6月後半のニュース

★銀河系外の星では初めてトリウムを検出


すばる望遠鏡を使った観測で、こぐま座矮小銀河という小さな銀河にある赤色巨星COS82にトリウムが存在することが分かりました。
トリウムは放射能を出す重い元素で、大型の星が死を迎える間際に作り出されると考えられています。

銀河系外の星にアクチノイド元素トリウムを初検出
http://www.naoj.org/Pressrelease/2007/06/25/j_index.html


★ハッブル宇宙望遠鏡、小惑星ベスタを撮影


ハッブル宇宙望遠鏡が、小惑星ベスタを撮影しました。
7月7日にNASAが打ち上げる小惑星探査機ドーンが2011年にベスタに接近し、詳しい観測を行う予定になっています。

Hubble Images of Asteroids Help Astronomers Prepare for Spacecraft Visit
http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/2007/27/


★光速の99.9997%！超高速ジェット

ガンマ線バースト（GRB）は、最期を迎えた大型の星が起こす大爆発だと考えられています。
爆発は突然起こり、すぐに減光してしまうため、爆発直後の様子を捉えるのは困難でした。
今回、GRB観測衛星スウィフトが発見したGRBの情報を瞬時に地上の望遠鏡に送り、わずか40秒程しか経っていないGRBの姿を可視光線・近赤外線で観測することに成功しました。
その結果、爆発で噴き出されるジェットの速度が光の速さの99.9997%にも達することが分かりました。

Matter Flashed at Ultra Speed
http://www.eso.org/public/outreach/press-rel/pr-2007/pr-26-07.html


★土星の衛星テティスとディオネにも地殻活動

土星の衛星の中で、タイタンやエンセラダスは現在も活発に活動していることがわかっています。
NASAの土星探査機カッシーニの観測によって、衛星テティスとディオネから電荷を帯びた粒子が発生していることが新たにわかりました。
テティスやディオネでも活動が続いている証拠として注目されます。

Cassini Finds Saturn Moons Are Active
http://saturn.jpl.nasa.gov/news/press-release-details.cfm?newsID=754


★準惑星エリス――重さでも冥王星を上回る


準惑星エリスは2003年に発見され、詳しい観測の結果2006年に冥王星よりも大きな天体であることがわかり、「惑星の定義」を巡る論争に火を付けました。
エリスにはディスノミアという衛星があり、その動きをハッブル宇宙望遠鏡とケック天文台で詳しく観測した結果、エリスの質量が冥王星の1.27倍であることがわかりました。

Astronomers Measure Mass of Largest Dwarf Planet
http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/2007/24/


★超新星爆発の2年前に起こった小さな爆発

年老いた重い星が燃え尽きると、超新星爆発を起こします。
去年アマチュア天文家の板垣さんが超新星SN2006jcを発見しましたが、その天体が2004年にも小さな爆発を起こしていたことがわかりました。
SN2006jcはIb型超新星で、水素が少なく、ヘリウムの輝線が見られるタイプです。
恒星の内部では水素からヘリウムを作り出す核融合反応が起こっていますが、晩年になると中心部はヘリウムばかりになってしまい、外側に残っていた水素の層は吹き飛ばされてしまいます。
さらにヘリウムから炭素・酸素を作り出す核融合反応が始まり、炭素・酸素からなる中心部と、ヘリウムからなる外層が形成されます。
2004年の小爆発のときにその外層のヘリウムが吹き飛ばされたと考えられます。
今回の発見によって、Ib型超新星の前身がヘリウムに包まれた炭素・酸素ウォルフ・ライエ星らしいということが確認されました。

超新星2006jcと2年前の増光：大質量星の終末に起きた2種類の爆発
http://www.rc.kyushu-u.ac.jp/~yamaoka/06jc_PR/