リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第22回  最後の魚をひろう 世界一の魚道 メコンを破壊する本流ダム建設が始まった。

2016-02-01 17:52:10 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

世界でもっとも生物多様性が高い(流域面積あたり)メコン。その本流にメコンの魚類相と住民の生活を壊滅的に破壊する本流ダムの建設が始まった。その本流ダム ドンサホンダムの話です。

 映像画像の解説。

ベースの映像は2015年10月30日撮影 はめ込んだ画像は 2016年1月2日の撮影 ランドサット8号(USGS)の画像データより作成しました。

 わずか、1ヶ月あまりでフーサホンの両岸に道が出来ています。画面のうえ上流部で締め切ったと思われます。

 
 「日本で一番の魚道はどこにありますか」。

私が河川生態学を学んだ水野信彦先生(愛媛大学名誉教授)に尋ねたことがある。その魚道は仁淀川(高知県)の最下流八田堰(せき)にあり、川の早瀬のような姿をしていた。

 では「世界で一番は」といえば、東南アジアの大河メコンのラオスにあるフーサホンと答えたい。
 メコンの全長は四千百㌔余。河口から約五百㌔のラオス南部で三十㍍ほどの落差がある。川幅は広がり、多数の島々の間でメコンは十数本に分かれる。フーサホンとはサホン分流の意味だ。他の分流には途中に大小の滝があるが、フーサホンに滝はない。流量はメコン全体の5%程度だが、落差が緩く、乾期でも流れの途絶えないフーサホンはメコン唯一の「魚の道」だ。
 六カ国を潤す国際河川メコンは数千万人という流域の人々に、豊かな恵みを与えてきた。メコンにすむ淡水魚はおよそ八百種。はるかに流域の大きなアマゾン川についで世界第二位、その魚の87%は回遊生活をすると、研究者はいう。
 その名がカンボジアの通貨リエルの語源ともなったという体長数㌢のコイの仲間は、数百㌔下流のトンレサップ湖からメコン川を遡り、フーサホンを越え産卵する。体長三㍍、重さ四百㌔に迫る世界最大級の淡水魚、メコンオオナマズ。メコン全域に分布していたが繁殖場所はメコン上流の限られた場所だ。メコンオオナマズが近縁のナマズから分かれたのは三百九十万年以上前。それ以来現在に至るまで、メコンオオナマズが生命を繋いでこられたのはフーサホンが自由に行き来できる彼らの道だったからだ。
 唯一の「魚道」に計画された発電ダム。メコン流域への影響の大きさから周辺国、国際非政府組織(NGO)が見直しを求めてきたが、一月八日、フーサホンの流れを止めダム建設が開始された。その日。水のない川で村人たちは最後の魚を拾ったという。(魚類生態写真家)
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