逍遥日記

経済・政治・哲学などに関する思索の跡や旅・グルメなどの随筆を書きます。

(2019年) 5月 24 日の授業「経済の仕組み」の概要

2019-05-25 22:16:15 | ゼミ
(2019年) 5月 24 日の授業「経済の仕組み」の概要
(山下)
GDP (続き)

★なお、GDPは、モノである最終生産物だけでなく、サービスも対象にしている。
 サービス業を営む人が得る所得=生産。サービス業を営む人はモノを生産しているのではなく、サービスを生産(労働力を生産して提供する)。
たとえば、医師や店員さんや運転手の方々は、それぞれ医療サービス、販売サービス、運搬サービスを生産しているとみなす。
輸出や輸入も、モノとサービスを輸出、輸入しているので、輸出等、輸入等と書く。
たとえば、「日本のホテルにアメリカ人が宿泊する」見返りに日本のホテルが宿泊代という所得を得る。所得=生産だから、日本のホテルは、宿泊サービスを生産し、アメリカ(人)にそのサービスを売る、つまりサービスをアメリカに輸出するとみなす(アメリカから見れば、日本の宿泊サービスを日本から輸入するとみなす)。

(4)景気循環
 GDP↑→ 利子率(金利)↑(その理由は「金融」のところで説明)→(金融機関から借り入れるのが難しくなるから)民間消費↓、民間投資(設備投資や住宅投資)↓→GDP↓。また、GDP↑→(外国のモノ・サービスをどんどん買うから)輸入等↑→GDP↓
さらに、GDP↓→利子率(金利)↓→民間消費・民間投資↑、輸入等↓→GDP↑
こうして、GDP(正確にはGDPの伸び方)↑→GDP↓→GDP↑。つまり、景気↑→景気↓→景気↑(→景気循環)

(5)外国との相互依存関係
 外国のGDP↑(外国の景気↑)→日本からの購入↑(つまり日本からの輸入↑)→(日本から見れば)日本の輸出↑→日本のGDP↑(つまり日本の景気↑)→日本の輸入↑→(日本への)外国の輸出↑→外国のGDP↑
 すなわち、外国の景気が良くなれば、貿易を通じて日本の景気も良くなる。また、日本の景気が良くなれば、貿易を通じて外国の景気も良くなるという良い循環が始まる。
(ただし、外国のGDP↑→外国の輸入↑→外国のGDP↓の効果を考えると、必ずしもプラスの効果だけではない)






金融

(1)金融とは
金融とは、おカネの余裕のあるところから、おカネを必要としているところに、おカネを融通すること。
間接金融=その両者の間に銀行がある金融。
おカネに余裕のある者が銀行に(預金というかたちで)貸す→このおカネを銀行は(おカネを必要とする)会社に貸す。おカネを借りた会社は銀行に(その御礼として)利子を支払い、また銀行は預金者に利子を支払う。
直接金融=その両者の間に証券会社がある金融。証券(株や債券など)価格の上がり下がりにより経済が変動しやすい。下がるときリスクがある。      
日本は従来間接金融が中心で、アメリカは直接金融が中心 → 日本も直接金融の比重が上がってきた。

