王様の耳と猫の耳

日常と異国の話をまぜこぜで書き散らし

ひと冬の肉

2024-01-21 13:48:00 | 異国の話

モンゴルに住んでいたころ、モンゴル人の友人に聞かれたことがある。

「君の家はひと冬にどのくらい肉を食べるの?」

ひと冬? その単位が肉と結びつくのがよくわからないのですが? 一回にとか一食でとかではなく?

「ちなみに、僕の家では、あ、家族は両親と弟二人の五人なんだけどね。羊のもも肉を〇本と牛のもも肉を〇本。それから・・・」

モンゴルの冬は寒い。寒いというか痛い。外に置いたものは何でも凍る。人間だって外に出しっぱなしだと凍る。

だから、冬に酒に酔って外で寝てしまうと、警察に回収される。酔って暴れたからトラ箱に入れられるということではなく、命の危険があるのでとりあえず室内に入れてもらえるのだ。午後遅く、酔っ払って寝てしまったおじさんを、通りがかりの人が派出所のようなところへ運んでいくのを見たことがある。降った雪が解けずにカチカチに凍ってしまっている地面を、ふたりの人が眠った酔っ払いの両手を持って、引きずっていた。氷上は滑るから運びやすいだろうが、酔漢は頭を氷にぶつけながら、それでも眠ったまま引きずられていった。目が覚めたら、いろいろな意味で頭が痛いだろうな。

そんな「どこでも冷凍庫」状態なので、夏の間は冷蔵庫に入れておく肉も、冬は買ってきたら窓の外、ベランダなどに出しておけば冷凍状態で保存できる。また、夏の間放牧されている牛や羊も、秋の終わりに増えた分を屠殺してたくさん売りに出すので、この時期は肉の価格が下がる。だからお金に余裕があり、置いておく場所もある家庭は、ひと冬分の肉を一度に購入するらしい。状況が違いすぎて、比較対象にもならない。日本人はそんなに肉を食べない、とだけ答えておいたけど、納得してなかったな。

ひと冬の肉。置くところもないけれど、日本人はそんなに肉のことばかり考えてはいない。

思い出すたびに、鶏のももを買うのが精いっぱいだよ、と思う。



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