ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

2023年9月7日。ウクライナ侵攻から562日目

2023-09-07 | ベラルーシ旅行・長期滞在・留学注意情報
2023年9月7日。
 
 ベラルーシ大統領は国外でのパスポートの発効や更新を禁止するよう、各国のベラルーシの在外公館に命じ、今日発令されました。
 例えば日本に住んでいるベラルーシ人がパスポートの有効期限が切れたときに、新しいパスポートを発効できなくなります。
 そうすると有効期限が切れる前にベラルーシへ戻り、パスポートを作らなくてはいけません。そうでないと不法滞在の扱いになる可能性があります。日本の場合、難民指定をすぐにしてくれるわけでもなく、指定される可能性はとても低いです。

 それができる人はそれでいいのですが、ベラルーシ人によっては反体制派のため政府から逮捕される可能性があるので、ベラルーシ領内に足を踏み入れられない人もいます。
 入国したらすぐに逮捕される人もいます。
 
 何だかひどい法律のように思えますが、これにより逮捕されるベラルーシ人は少なく、そもそも一定の人たちを意図的にパスポートを持っていないベラルーシ人(無国籍)にしたい思惑が見て取れます。
 それはベラルーシ野党指導者たちです。
 この人たちは欠席していますが裁判にかけられている犯罪者であり、帰国したらすぐ逮捕されることになっています。多くが外国へ出国しています。
 パスポートが切れそうだけど、新しいパスポートがほしいからとのこのこ帰国するわけがありません。
 パスポートの申請を滞在先の外国でできなくなったら、当然パスポートのない人、つまり無国籍や難民になってしまいます。
 そうすると次回の大統領選挙に出馬できなくなるのです。それがベラルーシ政府の狙いです。

 ただ、ベラルーシ人の中にはもうすぐパスポートが切れるから、今から大急ぎで帰国する飛行機のチケットを買わないといけないという人もいるでしょう。

 リトアニアに亡命中の反体制派指導者、チハノフスカヤ氏は外国にいるベラルーシ人に対してSNSで「自分の安全を守ることを優先してほしい」と早速呼び掛けました。
 迫害の恐れがあるのでパスポートが失効しても帰国するべきではないと訴え、さらに「新しいベラルーシパスポート」を準備しているとしました。
 つまりベラルーシには国外に暫定政権があり、一応自分たちの大統領や内閣もあるので、その政府のパスポートをベラルーシ人に発券しようと考えているのです。
 とは言うものの、このベラルーシ暫定政府は国際的に認められているわけではないので、その政府が作ったパスポートが本当のパスポートとして使えるかどうかは不透明です。
 ベラルーシの政府は当然、世界中の国に向かって「あの存在しない政府が作ったパスポートなんて、無効ですよ。ただの紙切れです。あのパスポートを持ったベラルーシ人がそちらの国にやってきても、追い返してくださいね。」と要請して回るでしょう。

 ベラルーシ野党(暫定政府)側もそれは充分予測しているので、少なくともベラルーシの現政権に反対している態度を取っている国では、パスポートが失効しても反体制派のベラルーシ人がその滞在を続けられるよう各国と協議しているそうです。
 いわゆるEU諸国でまずパスポートなしでもベラルーシ人の滞在が認められるようになるのではないでしょうか。そうすればまた暫定政府が発券したパスポートもこれらの国では認められるようになる道につながるでしょう。
 しかし問題は多く難しい道程です。日本政府はベラルーシ人に対しどう対応するでしょうか。