会社がおカネを借りる方法としては、銀行(や保険会社)から借りるか、社債(会社が発行する債券)を発行して借りる。(国債=国が発行する債券)
★債券=他人に売ってもよい借用証書 →債券を他人に売っておカネを得ることで、会社や国などに貸したおカネをいつでも実質的に取り戻すことができる。
(例)Aさんが会社に10年間の約束で100万円のおカネを貸したとする。その見返りに10%の利子を毎年会社から受け取るものとする。
Aさんが会社に100万円を貸してから2年経った時点で100万円が必要になったので、その会社から100万円を返してもらおうと思ったが、返してくれない。10年間貸す約束だからだ。
そこで、Aさんは、自分の保有する社債(会社が発行する債券)をBさんに売って100万円をBさんから受け取ったとする。Aさんはこれで実質的に100万円を取り戻したことになる(ただし、会社からではない!)。(Aさんは社債を保有していた2年間の間に、毎年100万円の10%つまり10万円の利子を会社から受け取っていた)
 一方、100万円を支払ってAさんからこの社債を買ったBさんのメリットは何か。
 Aさんは会社に100万円を貸していた。BさんがAさんに100万円のおカネを支払った時(Aさんが会社から社債を買ってから2年後の時点)から、BさんはAさんを通じて実質的に会社に100万円を貸していることになる。その証拠に会社が発行した社債(会社が発行する借金の証書)をBさんが保有している。
 だから、これからは毎年、Bさんが会社から利子(100万円の10%つまり10万円)を受け取ることができる。
 そして、Bさんは、Aさんから社債を買ってから8年後(この社債の期間は10年間で、既に2年が経過しているから)に会社にこの社債を持っていけば、会社から100万円のおカネを受け取る(今はBさんが会社に100万円を貸していることになっているから)ことができる。
 Bさんは(8年前に)Aさんに(社債購入代金として)100万円を渡したが、会社から100万円を受け取ったので、この100万円に関しては損も得もしていない。ところが、毎年10万円の利子を会社から受け取っていたので、8年間で合計10万円×8年=80万円の利益を手に入れたことになる。




共通科目「経済の仕組み」の概要

2019-05-17 22:17:00 | 教育
共通科目「経済の仕組み」の概要
                                             (山下景秋)

1.株式会社
●株式会社とは何か
→ 株を発行する会社。そのため経営資金を集めやすい会社である。
●株(株式、株券)=他人に売ることができる出資証書(おカネを会社に提供した証明書)。
会社におカネを提供した見返りに、会社から配当金というお礼のおカネをもらえる。
→ 会社に出資したおカネを(株を他人に売ることによって)実質的に、いつでも取り戻すことができる。
 AさんがBさんに株といわれる出資証書を売れば、会社に出資したおカネを、会社からではなく、Bさんからおカネを受け取ることによって、おカネを取り戻すことができる。
Bさんは、Aさんから株を買うことによって、これからはBさんが会社に資金を提供していることになるので、これからは、会社はBさんに配当金を渡すことになる。Bさんは、配当金をもらえることを期待して、Aさんから株を買ったのである。
→ ただの出資証書ではなく、株が発明されてからは、Aさんのように、いつでも資金を取り戻すことができるようになったので、会社に出資する人が増えた。
→ 株式会社は、資金を集めやすい会社である。

●株価上昇の場合
(株価上昇の理由)
 株式会社の利益↑→ 配当金↑→ 株の人気↑→ 株を買おうする人↑→ 株を持っている人は株を高く売りつけようする→ 株の価格↑
(株価上昇の影響)
 株の価格↑予想(たとえば、1枚100万円の株を買って、1か月後に150万円で売れば、差額の50万円がもうかる)→ 多くの人が株を買おうとする→ 株式会社からすれば、より多くの人に株を売ることができるようになる→ 株式会社は、より多くの人からより多くの経営資金(しかも返す必要のないおカネ)を手に入れることができるようになる→ ビジネスの拡大→ 雇用数↑→ 国民1人当たりの平均所得↑→ 人々のモノの購入↑
→ モノの販売↑→ 株式会社の利益↑→ ビジネスの拡大→ … 景気↑
●株価下落の場合
(株価下落の理由)
株式会社の利益↓→ 配当金↓→ 株の人気↓→ 株を買おうする人↓→ 株を持っている人が株を売るためには安くする必要→ 株の価格↓
(株価下落の影響)
株の価格↓予想(たとえば、1枚100万円の株を買って、1か月後に50万円で売れば、差額の50万円を損する)→ 多くの人が株を買おうとしない、株を持っている人は株を早く売ろうとする(売る)→ 株式会社からすれば、少ない人にしか株を売ることができないようになる→ 株式会社は、少ない人からしか経営資金を手に入れることができないようになる→ ビジネスの縮小→ 雇用数↓→ 国民1人当たりの平均所得↓→ 人々のモノの購入↓→ モノの販売↓→ 株式会社の利益↓→ ビジネスの縮小→ … 景気↓

