子供のころ、叔母が猫をもらってきて飼っていた。
私が生まれた家は小さいながらも戸建てなので、犬も猫も飼えた。
しかしその後はわけあって集合住宅住まいが続き、大人になっても自分で猫を飼うことはできなかった。
初めて自分で猫を飼ったのは(そして今のところ最後だが)、なんとモンゴルでのこと。
ある朝目覚めると、アパートの外で子猫の鳴いている声がする。いつまでも鳴きやむ様子がないので見に行くと、草むらの中から子猫が飛びついてきた。
その猫を抱いたまま帰ると、はじめ夫は飼うことに反対したが、外に出したらたくさんいる野良犬の餌食になると思ったのか、世話は一人でするようにと言って許してくれた。
野良猫を拾ってきた子供そのものだが、実際そういう状態だった。
それがこの猫。
拾ったときはまだ生後2か月くらいのチビだった。
人慣れはしていたから、どこかの家で生まれて捨てられたとみえる。
たいていのモンゴル人は猫が嫌いなので、私が拾わなかったら成猫にはなれなかっただろう。
本当はモンゴルを離れるときに連れて来たかったが、予防接種などの準備まではしたものの、短時間車に乗ることも嫌がる猫を飛行機に乗せるというのは、猫にとっては苦痛でしかないと思い、珍しくも猫好きのモンゴル人にお願いしてきた。
飛行機に乗るために半日キャリーケースに入ってもらい、飛行機の荷物室で過ごし、そのうえ、最悪半年間も日本の空港の検疫施設に滞在することになるなら、それまでにも何度か預かってもらった動物大好き家族の家で、すでに友達になったわんこと一緒に過ごしたほうがストレスは少ないはず。
ある人から、海外から連れ帰った猫が、検疫施設に何か月もいるうちに、周りが犬ばかりなので「ワン」と鳴くようになったという冗談のような話を聞いて、笑えないなと思ったのだ。
その後猫はすっかり向こうの家族に懐き、お母さんの後をついてまわっていると聞いた。
猫としては2回捨てられたことになるのかもしれないが、猫にとってはそのほうがよかったと思う。
今は日本で動物を飼える環境にいるが、庭に来る猫に食べ物を振る舞うだけにしている。
訪問者と遊ぶだけでも、結構楽しい。