王様の耳と猫の耳

日常と異国の話をまぜこぜで書き散らし

肉といえば・・・

2024-01-09 02:29:56 | 異国の話

スーパーでおいしそうな牛肉が半額セールになっていたので、つい手に取って思い出したこと。

 

1990年代なかば、中国の大学に語学留学に行った。

今はどうか知らないけれど、当時の留学生の半分くらいは日本人。韓国人が2~3割で、残りは欧米人。

中にモンゴル人がちらほら。同じクラス(初級)にも17歳のモンゴル人青年、Bくんがいた。

このBくん、年齢は高校生だが行動はまるで小学生で、授業中に消しゴムのかすを周りの人に投げつけて遊んだり、教科書に落書きしたり。あるときは、突然隣に座っていた私に向かって「あなたはモンゴル人に似ている」と言ってきたり。教師がいてもお構いなしの自由人ぶりで返事に困るが、それだけ言ったら満足したらしく、すぐに反対側の人にまた何か話しかけていた。

後で聞いたところによると、高校を卒業した後、進学もせずぶらぶらしていると悪い仲間とよからぬことをするからという理由で、親から中国の学校に行かされてしまうモンゴル人青年はよくいるらしい。Bくんもそのてだったようだ。

自分で望んだ留学ではないので、中国語を学ぶことには興味はないのだろう、毎日楽しそうに遊んでいた。

ある日、寮の共同炊事場で牛肉を料理していると、Bくんがやってきて「ニューローッ」と叫んだ。

中国語で牛肉のこと。肉を一目見て、牛肉だと叫んだのだ。

「牛肉なんて売っているの? どこで買えるの?」

学校の中の店や、学生がよく行くすぐ近くの市場には豚肉か、せいぜい鶏肉しかないので、彼は知らなかったらしいが、中国南部だって牛肉は買える。市場の場所を教えてあげたけれど、何しろ互いに拙い中国語を介してだから、おそらく彼は理解できなかったのだろう。

B君は手にしていた瓶を私に見せて「モンゴルから持ってきたんだけど、もうこんな少しになっちゃった」と言った。

瓶の中には、茹でたのか煮たのか脂肪たっぷりの肉が詰まっていた。おそらく羊肉だろう。

「牛肉でもいいから食べたいな」

彼の持つ瓶の中身は半分以下になっているようだったが、そこに青くカビが生えていた。

学校が始まって1か月はたっていたと思う。いくら何でもカビも生えよう、腐りもしよう。

カビ生えてるよと中国語で教えてあげて、食べないほうがいいよと言ったけれど、青いとこ捨てれば大丈夫と言っていたような…。

 

のちにモンゴルで生活するようになった私は、モンゴル人にとっていかに肉が大切かを知った。

悪くなった肉を食べるなんて…と思ったけれど、彼らにとって肉といえば『羊』。次が「牛」。

日本人にとっての「ごはん」みたいなもので、これを食べなきゃ食べた気がしないというものなんだろうな。

モンゴルに行ってすぐに、別のクラスのモンゴル人からBくんの電話番号を教えてもらったのでかけてみた。

私のことを覚えていたかどうかはわからないが、中国から帰ったら次はアメリカに留学することになったと言っていた。親御さんに経済的余裕があって、かつよほどBくんをモンゴルに置いておきたくないらしい。

まあ、アメリカなら牛肉くらいいくらでもあるから、そこだけは中国より良かっただろうけど。

 

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