●株式会社の設立当初は、(経営が不安定である→利益があがらない可能性→配当金が少ない可能性→株価が上がらない可能性、すなわち)信用がないから、友人や親せきにしか株を売ることができない→ 少額の経営資金しか入手できない→成長できない。
→ 設立後時間が経過して、経営が安定してくれば→ 証券会社に株を売ってもらうようになる(=公開)… 多くの人に株を売ることができる→多額の経営資金を入手できる→さらに企業が成長できる。
→ 証券会社を通じて、証券取引所(各証券会社が株を売買する場)で株を売ってもらうようになる(=上場=じょうじょう)→多くの他の証券会社を通じて株を客に売ることができるようになる→ 非常に多くの人に株を売ることができるようになる→巨額の経営資金を入手できる→ さらに大きな会社に成長できる。


2.GDP
①GDPとは何か
 GDP=単位期間(ふつう1年間)における一国の正確な生産額。(一国の経済規模をあらわす)
(例)
 日本には、A社(鉄鉱石を生産)、B社(鉄鋼を生産)、C社(自動車を生産)の3社しかないものとする。
 2010年の1年間に、A社は鉄鉱石を50億円生産し、B社は鉄鋼を80億円生産し、C社は自動車を100億円生産したとする。
そして、A社はこの50億円の鉄鉱石をすべてB社に販売し、B社はこの50億円の鉄鉱石を使って80億円の鉄鋼を生産する。さらに、B社はこの80億円の鉄鋼をすべてC社に販売し、C社はこの80億円の鉄鋼を使って100億円の自動車を生産したとする。
このとき、この1年間における日本のGDPはいくらだろうか?
(答え)100億円である。

(その考え方Ⅰ) A社の生産した鉄鉱石がすべて鉄鋼の生産に使われると、鉄鉱石は消えてしまう(存在しなくなる)。また、B社の生産した鉄鋼がすべて自動車の生産に使われると、鉄鋼は消えてしまう。結局、最終的に生産されたのは、C社の100億円の自動車だけである。→ 日本の正確な生産額は100億円である。

(その考え方Ⅱ) C社独自の正確な生産額は20億円だけである。なぜなら、C社の自動車の生産とは、B社が生産した80億円の鉄鋼に手を加えて加工した部分だけであり、その部分に対応する金額は、100億円-80億円=20億円であるからである。(この各企業独自の正確な生産額のことを付加価値という。80億円の価値に、C社が20億円の価値を付け加えたからである。C社における付加価値=20億円)
 B社独自の正確な生産額は30億円だけである。なぜなら、B社の鉄鋼の生産とは、A社が生産した50億円の鉄鉱石に手を加えて加工した部分だけであり、その部分に対応する金額は、80億円-50億円=30億円であるからである。(B社における付加価値=30億円)
A社独自の正確な生産額は50億円である。なぜなら、A社の鉄鉱石の生産とは、A社が自然に働きかけて生産した50億円の鉄鉱石であるからである(A社は他の会社から何も買っていない)。(A社における付加価値=50億円。A社は0の価値に50億円の価値を付け加えたと考える)
→ 各企業の正確な生産額(付加価値)の合計=(A社から書くと)50億円+30億円
+20億円=100億円(日本全体の正確な生産額)=GDP

②GDP=国内所得    GDPは、国内における所得の総額でもある。
(例)上の例を使う。
 C社は、100億円の自動車を販売すると100億円のおカネを手に入れる。そして、この受け取った100億円から、鉄鋼の購入代金80億円を支払うと、残りの20億円がC社の手元に残る。→ この20億円は、C社の自動車の生産に関わった人たちに配られる。
(C社の労働者に対して賃金として、C社の経営者に対して経営者報酬として、C社におカネを貸している銀行には利子として、C社の株を買っている株主に対して配当金として、C社に土地を貸している地主に対して地代として、合計20億円が配られる。)
→ これらのおカネを受け取った人たちから見れば所得。→ C社の自動車の生産に関わった人たちが受け取った所得の合計=20億円
 B社に関しても同じように考えれば、B社の鉄鋼の生産に関わった人たちが受け取った
所得の合計=30億円
 A社の鉄鉱石の生産に関わった人たちが受け取った所得の合計=50億円(A社は他の会社におカネを支払う必要がない)
→ 日本全体の所得の合計=(A社から書くと)50億円+30億円+20億円
=100億円(=GDPの金額)

