リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第76回 砂の行方  ダムは砂を溜める装置

2018-03-11 18:14:02 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

ダムは水を溜めるだけでない。ダムは川の持つ働きの中で重要な土砂を運び、国土を形成する機能を損なうこともある。当たり前のように川原には土砂があると思われるかも知れないけれど、土砂は長い年月をへて、川がが造り、運んだモノなんだ。

 

 

 今月20日。荒瀬ダムの撤去工事が完了する。荒瀬ダムは球磨川水系に1955年完成した熊本県最古の発電ダム。高さ25mという規模としてはダム撤去、日本初となる。私は撤去が始まって4年経過した2016年、球磨川のダム問題に詳しい八代市のつる祥子さんの案内で球磨川を巡った。印象深かったのは、撤去が始まると河口域の干潟が再生し、伝統的うなぎ漁が復活したというお話しだった。

 日本の国土は雨が多く急勾配、豪雨は谷を浸食して大量の土砂を下流に運んだ。土砂を運び国土を造るのは川の重要な機能だ。

 川による浸食、災害を防ぐ目的で砂を溜める「砂防ダム」もある。その数は全国におよそ九万基。一体どれだけの土砂が、これらの「ダム」に溜まっているものか。

ダムが土砂を溜めるという弊害。その影響があきらかになっているのは、神奈川県の西湘バイパス沿い、浜松市の中田島砂丘など海岸線の後退だ。砂を供給していた相模川、天竜川に相模ダム(竣工47年)、佐久間ダム(同56年)などダム群が建設された。日本の海岸線はここ半世紀ほどで後退してしまったことになる。

 土砂災害は防ぎ、土砂を下流に流す、そんな妙案はないものか。砂防ダムについては巨岩を止めて土砂災害を防ぎ、小さな岩、土砂は下流に流すという堤体にスリット(切れ込み)を開けたダムが建設されている。

 乳川白沢砂防ダム(大町市)は普通の砂防ダムだった。そのダムにカッターで幅2mのスリットをつけた。総工費は約三億円。同じ規模のスリットダムを新設すると14億円ほどかかるから、五分の一強の工事費で改修ができた。

 機能の低下した老朽ダムの撤去、砂防ダムのスリット化。どちらも川の土砂を運ぶ機能は回復し、新たな構造物を造るよりもずっと安い。しかし、不思議なことなのだが、次に続く工事施工計画は未定なのだという。

 

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