横浜球場から5分、市営地下鉄「みなとみらい線」から3分という便利な所にあるが、当日はこの秋最後となる猛暑日であった。

   13時に開会、最初に今年の「舞賞」の授賞式があり、第二回目となる今年は、中堅の「影山恵氏」が授賞した。続いて主宰による「岡井省二の明野(句集名)」について講演があった。岡井省二(1925年11月26日~2001年9月23日)は、内科医のかたわら句作をはじめ、加藤楸邨や森澄雄に師事し、1968年に「寒雷」入会、1970年に「杉」創刊に参加している。俳人としては、比較的遅い出発であったと言える。1991年に「槐」を創刊し、主宰となっている。門下に児玉輝代、菅原鬨也、小山森生、山西雅子、加藤かな文等がいる。句集「明野」は、岡井省二の第一句集で1976年に上梓されたものである。

  岡井省二の作風は、人間探求、生死、身、感覚等、平常態かつ三人称的表出に主眼を置き、はるかなものの声を聞きとめ、言い止めようとしているようである(山西主宰の講話から)。句集「明野」は、1968年から1976年位までの作品が中心となっている。印象に残っている句を二三紹介すると、

       曼珠沙華松の林を笑い出て

      安楽死乞はれ篷野踏みしめをり

     冬構しかと残して父死せり

     身心に太き首のる芋の秋

等、岡井らしさが読み取れる句が多い。また、鳰、こゑ、光を主題 にした句も多い。

  山西主宰の講演後に、事前投句した2句(当季雑詠及び兼題「虫」)投句一覧表について事前選句した40句について、各自選句趣旨の説明や主宰からの講評があり、主宰特選2句の発表があった。本日の特選句は、

     柩板切りたる真夜のちちろかな (兼題句)              写俳亭みの

     えごの実のひとつをつまみ処暑の池 (当季雑詠句)  花田由子

最高得点句(3句)

     鈴虫や土間に置かるる薪の束 (兼題句)               笹原孝子

     邯鄲や夜更けて覗く母の部屋 (兼題句)                関波対子

     先生の先生がゐて水澄めり (当季雑詠)                関波対子

主宰選秀逸句(9句)

     鈴虫の玄関に靴脱ぎっぱなし (兼題句)                 矢嶋なほ子

     ちちろ鳴く半球夜へ入るところ (兼題句)                 影山恵

     すず虫やコンビナートの灯の清ら (兼題句)              藤田かをる

     特攻の機影の消えて草雲雀 (兼題句)                    吉澤美楯

     先生の先生のゐて水澄めり (当季雑詠句)               関波対子

     終戦日二人の母のその日聴く (当季雑詠句)             戸部さおり

     街中が這いつくばりて野分中 (当季雑詠句)              小西澄子

     十念の日毎薄るる法師蝉 (当季雑詠句)                  前田和男(呑舞)

     浮塵子来て鴨長明の浮世かな (当季雑詠句)            吉澤美楯

  主宰選の秀逸句には残ることが出来たが、得点は2点であった。あまり良い成績を残すことが出来ない句会だった。主宰の講演中から句会終了までと、中間で集合写真の撮影作業等の雑用を任され、忙しい句会であった。句会は、やはりゆったりした気持ちで参加したいと言うのが感想である。

 

(平成28年10月11日記)

追記:呑舞は、岡井省二の孫弟子に当たるのかな?

10月12日:早々に「舞誌」29年新年特別号用の投句(10句)を主宰宛送信した。今月から一部メール投句に変更された。