③GDPの内訳
 GDP=民間消費+民間投資+政府支出+輸出等-輸入等
(なぜこの式が成り立つのか?)
 日本において、生産された100億円の自動車が売られるものとする。
この自動車は、まず日本の買い手に対して販売される。残りは外国に対して販売される。
日本の買い手は、日本の消費者、日本の企業、日本の政府の3つ。また、買う目的は、消費(投資以外の目的で買う部分)と投資(将来の生産のために買う部分)。
 これらの組み合わせにより、日本の買い手に対しては、
民間消費(日本の消費者と民間企業が消費の目的のために買う部分)と、
民間投資(日本の民間企業と消費者が投資の目的のために買う部分)と、
政府支出(日本の政府が消費目的と投資目的のために買う部分)の3つに分かれる。
 また、外国の買い手に対して販売する部分は一括して、輸出等(外国の消費者、民間企業、政府が、消費目的と投資目的で買う部分)という。 
 輸出を考えるからには、輸入を考えなくてはならない。この輸入(外国で生産された自動車を日本で販売する部分)はGDPの金額の自動車とともに日本で販売される自動車である。
 したがって、GDP+輸入等=民間消費+民間投資+政府支出+輸出等、という式がなりたつ。この式を変形すると、上記のGDP=―― の式が成り立つ。

★民間投資の内訳
 民間投資=民間設備投資+民間在庫投資+民間住宅投資
(民間設備投資とは、民間企業が、工場やビルを作ったり〔すなわち、工場やビルを作る資材を買う〕、その工場の中にすえつける機械を買うこと)
(民間在庫投資とは、企業が倉庫の中に生産物をおくこと。倉庫が生産物を買う部分とみることができる)
(民間住宅投資とは、個人や企業が住宅を作る〔買う〕こと)

★GDPの内訳
 GDP(100)+輸入(10)=民間消費(60)+民間投資(30)+政府支出(5)+輸出(15) 
〔(   )内の数字は例〕より、
GDP(100)=民間消費(60)+民間投資(30)+政府支出(5)+輸出(15)-輸入(10)
 が成り立つ。〔輸出(15)-輸入(10)=5であるが、この5は結局この国は輸出を5だけ行っているのと実質的に同じであるとみなすことができる〕
この式はGDPの内訳を表すが、非常に重要な式である。すなわち、この国が生産した生産物100を、この国の中から95〔=民間消費(60)+民間投資(30)+政府支出(5)〕買い、外国が5買ったことを意味する。

④GDPの循環のメカニズム
 民間消費が、たとえば60から70に増えれば、上の等式からGDPが100から110に増える。
このように、民間消費や民間投資や政府支出や輸出が増えれば、GDPが増える。ただし、輸入が増えれば、輸入はマイナスの項目なのでGDPが減る。
ここからわかる重要なことは、GDPが順調に増えないで景気が悪いのは、民間消費や民間投資や政府支出や輸出が減る(あるいは順調に増えない)ことや、輸入が増えることが原因であることがわかる。
 それでは、民間消費や民間投資は何によって決まるかといえば、少し前のGDPの大きさや、利子率(=金利)によって決まる。
たとえば、GDP↑=この国の所得↑→ この国のビールの消費↑(すなわち民間消費↑)
〔もしビールの消費↑↑→ ビールを作る工場↑、すなわち民間投資↑〕
 また、GDP↑→ 利子率↑→ 借り入れ↓→ 民間消費↓、民間投資↓
なお、GDP↑=この国の所得↑→ 外国からの購入↑(すなわち輸入↑)
また、外国のGDP↑=外国の所得↑→ この国の生産物に対する外国からの購入↑→
(この国から見れば)輸出↑ 
  また、GDP↑→ 外国の生産物を買う↑→ この国の輸入↑