ダムが建設されるメコンの分流フォーサホン。ダムが完成すると唯一のメコンオオナマズの回遊ルートが無くなってしまう。しかし、メコンオオナマズがその分流を利用しているという確かな証拠はなかった。ボクはその捕獲を目撃したのだが、…。3回くらいつづきます。
朝食をとっていると、ホテルのスタッフが駆けよって来た。「パーブックが獲れた。まだ生きている。」
動転して部屋に戻り、カメラと現金を持って飛び出した。獲れた場所はわかっていた。ラオス南部、落差30m幅5キロの連続する滝の中で一カ所だけ魚が通る「魚道」のようなフーサホン、メコンの分流だ。
ラオス語ではパーブック、メコンオオナマズ。体長3mに迫る鱗の無い魚で世界最大級。その名はおそらく世界中で日本人が一番よく知っている。礼宮殿下が研究された。世界淡水魚水族館・アクアトト岐阜(岐阜県)、長崎市ペンギン水族館の二カ所で飼育展示されて両館で800万人あまりの入場者が見学している。しかし、メコン流域では王族だけが食べることを許されたという貴重な魚で今では激減して幻の魚だ。
フーサホンで獲れるという話を聞いてはいたがまさか本当に獲れるとは。
09年10月22日、フーサホンに通い出して2年目のことだった。
ホテルから4つ離れた島にフーサホンはある。自転車で島の下流側まで山沿いの道を上り。下ってメコンへ、小舟でサホン島にわたり、今度は上流へと山道を小走りで急いだ。2時間近くかけて現地に着くと魚は荷車に乗せられ村へ運ばれていくところだった。
売ってくれ。貴重な魚を買い取ろうとお願いした。しかし、すでに政府が買いとったという。魚は首都ビエンチャンのしかるべき場所で保管されるという。巨大な魚のヒレの先を10cmほどDNA分析用に切ってもらった。
メコンオオナマズはワシントン条約で国外には持ち出せない。ホテルに保管し翌年、ラオス国立大学にそのヒレを届けにいった。標本庫には左ヒレ先が切り取られた魚が保管されているはずだ。ところが、標本はおろか捕獲されたという記録さえ残っていなかったのだった。(魚類生態写真家)
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