リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第58回 亜熱帯最後の自然海岸 が壊されようとしている。

2017-06-26 17:09:56 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

奄美大島の#嘉徳浜。奄美大島は勿論だが、南西諸島で唯一。もしかして亜熱帯域では最後の自然海岸の砂浜だ。その浜に護岸が計画されている。この浜にはオサガメも産卵した記録がある。奄美の歌姫、元ちとせの生まれた浜でもある。

 空港から国道58号線を南へ。奄美大島(鹿児島県)は森の島だ。

森を通り、山をうがつトンネルを七つばかり抜け、標高三五〇㍍の網野子峠を過ぎて県道を下る。川に沿って進むと十五戸ほどの集落がある。空港から二時間余り。
 集落のトイレの脇を抜けるとアダンの茂みの先が海だ。場所を明かさず、砂浜と海の映像をネットに投稿した。ダイバー、魚類研究者、サーファーが言い当てる。「嘉徳(かとく)にいるのだね」
 嘉徳浜は特別な場所だ。さして大きくもない嘉徳川が営々と山を削り、砂浜をつくった。琉球列島には川が運んだ砂だけでできた、サンゴ礁のない砂浜は七カ所しかない。そして、護岸のない砂浜はここだけだ。
 アオウミガメ、アカウミガメが産卵する。世界的な希少種として国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧1A類に指定されるオサガメの産卵は、日本で唯一この浜で確認されている。
 六月の「砂浜の生物調査in奄美・嘉徳海岸」(海の生き物を守る会、日本自然保護協会主催)では、わずか一時間ほどの調査で絶滅危惧種種六種、準絶滅危惧種三種の二枚貝が確認された。同定した貝類多様性研究所の山下博由所長によると、三種は絶滅危惧種のアマミノクロウサギと同レベルの希少性があるという。
 二〇一四年の台風災害後、この浜に全長五三〇㍍、高さ六・五㍍の護岸が計画されている。鹿児島県大島支庁を訪ねた。
 護岸の形式はコンクリートの直立護岸。奄美大島でも多くの浜でみられる護岸だが、前面の砂は引き波によって失われ、砂浜がなくなる問題が生じている。
 環境対策として天然記念物のオカヤドカリについて一年の調査を行い、ヤドカリの通る穴を護岸にあけることにしたという。
 住民の安全を考慮しつつ、もっと丁寧な対策ができないか。コンクリートの規格品の護岸がつぶそうとしているのは、亜熱帯最後の自然海岸なのだから。(魚類生態写真家)


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4 コメント

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Unknown (niimuray)
2017-07-05 18:52:01
ありがとうございました。fbに書きます。
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お返事ありがとうございます。 (ふう)
2017-06-30 23:18:15
お忙しい所を大変ありがとうございます。

関連サイトは、http://blog.goo.ne.jp/mtomiga です。FBもやっております。
https://www.facebook.com/iga.mizutomidorinokai/?ref=aymt_homepage_panel
どちらも拙いですが、続けて参りました。
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Re:ダムとオオサンショウウオのことです (niimuray)
2017-06-27 16:49:05
コメントありがとうございました。
ダムの問題は本当に酷いですね!調べて見たいので、関連サイトなどありましたら、お教え願えますか?
返信する
ダムとオオサンショウウオのことです (ふう)
2017-06-27 10:57:34
伊賀は小さな盆地ですが大きな川が3本あり、そのうち2本の川の上流にはオオサンショウウオが棲んで居ます。特別天然記念物のオオサンショウウオは三重県でも伊賀名張にしか居りません。そのオオサンショウウオが1600個体は確認済みの前深瀬川(木津川の支流)にダムの建設が始まろうとしています。ダムを造らないように運動して15年ですが、アベ政治がどんどん進めてしまいました。前深瀬のオオサンショウウオたちが上流に移転させられ、結局は数を減らす運命になると危惧しています。1度、、前深瀬においで下さって現状をご覧になってもらえないでしょうか。突然にぶしつけなお願いで申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。
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